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 ミュージカル「キングアーサー」②

さてさて。

昨日のキャストはこんなかんじでした。


キャストボード。

キャストボード撮るにも行列で、ああ、人気の作品なのだなぁと思ったのはさておくとして。

キャストの芝居の質はこれまた不思議な感覚で、ミュージカルとシェイクスピアとストレートプレイが同居しているようなかんじ。特に主役・アーサー王役の浦井健治さんは『アルジャーノンに花束を』の頃から(何年前だよ)ミュージカルの芝居とは少し色の違う演技をする人の印象でそこが魅力と感じてもいたので、ああ、ひさしぶりに浦井さんを観ているんだと感慨に耽ったりもしていました。何のジャンルの芝居なんだか最初は混乱したけれど(笑)

なんというか、ストーリーを追うというよりはタカラヅカのショー的作品だったこともありこの人の芝居がよかったよと書きづらいところながら、加藤和樹さんの歌には度肝を抜かれました。何オクターブですか音域。それとマリーンの石川禅さんは相変わらずのコメディアンで、こういう俳優さんも欠かせませんね。浦井さんは最後に向かうに従って魅力増してらっしゃいました。アルジャーノンの時から思っていましたが、不思議な方だ(褒めてます!)。

とにかく一貫して人物が描かれていくような作品ではないですし、そういう視点で見るとなんなら駄作の域かもしれないので(そういう視点で見るとですよ!)、この人の芝居がよかったよとは書きづらいところなんですけれど(2回め)。

書きづらい中で、それでも驚かされたのはモルガン役の安蘭けいさんでした。

いや、上手いのは知ってた。知ってました。

知ってたんですけれど、相当ひさしぶりに観た安蘭さん、魅力が増してました。

タカラヅカの男役トップスターをなさった方、いろんな魅力がある方がいながらですが、何年かに一人、いわゆる女優というものになってからさらに魅力が増す方というのがいらっしゃいまして、たとえば麻実れいさんが私はすぐに思い浮かぶのですが、そういう方々は、男役を経てきたせいなのか実に個性的なお芝居をなさる印象がありました。他にいないタイプだから、だいたい、欠かすことができない人になっていく。

安蘭さんのモルガンは、まさにその枠でした。男役でしたよ、なんて癖があるわけではないんですが、ただやはりあれだけの人数の中で主役をやっていただけの「惹きつけ力」があるんですよね。それから、それぞれの人物が細切れの描き方をされていたような印象の中なのに、モルガンはしっかりと人としての全体像が伝わってきていました。ニンも、ミュージカルの世界にそんな考え方があるのかは知りませんがとてもニンにあっていることも、より魅力的に見えた一因かと思います。

黒っぽくて一見悪女で、でも底知れぬ寂しさが奥にあって。五右衛門かよ(割愛)

個人的に、今回のMVPは安蘭けいさんだなと思います。

しかし、しかしです。

今回の作品、よくよく考えてみれば「この人がよかったと書きづらい」ところが最大の魅力だったのではないかと思うのです。この人、ではなくて各場面が全体として印象に残っている。全体の演出に関してもそう。ここが突出してよかった!というところがない分、「ミュージカルは総合芸術なんだ」と存分に感じることができました。もう少しこういうことがあったらよかったと思うところがないわけではないので、自分的ベストにはまだノミネートされていませんけれど。

でも、全体でひとつの印象を残すことができるというのは実は大切なことなんじゃないでしょうか。絵だって音楽だって、この龍の部分が素敵!ヴァイオリンだけ突出して上手!だと良い作品にはならないですから。日本のミュージカルではあまり感じたことがない感覚で(オリジナルミュージカルだとありますが長くなるので割愛)、あれ、日本のミュージカルも面白い方向に進んでいるのかなとワクワクしました。

東京は今日が千穐楽ですが、まだ各地の公演は残っているようなので機会がありましたらぜひ。
https://horipro-stage.jp/stage/kingarthur2023/#stage

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