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【感想】読書感想文「アリアドネの声」_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0035

巨大地震発生。
地下に取り残された女性は、目が見えず、耳も聞こえない。光も音も届かない絶対的迷宮。生還不能まで6時間。
想像の限界を超えるどんでん返し。
救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職する。
業務の一環で訪れた、障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。
それは「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障がいを抱え、街のアイドル(象徴)して活動する中川博美だった――。
崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。

『アリアドネの声』井上真偽 | 幻冬舎
https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344041271/

井上真偽さんの新作!
大好きな作家さんなので、書店で見かけてテンション上がりました。
帰宅後、即読了。
今回も面白かった。

ミステリーよりはサスペンスの色合いが強いかも。
時間もない、物資もない、要救助者は目も耳も利かない……様々な制約がある中で奮闘する主人公と仲間たち。
スピーディーでスリリングな展開なので、あっという間に読めてしまう。
各章の冒頭に挿入されるヘレン・ケラーの自伝の一説も、その章で起こる出来事を予感させるような内容で、読者の不安や期待を掻き立ててくる。

「ベーシックインカムの祈り」以降、最新の技術を意識しているのか(それともそういう依頼が多いのか)、今回はドローンが大活躍。
性能や飛行中の描写がスタイリッシュで、映像化するのにも向いてそう。
どんでん返し要素は、帯で煽り過ぎのようにも感じたけれど、作中でずっとスパイスとしてきいていたのが良かった。

最終章の冒頭に挿入された第六感に関する記載、あれは感覚というよりも、人が人を助けたいという、連綿と受け継がれてきた無意識の願いというように読み取っても良いのかなあ、なんて思ったりもした。

次回作も楽しみに待っています。

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