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あたって砕けて次のを探せ


高校生のころ大好きな人がいました。男子情報で向こうもどうやら私のことを気に入ってくれているよう。私はずっと「早く告白してくれないかなあ」なんて思っていました。(自分から告白するなんてこと絶対にできない怖がりの私でした)

当時の親友・美子ちゃんは教えてくれました。「あのさ、あたって砕けろだよ。砕けたら次のを探せばいいの」と。地球上に人は五万といるんだし,きっとまた好きになれる人だっているんだからと。

なるほど……。向こうももしかしたら私から告白するのを待ってるのかもと思い一念発起。

はい。砕けました。ずっと私のことが好きだったけど、もう興味無くなったって言われました。砕けてわかったことがあります。

それは、前まではその人と仲良く喋ったり冗談を言い合ったりしていたのに、砕けるとそれができなくなるということ。つまり、砕けた後は、もう決して砕ける前の関係には戻れないことを知ったのです。こんなことなら告白しなきゃよかった……。

同じことが女子同士の仲違いにも言えるのではないでしょうか。

AさんとBさんは大の仲良しでした。しかしこのところ二人の関係が薄れていきました。最初、Bさんは、Aさんが面白いところや自分の意見をはっきり言うところが自分にあっていると思っていました。しかし、段々とそれが自分勝手な振る舞いやあけすけな物言いのように感じるようになり、Aさんを疎ましく思うようになったのです。Aさんは、何とかしてBさんとの友人関係を続けていきたいと思っています。でもBさんは、もうAさんと離れたいと思っています。

時に大人は、Bさんに「Aさんも自分の悪いところを直すって言ってるよ。また仲良くやりなさい」と言います。でもそんなこと可能なのでしょうか。

低学年にならこのアドバイスは必要な場合もあります。低学年であれば問題がわりと単純であり、関係も高学年ほど深くないことから「人間関係はやり直せる」「人の見方を変えてごらん」という指導も大事であるとも思います。

しかし、高学年になると感情も関係性も複雑になります。関係性が崩れるまでに様々な葛藤や批判、悲しい思いや苦しい思い、かすかな希望や自分を納得させる強引さ、怒り、諦め、不安、自分の中での駆け引き……色々あるわけです。表面には見えない感情を一切無かったことにして、そう簡単に「砕ける前」に戻ることなどできないのです。

もちろん、ケースバイケースなのでしょうが、安易に「砕ける前」に戻ってみたら?なんてアドバイスは現実的ではないと思うのです。その可能性をもちつつも「次のを探す」という視点を教師がもっていることが、その子の問題解決の選択肢を広げることになるのではないでしょうか。ちなみに、「次のを探す」なんて俗な言い方は子どもにはしませんが。そしてなにより,次のを探せる」人間関係を教室につくっておくことがいかに重要かは言うまでもありませんが。

さらにちなみに。砕けた私には、卒業するまでとうとう「次」は見つかりませんでした(笑)。

そしてさらにちなみに。私を砕けさせた男子とは、今ではいい友だちです(笑)。

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