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詩「蒼月の孤狼」

  蒼月そうげつ孤狼ころう

 意志薄弱な狼は群れをわれた。歳若い獣と共に。
 彼らを守らなければ。不透明な義務を抱き、研いだ牙を剥く。
 獲物の首筋に歯を突き付けて、皮を裂き、肉を切り、骨を砕く食感が、狼の脳を揺さぶる。
 ――甘い。強さは、力を誇示する事は、余りにも甘美。
 ――苦い。強さは、命を冒涜ぼうとくする事は、余りにも苦渋。
 身内から湧き出す感情は平行線を辿り、自己を二分した。
 周囲が前者を望むのなら、人の目がる時は、せめてその時だけは、何処どこまでも残酷に成ろう。
 心根が後者にきしむのなら、人の目がにじむ時は、せめてその時だけは、自分を大切にしてやろう。
 二分した己が暴かれたのなら。そんな可能性には、目をつぶろう。
 いつか、いつか訪れる、断罪の時を待とう。
 何方どちらにせよ、狼は罪を自覚していた。
 肉を食わなければ死ぬ体に生まれ、命を奪ってしまえばさいなむ心を持っている。
 生来の罪を、知っていた。

2024.07.28. Procreateにて制作

  あとがき
 本作「蒼月の孤狼」は、noteに公開している小説「パラレルジョーカー」を元にした文章作品です。
 他の作品に興味を持たれた方は、小説や短編なども楽しんでいただけると幸いです。

  マガジン
小説「パラレルジョーカー」
https://note.com/unmetal968/m/mb7a613c9dd02

短編
https://note.com/unmetal968/m/mec91a59c594e

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