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【感想】読書感想文「奇譚蒐集家 小泉八雲シリーズ」_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0031

『奇譚蒐集家 小泉八雲 白衣の女』(久賀 理世):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000348049

『奇譚蒐集家 小泉八雲 終わりなき夜に』(久賀 理世):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000371375

お恥ずかしい話、解説に記載のある通りで、「小泉八雲」と聞いて「ラフカディオ・ハーン」という本来の名前が出てこない世代だ。
「小泉八雲」と紐づくものとして、「雪女」などの怪談は知っていたが、そうか、海外の方だったのか……。
(「雪女」と言えば虚構推理シリーズでも登場していたが、八雲について言及してるシーンあったかな? あったとしたら忘れてしまっているかも。)

というわけで、八雲=ハーンを知らないまま本書を手に取った私の感想を書いていく。
(知らなくても充分に面白いので大丈夫!)

この世ならざるもの、怪異、あちら側の世界、そういった類のものとの距離が近い青年二人が織りなす、青春とホラーが混ざり合った小説だ。

男性二人タッグ作品でいうと、少し年齢は下がってしまうが「都会のトム&ソーヤ」を思い出した。
二人の掛け合いがリズミカルで心地よい作品の一つ。
本作も、オーランドとパトリックのやり取りが読んでいて楽しい。
軽口から真面目な話まで、息の合った会話のラリーが楽しめる。

あと、青春とホラーで思い出したのは、一肇先生のフェノメノシリーズ。
あれも傑作だ。
オカルトチックではあるのだが、でもその世界の枠組みや、ルールの中ではきちんと整合性が取れていて、ミステリとしても非常に面白い作品だった。
本書、小泉八雲シリーズも同様で、英国やアイルランドの伝承、言ってしまえばオカルトチックな現象が、本当に起こっている世界に主人公たちは生きている。
そこで起こる怪事件を、そういうものが本当にあるという前提で、鮮やかに解決してみせる。
また、バン・シー、チェンジリング、ドールズ・ハウス、水魔、etc…、普段あまり触れない伝承や文化を知ることができ、そういった意味でもとても面白い。

個人的なおすすめは、「終わりなき夜に」の「四重奏には用心を」というお話。
学校の友人であるクレイグ、シリルの二人が、オーランドとパトリックの会話仲間に加わったことで、より学生らしい青春の空気が増した。
気の置けない仲間同士の掛け合いに、思わずクスッときてしまう。

講談社文庫になる前の前日譚が、講談社タイガのレーベルから出ているらしいのだが、近所の本屋を複数見て回っても置いていなかった……。
こういうとき田舎はちょっと不便。
かといって、店員さんに取り寄せのお願いをするのも億劫な陰のモノなので、今度都会に出る機会があったら大きい書店さんで買おうと思う。

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