グリッツ デザイナーズノート(企画、ルール編)
記事説明
本記事はゲームマーケット2023秋の両-ヒ04にて頒布予定のグリッツという2人用ゲームのデザイナーズノートである。本記事はプロモーションを含みます。
https://gamemarket.jp/game/182407
企画立ち上げ(ジャンル模索)
自分で言うのもなんだが、一通りのジャンルのボードゲームを遊んできた自負はある。デジタルゲームも作っているので何を作れと言われても、ある程度形にはなると思っている。
ただ、形にはなるだけで面白くなる保証が出来ない。そこで私は一番得意である分野である2人用カードゲームを選ぶことにした。
とはいえ、自作するからにはある程度売れなければならない。多少趣味として赤字は許容されるが、売り上げが0となると次作以降が出せない。そこで売れる余地があるのか調査した。
まず、2人用カードゲームの競合を調査してみる。
ガンナガン、シノビノギ、はらぺこバハムート、桜降る代に決闘を。どれもタイプは違うがいくつかヒット作はある。
そもそもカードゲーム自体人気が根強く、そこまで心配はいらなそうだ。
また、ゲムマには作品検索機能がある。念のためそこでも検索してみる。
ゲームマーケット2023春は898件のゲームがあり、その中で2人対戦のゲームは80件(9%)程度ある。同人の場合、好きなものを作る傾向があるので出展数≒潜在需要と見なせそうだ。十分マーケットとして成立していそうと判断した。
仕様策定と原価計算
自分はデジタルゲームを主に制作しており、基本的には0円で制作することもできる。ただし、アナログゲームはそうはいかない。原価がネックになってくる。
つまらない話だとは思うが、グリッツは原価を抑えて面白いカードゲームを作るということを目標に作られたのでお付き合い願いたい。
一旦、最低限必要なものを列挙しよう。
箱、カード、そして説明書だ。箱は多少値は張るが、初作なので化粧箱にしたい。
カードの量は可変なものの、基本料金は量に関わらず一定なのでとりあえずそこの足し算をする。カード2万、化粧箱2.5万円の計4.5万 が最低ラインだ。説明書は基本料は無く、ある程度までタダになるそうだ。
合計金額はあまり気にしないが、一部当たりの値段は気になる。さすがに原価割れで売るわけにもいかないが、なるべく安く多くの人に提供したい。
2日出展し、なんなら次回にも出そうと思っている。友人などに配る分も含めるとおおよそ20部から50部が目安に思えた。
すると1部あたりの基本料金は900円~2500円になる。世知辛い。
1部当たり3000円以下にしたいので、諸々の計算をするとカード枚数は1部あたり50~80枚が目安ということが分かった。実際の部数は非公表とするが1部当たりの値段は3000円(ゲムマ価格)になった。
かなりの原価率であるためお買い得となっている(?)
あわよくば駒やダイスなども入れられないか、と計算前は思っていたがかなり厳しそうということが分かり、泣く泣く断念した。
決まったこと
・部数
・値段(総額)
・駒やダイスなどは無し
コンポーネント方針
枚数策定
カード枚数の目安は分かったが、あまりにも少なすぎる。
作りたいのはTCGライクのゲームである。山札があり、手札があり、マナがあり、場や墓地がある。
TCGにおいて総枚数はかなり重要だ。少なければ一瞬で解析されたり、再現性が高くなりすぎてしまう。どちらもゲームの寿命を大幅に縮めてしまう。
理想の話で言うと40枚デッキを複数作れるような枚数が欲しかったがそれは厳しそうだ。
枚数が少なくてもTCGを成立させる方法はいくつかある。
・デッキの再現性を減らす(ドラフト制など)
・種類を多くして環境の解析を遅くする
・サーチやドローの枚数を減らす
・mtgの土地などのように基礎の部分にブレを作る
そして、今回採用したものはこちら。ミニデッキ制である。上の例で言うと「デッキの再現性を減らす」のと「環境の解析を遅く出来る」仕組みだ。
ミニデッキ制というのはこの記事の造語である。デッキプールという形でいくつか用意しておき、その中からデッキを何個かを選び、合体させて一つのデッキにする仕組みだ。
先ほど調べた中でいくつか同様の仕組みがあり、購入層の中にある程度理解があることも加味して採用した。
デッキの組み合わせを考える。最低4デッキは必要で、最大は無限大だ。
どれぐらいが成立させるのにいいのだろうか。対戦経験として考えると相手の組み合わせも含めて考えた方がよさそうだ。
4デッキ:6通り
5デッキ:30通り
6デッキ:90通り
4デッキはあまりに少ないため除外。最初から数を増やしすぎて組み合わせの数を増やしすぎてバランス調整が破綻しては元も子もない。総デッキ数は5デッキにすることにした。余ったデッキはもったいない感じがあるが、まぁ仕方ない。
1デッキの枚数は偶数とするとキリのいい12枚1デッキ(2デッキ24枚、総枚数60~)が妥当に思えた。次キリのいい16や18にすると総枚数が80~90枚になる。一旦やってみて決めてみよう
決まったこと(コンポーネントなど)
・ミニデッキ制
・1デッキ12枚
・デッキの数は5
→総枚数は60枚(サマリーで+数枚)
ゲームの終了
勝利条件
最初はゲームの勝利条件から決めた方がいいので一旦それから考える。
最近のTCGの流行りで言うと、ライフ制よりシールド制が取られることが多い。
TCGの始祖、Magic: the Gatheringでは相手の20点のライフを0にしたら勝ちであり、遊戯王も8000のライフにしたら勝ちである。
対してシールド制はポケカ、デュエマ、ワンピカードなどは数枚のカードをライフカウンターにしてそれを0にすることを目標にしている。
今回、どちらも採用しなかった
少ない枚数で成立するために
ゲームというものはいきなり勝利してはならない。ライフやシールドなどもそういう形でいきなり勝利することを抑止している。
ライフ、クリーチャーの数、山札など何らかの形で有利な方を分かりやすくし、有利な方が勝つ仕組みを用意したい。
有利な方が確実に勝つものは「実力ゲー」、逆転がしやすいものは「運ゲー」と呼ばれる。(比率はある)
ライフ制であれば追加でコンポーネントが、シールド制にするとその枚数分のカードが必要になる。とはいえ、何かの形でライフやシールドに相当するものを表現しないといけない。
今回、自分は盤面制(マス目制)を導入することにした。自分が将棋をやっていたというのもあるが、何より視覚的に分かりやすいのが理由である。
味方が多い→有利
敵が目の前に迫っている→不利
敵がバラけている→対処が大変
枚挙にいとまがないが、いきなりテーブルを見た時の分かりやすさはかなり高い。盤面制はメリットが多く感じた。
将棋にならい、王将と同様に一回攻撃で敗北としてみた。いきなり敵の王将の横にカードを出せるのは変なので、自身のカードに隣接するように出せるようにしてみた。NIAGARA GAMESさんのジェムズトーンでも近い仕組みを採用していた。
色々なところが仮だったが、それで一旦テストしてみるとかなり緊張感が高くクセになった。盤面の大きさで実質的なライフは調整できるので、ここの部分は固定しても良さそうだった。
決まったこと
・盤面制(大きさは縦4~5、横5~6)
・敵の王将を攻撃したら勝利
・自分のカードに隣接している場所に出せる
1ターン中にできること
ドローと手札
ターンの開始時にドローするのがおおよそTCGの特徴である。今回はドロー枚数は1枚になりそうだ。手札が5枚になるまでドローするラッシュデュエルなどもあるが、そんなのを24枚デッキで行うとあっという間に山札が無くなってしまう。
また、永久に勝負が終わらないのもゲームとして困る。山札が無くなることを敗北条件として設定した。
マナとテンポ
1ターン中にできることを制限する仕組みとして、マナという仕組みを採用されているゲームが多い。1ターン中に大きなアクション1回をする、細かいアクションを2回するという選択の幅が生まれる。
・ターン開始時にマナは最大まで回復する
・マナを使用してカードを使用できる
・1ターン中に1回、最大マナが増える(大体は1ずつ)
これを使うと段々とダイナミックな変化が行われるようになりゲームが終了に近づいていく。
……とはいえ、マナという概念を採用するにはカードやダイスなどが必要である。と、ここでこのゲームが5デッキであるメリットが生まれる。ゲームに必要なのは4デッキなので1デッキ余る。これを半分にして配ればそのままマナに出来る。全てのカードを使用出来てお得だ。
ルールとカードのマッチポンプ
TCGというものはルールで制限し、カードでその制限を取り払うものである。特別なカードが存在するためには、それ以外が平凡でなければならない。
どういうことかと言うと、例えば素早さに特化したカードを作りたいとする。そうなると他のカードが遅くないとダメなのだ。「出たターン攻撃できる」を成立させるには「出たターン攻撃できない」ルールが無いといけない。同様に「マナを支払わずに場に出られる」「〇枚ドローする」などもそうである。
いわばルールとカードのマッチポンプであり、カードの幅はルールの制限の多さである。
ルールはシンプルでなければならない。制限は気づかれずに、基本的には気にしなくていい状態かつ直感的にしなければならない。
今の段階で出来る行動は以下の通りである。
・手札のカードを場に出す
・カードを移動させる
・カードに攻撃させる
そのうち、移動、攻撃を出たターンは基本的に出来ないようにし、カードの位置≒ライフであるため、1ターン中にそれぞれ1回しか出来ないようにした。
決まったこと
・ターン開始時ドロー
・マナ制。余ったデッキをマナ用カードとして受け取る
・ターン中に出来ることは
カードを出す
カードを移動させる
カードに攻撃させる
・出たターン、基本的に移動や攻撃は出来ない
・山札が無くなると敗北
説明書&箱裏
それを踏まえて出来たのが以下のゲームである。
ゲームマーケット2023秋にて3000円にて頒布予定なため、行く予定の方は立ち寄ってもらいたい。
後編→https://note.com/unnouunn/n/nac83b197d18a
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