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2018.08.25. 日記601 上滑りする記憶の輪郭

ミランダ・ジュライの『あなたを選んでくれるもの』を読んでいます。新潮クレスト・ブックス。翻訳、岸本佐知子さん。オーロラの話と平行して読む。「本物の人間」は頭の中でこしらえた人間よりもっと奇妙で、面白く、ときにグロテスクでぜんぜんちがう時間を生きている。あるいは、思いがけず重なる部分も多分にふくまれており、ちがうと思いきやおなじで、おなじと思いきやちがっていて。ばちっと思い通りにハマることのない、ゴツゴツしたことばをお互いに持ち寄る。はじめましてなら、なおさら。わたしは知らない人間とことばを交わすことがわりと好き。ゴツゴツした会話をしたい。あるいは知り合いでも友人でも、会うたびに距離や感触を描いた想像の輪郭線がアップデートされる。一人ひとりと顔を合わせ頭の中にある想像との差分が補正されるときの感覚が、ひとの生きた実存だろうか。おもてたんとちがう。もっと生きてた。静止した脳内の記憶と生きた人間とのあいだには差がある。会って話せば記憶が上滑りする。壊れて、再構成される。変化の差分が楽しみなひとには魅力がある。また会いたいと思える。人びとは動いている。刻一刻。再会して、わたしの中にある記憶を書き換えてほしい。かたちも色も書き換わる。次に会うとき、あなたは哺乳類をやめているかも。触覚が生えていたり、うなぎみたいにぬるぬるしていたり。ポメラニアンみたいに愛らしかったり。ちょっと思ってたよりも、思ってたよりも。

にゃん