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息子と城とわたし
「え〜かわいい〜」
自転車で信号待ちしていると、横で待っていたカップルの女の子が息子を見て言ってくれた。
すると彼氏が
「かわいいね、今はね」と言った。
わたしは正直なーんとも思わなかったのだけど、
「は?今は?最低!!」と言って彼女がキレた。(割とマジなトーン)
焦った彼氏が
「え?だって大きくなってからも可愛いとは限らないでしょ?」(墓穴すぎる…!)
「……」(彼女無言なんですけど〜!)
ピッポンピッポン…(信号が青になってしまった!!え〜気になる〜!でも青だし〜)
ああ、こういう気持ち?わたしの可愛さのために争わないで〜!ってこういう気持ち?(多分、いや絶対違う)
どうなんだっけ?あんな不用意な一言で愛情って冷めるっけ?
もう付き合うとか付き合わないとか遠すぎてわからん…!(息子が!可愛すぎたばっかりに!ごめんね!)
ただ彼氏、安心してくれ!息子は一生(わたしにとっては)かわいい!!!!!
*****
カップルの雰囲気をその存在の可愛さのみでぶち壊した息子と向かったのは城だ。
地元にはふたつ城があって、遠い方の城の方が豪華。
今年の冬はそこでチームラボの展示がやっていて、イルミネーション・城大好きな息子にドンピシャだったので行ったのだけど、あれ以上の城体験はないよね…と思って城からは離れていた。(なに。城体験って。笑)
あと、わたしが興味ないのだ。
息子の好きな物の中でも、水族館やお花(植物園)、動物園なんかはわたしも好きで、一緒に行って楽しいのだけど、本当に城に興味がないのだ。
中学の時社会の成績が1番悪かったし、特殊な高校に行ったので社会の授業はそれから受けたことがない。
そのせいで歴史にめっぽう弱い。
ヨーロッパの古い城にはあんなに心がときめくのに(ディズニーみたいな白くてキラキラじゃない、石でできてるやつ)、日本の城には「あ、城だー」という気持ちしか湧かない。
息子は城だとか剣に異常に反応するので、前世が武士なんだと思う。
小さい頃から教えてないのに常に正座だし。
「鎌倉殿の十三人」にハマって見ていたのだけど、「はいわかったー」と武士が返事していて、その言い方がほんとに息子そっくりで確信した(こいつは武士だったのかー)
そんなこんなで図書館で借りた花の図鑑に福島の城が小さく写っていて(夜桜の紹介ページ)、桜より城に大反応した息子のためにえっちらおっちら自転車を漕いだ。
20歳になるまで地元に住んでいたのに、わたしはその城に一度も行ったことがなくて(興味のなさが露骨!)、息子の城熱に動かされなければ一生行かなかったかもしれない。
その日まで何かしらの日を啓蒙するために?ライトアップもされるとあって、夕方〜夜にかけて行くことにした。
予定通り無理矢理昼寝してもらい(息子はこの頃昼寝をしない。でも昼寝をしないと夜7時が限界…)、城についた。
本当に無計画人間なので、「自転車置き場どこ〜?」と言いながら城の周りを一周してしまった。
大きな鳥居の横に小さな守衛室があった。
そこにいる守衛さんに「すみません、自転車置き場どこですかー?」と聞くと、
「ないんよ。自転車のまま入っていいよ。城見る時は中でどっか邪魔にならんとこに置いとってね」という衝撃の回答。
「はーい」と言って入ったけれど、なかなかミスマッチな光景だ。
城と、自転車。
もう馬に乗っていることにしようと思って、タイムスリップして馬に乗っているていで木の橋を渡り、門をくぐると気持ちが高まった!
わたしも武士だったのかもしれない!笑
それにしてもゆるい。
まさか城に自転車で入れるとは。
あと30分で城内部は閉館にも関わらず割と外国人観光客の方がいた。
大学生かな?若いグループもちらほら。
これは「新幹線現象」と呼んでいるのだけど、子どもというのは大好きな物に乗っているとその全貌が見えなくなるため、
新幹線の座席に座りながら「新幹線は?新幹線どこ?」と言って泣き出すというかわいいところがある。
(子どもはって言ったけどもしかするとうちの息子だけかも…?)
城も全く同じで、城の中に入ってしまうと息子が興味があるのは刀くらいなので、そこを過ぎると「城は?城見たい!」と言って途端に興味を失っていた。
10分くらいで城を出たと思う(入館料…!涙)
1番上は外に出ることが出来て市内を見渡せたのでわたしはそこは結構テンションが上がったのだけど、息子は怖かったらしい。
昔は東京タワーだとかスカイツリーの底がガラスになっているところでぴょんぴょん飛んでこちらが冷や冷やしていたのに。(底が抜ける訳はないけどそれでも怖かった)
370円で城に登って分かったこと
・息子は(今は)高いところが怖い
・城の警備の人が城好きすぎて、帽子が見えないほど帽子にお城缶バッチをつけまくっていた
・城の警備の人が(おそらく勝手に)人を集めてガイドしていた
・その前を息子が横切ったらそれまで横切れなかった人も次々と横切り出してギャラリーを半分くらいに減らして気まずかった
*****
城を出て公園内をぶらぶらしても、ライトアップまでまだあと1時間はあった。
日が長くなったことを実感する。
すぐ近くにデパートなどが密集しているところがあるので、何か晩御飯でも食べて時間を潰そうと向かう。
その間も「あ〜はなれちゃう!城から!戻って!戻って!!」と何度も息子に怒られる。
「戻るから!ご飯食べたら!!」と何度も言い返す、奇妙な光景だったろうと思う。
フードコートでラーメンをすすりながら、そう言えば東京タワーでもラーメンを食べたな〜と思った。
土砂降りの日で、なんであんな日に行ったのか不思議だな(多分息子が行きたいって言ったんだろうな)と思ってカメラロールを見返すと去年の今頃だった。
そうか〜あれから1年か。
なんだか随分と前のことにも感じるし、つい昨日のことのようにも思う。
*****
ライトアップは激ショボだった…。
ただお堀の上に大きな青いライトが設置されていて、確かにそれはお城を照らしていた。
けれど青白いライトと人気のなさが相待ってもはやホラーで、そそくさと公園を後にした。
こういう時わたしは常に誰かに襲われたら…というのを想定してしまう。
それでこの頃息子の写真も撮りやすいしと旅行用に買ったスマホケース(肩にかけるタイプ)を愛用していて、そのボタンを連打したら緊急通報できる仕組みを思い出す。
けれどどのボタンを何回連打すればいいのか分からないな…と思いながら無事真っ暗な公園を抜け出し、馬(自転車)に跨って城を後にした(ハイドウハイドウ!)
まだ城をみたがっていた息子が守衛室が閉まっているのをみて
「おじいちゃんもねんねしてるね」と呟いたのが可愛かった。
「かあか、おじいちゃんほんとに自転車で入っていいって言った?!」といきなり言われて
「え…言ってたけど…」
と答えたら
「ならいいけど!!!」と言われた。
えーなにー?言ってたよねー?(不安)
そう言えば話が戻るのだけど高校生の時も携帯ストラップが流行って、ガチャガチャと小さなぬいぐるみをたくさんつけて携帯を首からぶら下げていたのだけど、ぶら下げるもののレベルはめっちゃ上がったけど、ぶら下げてる人の中身そんな変わらんな…と思ったりした。
変わらない中身と、ハイテクなスマホをぶら下げて、きっと明日も全く興味のない場所に行く。
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