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経営層の説得は時間軸が鍵

経営層への説明をして、今回は説得が難しそうだなと感じた時に、よく思っていたのが、経営層との「時間軸のとらえ方に違いがあること」でした。

会社の中で問題が起きたとき、総務ではなんらかの手立てをしなければならないので、急ぎ原因をつかみ、暫定対策や恒久対策を考えて報告をし、了解が得られたらすぐに対応準備に取り掛かって、また報告するということを行います。

事件・事故などの対応は、時間との戦いの中で、ホウレンソウを進めていかなければなりません。

日常的な仕事では、総務以外でもほとんどがこのような業務の進め方で、今日、明日、今週、今月には、なんらかの仕事の成果を求められる事が多いかと思います。

管理系の業務でも、経理会計の仕事は特に短期間の数字のまとめが勝負です。今日の売り上げ、今月の支払い精算、年間の利益など、経営層も毎月、毎年ハラハラしながら数字の報告をもらい、半期や年度末には決算報告のために四苦八苦しています。

会社経営のほとんどは、一年単位で評価をされてしまうのですが、「持続可能な」というキーワードのもとでは、中長期として3ヶ年事業計画が設定される事もあります。

それでも、3年先の事業を見通して予測を立てることは本当に難しい事で、修正を余儀なくされる事もしばしばです。

積み重ねてきた基盤となる事業内容であればまだしも、新しく事業を始めてこれを予測するとなると、新たな販売チャネルの理解や業界の将来動向を正確に知るだけでも時間がかかり、数年先のシェアの変化は予測不可能に近くなるため、エイっ!ヤーっ!の世界になりますが、それでも株主には説明をしなければなりません。

一日、一週間、一ヶ月、四半期、半期、通期一年、長くて三年先までを考えるのが、ごくごく一般的な会社経営の方々の感覚になることは理解できると思います。

しかし、人事や総務における業務計画は、時に5年先、10年先の会社のことを考えた提案になる場合があります。

人事では、採用は年間計画ですが、内部の人材育成には中期と長期が存在すると思います。3年後・5年後のためにスキルを身に付けてもらい、役職が上がるたびに研修を実施して人を育てる計画といった内容を中期とすれば、長期は10年後の会社のための人材育成の方向性と意識改革のための人事施策はどうあるべきか、離職率を抑えて会社の雰囲気を良い方向に変えていきたい、そのためには、どのような雇用制度や就業規則が必要なのか、少しずつ変えていくとしても、骨格となる部分の考えは持って置く必要があります。

そして総務の、特に施設関係では中長期の計画と提案が必要になります。建設関係は何かとお金も高額になりがちですが、その分耐用年数も15年、30年、50年の感覚を持って計画立案をしなければなりません。

賃貸、リースなら良いのですが、土地も含めて、自社建物物件や自社投資設備などは、会社の将来に向けて、どのように考えるのかによって、進め方も変わってきます。

将来の事業に向けた保有設備や人員を考慮して、立地環境やBCPとしてはどう考えるのか、何億、何十億、何百億円の計画を一気に単年度で進めるのか、分割して進めるのか、最終的には経営会議で判断するとしても、そもそもの提案は人事や総務が実施することになります。

そしてこれらの提案の説明をする際に、時間軸の違いが大きな壁となって立ちはだかります。

3年先までが目一杯の経営層と、10年、30年、50年先までの維持管理を考えて投資提案をする総務では、いつしか話も噛み合わなくなり、なかなか理解の得られない提案の場が何度も続くことになります。

研究機関だったり、建設会社の役員であれば、もしかしたらすぐにでも理解してもらえるであろう事柄に、たくさんのエネルギーを注いで説明をしますが、経営層も経営判断や決断がなかなかできるものではありません。

その都度、不足している材料を提示して回数を重ねますが、最終的には時間軸の感覚は埋まらないというのが自分の経験でもあり、印象になっています。

特に、事業拠点の計画や施設計画、防災やBCP、人事施策などは、ある程度までの将来の道筋がたったほうが、今年やるべき事、来年やるべき事もハッキリするので、予算も立てやすくなり人事総務の仕事の効率も大幅に向上すると思うのですが、まず理解をしてもらうのに一苦労です。

不動産に限らず、会社の机や椅子、ロッカーなどは10年や15年は使うものだと思われます。コピー機だけはリースで新しく入れ替わりますが、ホワイトボードもシュレッダーも10年くらい使うのが通常です。社員食堂も一度作れば、何十年も変わりません。(なかなか変えられません)

働く皆さんは会社のものは、使えるうちは長く使うものだという感覚も身についていますから、あまり文句も言わずに過ごしていますが、一方で、お客様の目につくところには大変な気を使っているところも多いと思います。

古くなった机やイスを買い替えにくいのは、管理部門のやる気と、経営層の時間軸が原因かもしれません。

職場環境や働く環境を良くする事が必要だと思えば、総務は提案をしますし、会社を元気にしたい、雰囲気を良くしたいと思えば、人事も提案をします。

その時立ちはだかるのが経営層で、経営層の得意分野にもよるのですが、人それぞれの感覚である時間軸の違いは、説得以前に相互理解の大きな障壁になるのです。

人事も総務も、将来を見越した施策を考えれば考えるほどエネルギーは必要になり、その考えを提案する人は苦労が絶えません。

それでも地道な説明と感覚を植え付ける説得を続けるしか対策はないようです。

一般企業の経営層に3年より先の将来に向けた提案をして、対応予算への理解を取り付けるのは本当に大変なことです。

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