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1月、某日

自力でどうにか、とされていた日。

自宅のある街の成人式は、おそらく日本一有名で高校球児の憧れとされる球場。
自力解決を決めたタイミングが遅かったにも関わらず運良く予約できていた会場至近の美容室で、早朝から着付けやらいろいろ済ませ、外に。
式典は午後からのため、数時間の空き時間。

前々よりの希望にそって、毎年1月10日の午前0時に男どもが走る速さを競うことで有名な神社に。

以前は成人式といえば1月の15日だったが、2000年からハッピーマンデー制度により1月の第2月曜日となった現在、8日の昼前というタイミングはあまりにも悪く。
境内にある駐車場は露天商の車で満車、歩いて10分ほどのコインパーキングから神社に向かう道はというと、同じような考えを持った晴着の娘さんを連れた家族連れだらけ。競争のスタート地点である表大門のあたりはスマホを構える人・人・人。
門をくぐったらくぐったで、明日からに備えて既に展開された露店で順路が出来上がっており、いつもの風情とは正反対と言ってもいいほどの人混みと無秩序。

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前日までの時点で、ある程度予期していたことと、過去の仕事の経験から機材を絞り込んでいたこともあって、そこまで焦ることなく対応。

門前の小僧、ってなもんで。
今までの仕事の中で得たあれこれで、なんだかんだ要りそうなものはたいてい持ってる。

散々悩んで絞った機材。結果として概ね正解。
大きな望遠や三脚を装備したご家族を数組見かけたものの、人混みでの三脚は現実的でなく、また、被写体との間にいる人々は望遠レンズで消し飛ばすにはあまりにも多く。私の腕ではとても無理。

着物の形状に明るくなく。難しい。

運良く午前中は陽が出ていたこともあって、人混みを避けつ、良さげなスポットを譲り合いつつ、なんとか妻子の望む写真を撮り終えて会場に送り届けて帰宅。
普段から人を撮ることがないために色々と思うところもあり。

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29年前。
自分は親元を離れて大学に通っており、当時は15日だった成人式には帰らなかった。
おそらく帰っていたら前後の数日を実家過ごすことになっていただろう。
そして。
おそらく。
罹災していたことだろう。

帰路、神社の前を過ぎたあたりで頭上の高速道路を見上げ、「あのあたりに転落寸前のバスがあったのだな」と。

往時、何の被害も受けなかった自分が何かを言うのも烏滸がましいとは思うが、現在も落ち着かない時間をお過ごしの能登の皆様が少しでも穏やかならんことを。


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