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日記663 夕暮れから

夕暮れは奇妙な生き物だと思う。奇妙な生き物の中に、さらなる生き物たちが棲んでいた。生き物は生き物を生みだし、そして殺した。きょうの生まれたてもやがていなくなって、視界から消えた。「いない」とはどういうことなのか、あるいは「暗い」とは、「明るい」とは何か、始原に光はどうやって生成されたのか、夜も昼も朝も何だかよくわからなかった。気がつけばやたらと大きくて、奇妙奇天烈な生き物に呑まれていた。それがここにいる理由だった。朝が来て、夜になって、わたしもあなたも歩いていた。幸せが増えすぎた21世紀たち。この場所ともいつかお別れする。今世紀のうちに死のうと思った。希死念慮のふりをして、あと81年もある。世紀末まで生き切ったら立派なご長寿だ。でも今世紀中のどんなタイミングで死ぬかはわからない。知りようもなかった。なんにせよわたしは21世紀に生きている人間で、この時点からの移動は困難だった。

30世紀になっても人類がしぶとく文明をやっているとすれば、この時代をどうふりかえるのだろう?みたいなことをときおり思う。歴史の繋留点はどこへ置かれるのか。ポイントとなる関節を捉えることができたら、ひと思いに脱臼させてやりたい気もする。時の流れにオクトパス・ホールド。しかし、時間に関節はなかった。継ぎ目という継ぎ目は身勝手な創作物だ。ことばは幻想によって接着する。きのうときょうは眠りによって継がれた。意識のジョイントがバラされ、再構築される。目覚めたとき、きのうとおなじ世界が続いているなんてちゃんちゃらおかしいが、渋面で起きた。おなじではない。きのうの自分は消えた。わたしたちは未来に目覚める。ぼんやりと、遠い遠い未来を想像しながら現在を感覚してみる。へんにくすぐったい気分になった。20億光年の孤独に思わずくしゃみをするような。過去が未来を追い越してしまったような。むずむず。寒さのせいか。寒さよりザムザみたいに虫になれたらいいなと思う。カーテンを開けると、一面に空は青かった。

シンクが落ちていました。

もう1月13日ですが、新年の目標らしきものを掲げておこうと思います。実現可能性の高い目標。まず身体をやわらかくします。骨抜きにする。自分で自分を。ふにゃふにゃに。頭痛やら痔やらもろもろの不調も固さが原因の一助を担っていると思えてきました。ちがうかもしんないけど。諸悪の根源であると根拠なく嫌疑をかける。冤罪でもいい。

年が明けてから肩まわりと骨盤まわりのストレッチを続けていたら、少し背が伸びた気もします。測定してはいません。気の持ちようだよ。これはもういいことしかないと思うので、とにかく気合をいれてやわらかくします。哺乳類という分類から脱するほどやわらかくします。題して、哺乳類脱出計画です。年末には母なる海のもとへと帰ります。広い太平洋側のほうから帰ります。人間やめます。やさしく見送ってください。月へ向かうかぐや姫を見送るように。罪を漱いで帰るの。止めないで。Don't stop me now. I'm trav'ling at the speed of light. I wanna make a supersonic man out of you.

柔軟がまず実現可能性の高い目標です。
でも優先順位は2番目。

1番は、死なずにいる。
以上。



にゃん