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見守ること、待つこと、そして見取ることも支援

教室で一斉指導をしている時、T2や支援で入っている先生が、座り方のだらしない子や話を聴けていない子にそばでぼそぼそ指導することがある。ちゃんと座る、きちんと話を聴くことは大事な指導だ。だから、その指導が必要ないとは思わない。

あるいは、グループ活動などにうまく入れない子や、作業が手間取っている子のそばに行って手助けすることがある。場と状況にもよるから一概には言えないけど、これも善意の指導だ。

あるいは、子どもが活動しているときに、活動について話しかけたり褒めことばをかけまくったりすることがある。これにも悪意はなく、その場を活性化させたいという善意の指導と言えると思う。

しかし、こうした教師の「善意の指導」が、ときに集団や個の育ちを阻害する可能性はないだろうか。

一斉指導をしているときにぼそぼそ声が聞こえたら、T1の話が聞こえない、もしくは集中できない。はっきり言ってうるさい。やがて空気に緊張感がなくなり、ざわついた中で話を聴いてよいというメッセージを送ることにもなる。

教師がいちいち子どもの活動に刺さり込んだら、子どもたちは自由に活動できない。教師のアドバイス通りに動き、自ら考えることをしなくなる。教師が助けるなら、自分たちでアイディアを出し合ったり助け合ったりしなくなる。答えは教師が授けてくれるものというメッセージを与えることにもなる。

集中して取り組んでいるときに、教師がいちいち話かけたらうるさくて没頭できない。あるいは、教師の評価に従って活動しようとする意図が湧く。人が一生懸命活動しているのを、気まぐれなおしゃべりで阻害してもよいというメッセージにもなり得る。

と、いうことが大変煩わしいので、私は自分の教室に入ってくださる先生方には、
・まずは、自分で解決する。
・困ったら、自分から相談したり助けを求めたりする。
・うまくいかなかったらみんなで考えてやってみる。失敗したら、また考えてやってみる。安易に答えを求めない。
ことが方針なので、ダメだしや手助けはせず、見守っていただくことを予め伝えている。

また、ラポートが形成されていないうちにダメだしすることのリスクが大きいので、危険なことや暴力などの他は敢えて何も言わず見守っていただくことも話す。

私はベテランだから、たいていの場合は伝えるだけで理解していただける。口頭では伝わりにくい、言いにくいというときは、紙面でお渡しすることもある。

しかし、担任が若いと、自分が指導してやらねば、自分が示してやらねばとばかりに、担任の指導方針を無視して、あるいは担任を飛び越えて手出し口出しするベテランがいると見聞きする。

指導方針を伝えてお願いしても
「じゃあ、私に何もするなってこと?」
とへそを曲げられたり
「じゃあ、私の仕事は何ですか?」
とキレられたりすることもあるらしい。

いやいや、見守るのも待つのも支援、指導でしょう……と思っても、若いとなかなかそこまでは言えない。

で、結局、ベテランに学級をかき回され、学級の秩序を乱され、結果学級が崩壊していくのを待つしかない、という状況に陥る。手のかかる子にその場限りの都合のいい対応をされ、担任が尻ぬぐいするというのもよく聞く。そして、学級がうまくいかないのは若い担任の責任とされる。

こういう話を聞くたびに、あああ、教師って何か言いたい、何かしたい生き物なんだなあと思う。
何か言うのが指導、支援。
何かするのが指導、支援。
すぐに変化が見えるのが指導、支援。

口出して手を出して目の前の子どもの不適切な言動がなくなったとしても、それは変容ではない。変容するとはそもそも時間がかかることで、その子の中で見方や意識がじっくりと変わり、いつしか表面に現れる言動がよりよいものへ変わっていくものだ。

それには、同じ方針で同じ態度でじっくり関わることが必要ではないだろうか。その場限りの思い付きや教師の満足感で子どもにかかわるのではなく、関わる教師が同じ方針で関わることが大事だと思う。

ということをベテランは肝に銘じ無闇に若者の指導を奪ってはいけないと思うし、若者も疎まれてもいいからと腹を括りちゃんと自分の方針を理解してもらえるよう伝える勇気が必要だと思う。

追記
ある先生に、こうした場合、T2や支援は見取りに徹すると教わった。よほど危険なことではない限り、直接かかわらないと。よい行動もその場ではほめず、キーマンとなる担任に伝え、担任から褒めることで担任とのラポールを形成していく。マイナス行動は、いつ、どのような状態で起き、どのように進行し、どう収束したかなどを記録していただく。そうすることで問題行動を回避する糸口が見えることも少なくない。
こうしたことをできれば校内で共有でき、校内で同じ対応ができるのが望ましい。それがむずかしいなら、担任が教室に入る先生に伝えるしかない。相手や立場によっては言いにくいことかもしれないが、年度初めのこの時期にやっておかなければあとから変えろというのは難しい。何より、クラスが崩れてからでは遅い。

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