【読書感想文】餓鬼道巡行:町田康
駆け出しのアイドルや新人アナウンサーの食レポは見ていていたたまれなくなる。
「すごいー!おいしー!」
凄いのは見れば分かるし「おいしい」にも色々な要素がある。そこを知りたいのだ。だいたい目に生気がない。では、圧倒的な語彙力を持つ作家が目をギラつかせて食レポをしたらどうなるか。その顛末を本書で見届けられたい。
家のリフォームのため外食をすることになった「私」が3つの店を訪れる。そこまでにも紆余曲折があるのだが…。
1店目:匠五(和食店)
ここでは何も食べられず出店。その後、チンピラに暴行を受けゴミ捨て場で夜を明かす。
2店目:なみき(ドライブイン)
麦トロ定食をオーダー。頭が爆発し、涙が止まらなくなる。
3店目:天願屋(ラーメン店)
シンプルな「ラーメン」に感動。宇宙の調和が破れ「私」や客は高速回転し昇天、その後消滅した。
本作を読むか迷っている方には、まず「あとがき」から始めることをお勧めする。エッセイストの平松洋子さんが寄稿しているのだが、これが明らかに町田康テイストなのである。町田康×平松洋子。この異色のコラボレーションだけでも一読の価値ありだ。そして「なんだこりゃ」と思ったら、本文を読んでほしい。