【感想】読書感想文「幽霊列車とこんぺい糖 新装版」_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0030
ネタバレあり感想。
死にたい少女 海幸と、生命力に満ち溢れた少女 リガヤが出会う物語。
ボーイ・ミーツ・ガールならぬ、ガール・ミーツ・ガール。
百合作品は「やがて君になる」ぐらいしか触れていないので、百合の文脈の中での立ち位置とかは分からない。
ただ、純粋に美しいなと感じた。
海幸とリガヤ、二人でしか織りなせない夏のドラマ。
痛々しくて、瑞々しくて、目が離せないお話だった。
実際の映画が登場し、それをモチーフとした描写が多い。
なので、精神が病んでいく様がパラレルで分かりやすい。
本当は広いはずの世界が、どうしたって狭く感じることってあるし、その狭い暮らしの中で、どんどんと気分が沈んでいくのも分かる。
ここら辺の描写がリアルで、自分の過去もフラッシュバックしてきそうになるぐらい。
でも、海幸は生まれ変わった。
自分よりも死に近づいている人を前にして、ちゃんと踏み止まれる子で良かったなあと思う。
そしてリガヤと、互いの舌先でこんぺい糖を転がしたときに、味覚障害の海幸が甘さを感じるシーンで、一気に報われたなと感じた。
リガヤにとっては、姉の死と切っても切れない行為だったけれど、それを海幸と行うことで、今度は生きることと結びつくことになる。
死の象徴だった行為が、二人にとっての生の象徴として上書きされる、まさに再生の物語。
ラスト、二人がひまわり畑を見ながら終わるのも、締めくくりとして凄く素敵。
リガヤは序盤でこんな風に言っていた。
二人とも、自身のことは月、つまり選ばれない方だと思っていたけれど、最終的にはお互いのことを太陽だと思い、そしてお互いのことを選んでいる。
太陽を象徴するひまわりに見守られながら、二人で新しい道を一緒に歩きだすなんて、なんだか感動的だ。
この先も、お互いのことを選び続ける二人であってほしいなあ。
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