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【技術深堀】無人レジは店舗の無人化を支援できるか?

最近はかなり忙しくまとまった文章を書く時間がなかったので本当に久しぶりの更新なのですが、今回はセルフレジと無人店舗の関係について書いてみようと思います。

最近は無人レジ業界が活況で、人件費削減に直接的に寄与するということでセミセルフを中心に急速に拡大しています。コンビニを中心にレジ町解消のためのフルセルフレジも増え始めており、そうした中「フルセルフレジを使えば無人店舗も実現できるんじゃないか?」と思う人たちも当然のように出てきて、一部ではそうした動きを加速させているようです。

ところがこのセルフレジ、無人店舗に適用するにはかなり大きな問題を抱えています。今回はその問題点について書いてみようと思います。

■防犯に寄与しない

当たり前ですが、万引きには全く効果がありません。オフィスコンビニのように「知り合いの目」がある場所であれば抑止効果は期待できるのでしょうけど、一般店舗ではそれが期待できない。バックヤードに人がいるとしてもその目が届かない時に入り込んで万引きを働かれると、棚卸まで気が付くことすらできません。これはかなり痛い。

「そんなこと日本人なら大丈夫でしょ」と思う方には、田舎の無人野菜販売所に車でやってきて根こそぎ持って行く窃盗団が存在していることを知れば防犯がかなり難しいことは理解していただけると思います。しかも扱っている商品は生鮮と違い日持ちし、しかも現金はより多くある…狙わないわけがないですよね。

■ユーザ操作ミスを回避できない

防犯面を仮にクリアできたとしても、ユーザミスによるレジ渋滞は避けられません。これが防犯以上に致命的な問題を生むのです。

例えばこの前セミセルフレジで買い物をしようとしていた時の話ですが、2台あるキャッシャーのうち1台が何故かパトランプが回ったままので支払いできない状態でした。チェッカーの人もなぜそうなっているか分からない様子で「今1台しか使えないんです…」と申し訳なさそうに処理していました。自分の番が来てみてキャッシャー見てみると…なんと、前の人がお金を入れた後精算ボタンを押さずそのまま帰ってしまったためで、それを指摘するとチェッカーの人がとりあえず処理してくれました。

で、ここで問題になるのが「なぜ私の前に何人もいた人はそれを指摘しなかったのか?」なのです。チェッカーの人からは画面が見えないので仕方ないにしても、その前を通る人は画面を見れば「ああ、精算ボタン押してないんだな」って思うはずなのに…でも理由は簡単なんです。「自分が関わらなくても自分的には問題ないし、関わったことで問題になったら面倒だから」。

これ、まだ有人レジだから指摘するだけで良かったのですが、無人レジだったら誰も対処せず空いているレジに向かうでしょうね。その結果長くなったキューレーンを見てお客様は踵を返して他のお店に向かうでしょう。人件費をケチって違うコストを押し上げるのはなんとも奇妙な話だと思います。


■結論:消費者に負担を押し付ければ押し付けるほど別のコストが上がる

消費者は店員ではないので、問題があればその店を回避して終わるだけです。盗難はもちろん、意図せず盗難になったり(スキャンだけして支払いミスしてそのまま放置とか)逆に意図せず他の人の支払いをすることになったり、その時にストレスを抱えたまま店で待たされたりすることを考えると、少なくとも現金は排除しないとダメだと思います(クレカなら後日マイナス支払いができるので)。簡単だからと消費者に負担を押し付けた結果、店からお客様が逃げ出して売り上げそのものが落ちる…そんな未来にならないことを切に願います。

…そう考えるとAmazonGoの仕組みは良く考えられているな、と感心しますね。店側のコストから考えるのではなく、消費者側のコストから考えた仕組みだからこそあれだけ評価されるのでしょう(コストが見合うとは言っていませんが…)。

【2019/7/27追記】ローソンさんが夜間限定ですが無人店舗の実証実験を始めるとのことです。吉と出るか凶と出るか、興味深いですね。


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