詩「蒼月の孤狼」
蒼月の孤狼
意志薄弱な狼は群れを逐われた。歳若い獣と共に。
彼らを守らなければ。不透明な義務を抱き、研いだ牙を剥く。
獲物の首筋に歯を突き付けて、皮を裂き、肉を切り、骨を砕く食感が、狼の脳を揺さぶる。
――甘い。強さは、力を誇示する事は、余りにも甘美。
――苦い。強さは、命を冒涜する事は、余りにも苦渋。
身内から湧き出す感情は平行線を辿り、自己を二分した。
周囲が前者を望むのなら、人の目が在る時は、せめてその時だけは、何処までも残酷に成ろう。
心根が後者に軋むのなら、人の目が滲む時は、せめてその時だけは、自分を大切にしてやろう。
二分した己が暴かれたのなら。そんな可能性には、目を瞑ろう。
いつか、いつか訪れる、断罪の時を待とう。
何方にせよ、狼は罪を自覚していた。
肉を食わなければ死ぬ体に生まれ、命を奪ってしまえば苛む心を持っている。
生来の罪を、知っていた。
あとがき
本作「蒼月の孤狼」は、noteに公開している小説「パラレルジョーカー」を元にした文章作品です。
他の作品に興味を持たれた方は、小説や短編なども楽しんでいただけると幸いです。
マガジン
小説「パラレルジョーカー」
https://note.com/unmetal968/m/mb7a613c9dd02
短編
https://note.com/unmetal968/m/mec91a59c594e
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