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【イベントレポート】長崎県西海市の新しい地域の拠点「HOGET(ホゲット)」 オープニングトーク


 2020年12月19日、長崎県西海市に新しい地域の拠点「HOGET(ホゲット)」がオープンしました!この日開かれたオープニングイベントで、スタッフたちが抱く想いやプロジェクトの経緯に耳を傾けました。

 西海市は長崎駅から車で約1時間。車を走らせると、道路脇に見える白い建物がホゲットです。ここには、「カフェ」「ショップ」「D.I.Y.スペース」「レンタルスペース」が備えられています。

 ▲プロジェクトメンバーの(左から)佐々木翔さん(INTERMEDIA)、はしもとさん(little comm.)、山﨑さん(山﨑マーク)、佐々木千鶴さん(INTERMEDIA)、岩本さん(little comm.)、村岡さん(村岡建築)



 発起人は、衣類への刺繍やプリントなどを手がける「山﨑マーク」(西海市)社長、山﨑秀平さん。

 山﨑さん:西海市のことを『おもしろい』と表現したい想いが歳を取るにつれて強くなりました。会社の目の前にある民家を引き取ったことがきっかけで、西海市で「何かやりたい」という想いを具現化することに。
 ここは、一年前に書道家のハシグチリンタロウさんに貸していました。もともと持っている原始的な美しさや、勢いをリンタロウさんの書の中から感じて、すごく素敵だった。それもここの場を考えるきっかけの一つでした。
 この場所を立ち上げて、地域の皆さんと交流できるのが嬉しいし、もっと西海市が面白くなっていくのではないかと思っています。

 では、どんな空間にするか。メンバーはそのヒントを探るために、中世の煮たき用具「滑石製石鍋」を生産していた国指定の遺跡「ホゲット石鍋製作遺跡」(西海市)に赴きました。

 はしもとさん:全国の石鍋の生産地の9割近くが、西彼杵に位置しているそうです。佐世保市教育委員会の専門家に遺跡を案内してもらい、山の中に入りました。すべすべした石がゴロゴロあり、明らかに自然物ではなく、真ん中に穴が空いたもの、お皿の形に近いものもありました。「昨日まで彫っていたのかな」と思うような鋭い跡が残っていました。

 専門家にホゲットの魅力を尋ねると「遺跡は千年前の姿が残っていて、そのまま歳を重ねている。自分が見ている風景と千年前の人が見ている風景、匂い、音がもしかしたら同じかもしれないと考えると、昔の人が何を考えていたのか感じられるのではないか」と、おっしゃっていたのが印象的でした。私も同じことを感じながら、歩きました。

 この遺跡から感じ取ったのは「西海市にものづくりの文化がある」ということ。ここからヒントを得たはしもとさんは次のように述べます。
 

 はしもとさん:西海市は自然豊かで、昔からの生活が比較的残っていて、地域のつながりもある。だけど、新しい文化的な刺激や、発見が生まれるような場所、地域の人と気軽に出会えるような場所はありませんでした。

 「欲しいものはつくる」。これを西海市民は実践していました。東彼杵と比べると、高速も電車も通っていない不便な場所。だから、買うのではなく、身の回りにあるもので作っています。例えば、かんころもちのスライサーや、芋を洗うときに、竹を交差させる工夫、軽トラの後ろにぴったりフィットしたホウキ....など。
 西海市の暮らしで日々しびれていました。すごくクリエイティブなことだし、暮らしの根源的な力だと思います。

▲住民手作りの「芋洗機」。竹を交差させて、芋を洗っている。
 

 はしもとさん: 私たちが伝えたい西海市の魅力や、ここで何をしていきたいかをぐるぐる考えていた時に「欲しいものをつくる」っていいな、と。それは、もともと「山﨑マーク」のキーフレーズ。会社のことでもあり、西海市の暮らしそのものです。「欲しいものはつくる」という精神を大事にしたい。その上で、見直して編集し、届け直すということをやっていきたいです。

 具体的には、人・もの・ことを3ヶ月ごとに編集して届けること。西海にある面白いもの、ユニークなものを、ただ面白いというのではなくて、切り口を変えて伝えていきたい。さらに定期的なつながりを作りたいとも思ってます。何か化学反応を起こしたいです。ここを完成させるために地域の人も巻き込んだDIYワークショップを実施しました。


▲地域の人を巻き込んだワークショップで、床をDIY。使用した素材は、山﨑マークのシルクスクリーンの木の枠。地域の人や、山﨑マークの想いも埋め込んだ。

 各部屋には、西海市に因んだ名前がつけられ、イベントが開催された部屋は「ウズシオ」。佐世保市と西彼杵半島をつなぐ橋「西海橋」から見えるうず潮がモチーフになりました。

 はしもとさん: 人やものを巻き込んで、ぐるぐるここで渦を起こすにはとてもいい名前。

 何が起こっていくかは私たち自身も楽しめるような方が良く、偶発性を大事にしたいです。多様なものが出会って、交わって、ぐるぐるしているような、抽象的なイメージでもいい。それがコミュニティ。コミュニティは自然発生的なものなので、誰かが意図してつくれるものではないと思っています。

 建築分野のお話しもありました。話者は、島原市に拠点を置くINTERMEDIAの佐々木翔さん、千鶴さん、山﨑さんの幼なじみで施工を担当した村岡建築の村岡さんの3人。

 佐々木翔さん:最初見に行ったとき、おそらくイベントはどういう形であれ、できると思いました。ただ、その活動が外から見えづらそうというのが第一印象。そして、この建物は特徴が掴みづらかった。住むにはものすごく快適そう。どうやってこれを手を加えてよくなるかが、想像できませんでした。最初は何を残して何が大事なのか決めていないので、測量して、一つ一つ粒さに観察して図面を起こしていきました。

 ▲手を加える前の建物

 千鶴さん:平成3年にできた建物で、ただの民家という印象でした。山﨑さんと橋本さんはやりたいことが多くて、初めはぼやっとしていました。プランニングをしていく段階から、かなり悩みました。一方で、地域の人を呼んでイベントを実施するのは確定だったので、床の間の壁を取っ払って、広場と一体的にするのがいいのではないかと。その案は完成するまで、変更はありませんでした。


 佐々木さん:いくつかレイアウトを考えて、場の特性をもう少し具体的に示しました。「外とのつながりがほしい」「バックヤードがあったらいい」など、何となく出来ることが分かってきました。その中で、オフィスやテイクアウトの場所など、さまざまなパターンを考え、ようやく提案できたのが去年11月です。
 ただ、敷地が広くて、閉鎖的でした。建物をどうするかというよりも、周りをどうするか。外部をまちと道路とつなげるかということが大事なんじゃないかということに気がつきました。
 そこで浮かんだのが、階段。階段を造ることで大きな広場ともつながり、まちとの接点も見えてきます。

 佐々木さんはほかにも、建物に手を加えず、小屋を新たにつくることを提案。また、エキスパンドメタルを使って、催し物の作品などを飾るアイデアもこのとき浮かんだそう。

 千鶴さん:スケジュールがタイトで、結構ライブ感がありました。村岡さんがLINE(ライン)で現場の写真を送ってくれて、連絡を取り合いました。
 改修の案件なので、壁を剥がした時にしか分からないことがあります。なので、解体が始まった9月からラインが鳴りっぱなしでした。
 
 村岡さん:自分が入ったのは、3月の打ち合わせからです。山﨑さんと幼なじみで、こんな建物になるとは思いませんでした。オープン日に間に合うか、脳から汗が出るようなバタバタとした感じになりましたが、どうにか完成して良かったです。

  会場は和やかな雰囲気に包まれ、スタッフたちのほっとした表情が伺えました。西海の過去、現在、未来をつなぐこの場所で、どんなワクワクする出来事がこれから生まれるのだろう。関わった人たちの期待感やエネルギーが、この空間に詰まっていると感じました。

【店舗情報】

店 名
HOGET(ホゲット)

場所
長崎県西海市西海町川内郷1138−2

営業時間
木曜〜月曜
10:00〜18:00

休業日
毎週火・水曜

※営業時間、休業日は変更になる場合がある。
問い合わせはホームページ
または、電話(0959-32-1423)

【レンタルについて】
メインスペース「ウズシオ」
1時間1000円〜

※ほかの部屋もレンタル可能。詳しくはこちらから。

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