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守護霊とのつながり方⑥ 産土神にお詣りする

これまで本シリーズでは守護霊とのつながり方について、イエ/ウヂの二系統と、それらのハードウェア/ソフトウェアに依らない仏教的観点から解説してきた。
簡単にまとめると、イエとは空間的なヨコの神縁であり、ウヂは時間的なタテの神縁であった。そして仏教はそれらの基盤(=インフラストラクチャー)を持たない人々にさえ、時空間を超越したクラウド・コンピューティングに譬えられるような、廣大な仏縁を齎す。またそれらは自身の御先祖様の系統を調べ、丹田を意識することで実践的に「つながる」ことができることを明らかにしてきた。

しかし言うは易しで、父系にせよ母系にせよ、先祖を調べるのが難しい人というのも中にはいるだろう。家伝を求めようにも祖父母が他界していたり、あまり親と仲が良くなかったり、ハイコンテクストな仏教の奥義にまで到達できなかったり……。まあつまるところ仏教とは口称念佛であり、既に如来と祖師方によってクラウドが用意されている以上、われわれがただ実践する分にはそんなに難しく考える必要はないのだが。
釈尊が用意したクラウドにログインするためのパスワードは、すでに850年前に日本人によって明らかにされている。

本記事ではそうした霊的に困っている人たちであっても手軽に「つながり」を回復できる方法を述べていく。

みなさんは産土神(うぶすな)という神のカテゴリーはご存知だろうか。
『すずめの戸締り』で宗像草太が唱える以下の祝詞、

「かけまくしもかしこき日不見(ひみず)の神よ。
遠つ御祖(みおや)の産土(うぶすな)よ。
久しく拝領つかまつったこの山河。
かしこみかしこみ謹んで、お返し申す。」

のように参照される。

これは自分が産まれた土地を代々護ってきた神は、その土地を離れても一生涯あなたを守護するという産土信仰と、「御祖」とあることから宗像家の氏神であろう、二つの系統の神様の合わせ技だろう。
作中、草太は「閉じ師」という霊的家業を代々生業にしてきたからには、「遠つ御祖」即ち初代閉じ師の産土神を、いやさらに遡って、人類と神々が今よりもつながっていた時代の神代の祖先神と、そして草太が産まれた土地の神とを結びつけている。
その点で上記の祝詞は非常に“魔術的”なものだと言えるだろう。

産土神にお詣りする

もはやこのシリーズを通読してきた諸賢には説明するまでもないだろうが、氏神というのは自分たちで祀ったウヂの神、ウヂの守護神のことだ。
対して産土神というのは、その土地にもとから祀られていた神、自分たちが来る前から祀られていた神であり、たとえば一般に「古都」と呼ばれるエリアでは氏子地域ならぬ産子地域が広がっている。なぜなら都市というのは血縁関係よりも地縁が優先されるからだ。
ウヂとイエのどちらでもない、その土地に住まう者であれば誰であっても護るのが産土神の役割とされている。
著名な産土神社を以下に列挙してみる。
稲荷神社、御霊神社、賀茂神社、北野神社など京都に古くから坐します神々のほかに、江戸では日枝山王が徳川氏の産土神とされており、本来であれば特定のウヂの神が産土神となるパターンも多い。やはり都市部では豊饒の神、みのりの神を筆頭に、火伏や水難除け、縁切りなど現世利益が求められる傾向にあったのだろう。

それらの多様な神々に共通項があるとするなら、ウヂもイエも参照されない代わりに、個人の信仰(ビリーフ)を強く求めたことだろうか。

霊感の強い人はお稲荷さんを「怖い」と感じてないだろうか? 同様に菅公や牛頭天王(スサノヲ)もなんだか怖いと思っていることだろう。荒ぶる神々はその霊験も灼かなため、霊感の弱い人であってもその神威が感じられる。これは都市部に暮らしていると、自然の脅威に対する感受性が衰えるためではないかと愚考している。

産土神は恐ろしい。

しかしその畏(おそれ)にこそ、畏(かしこみ)という古神道のエッセンスが詰まっているのではないだろうか。

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