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プロの編集者は取材中、ノートに何を書いているのか #4

こんにちは、アンノーンブックス編集部です。

UNKNOWNBOOKSのレーベルからの新刊となる、レゲエ・ユニット「MEGARYU」のボーカリスト、RYUREXさんの本づくりシリーズの4回目。今回は「どんなふうに取材を進めるか」について話してみたいと思う。

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「X MARKET」は2017年、岐阜市若宮町にRYUさんがオープンさせた複合商業施設だ。このX MARKETの一角、大通りに面した大きなガラスのすぐ向こうにRYUさんのオフィスはある。いろいろなジャンルの人がお互いの境界線をこえて交流できる、「クロスオーバーするマーケット」という意味で名付けたというRYUさん。

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彼のオフィスのほかに、パーソナルトレーニングジムやインターネットラジオスタジオ、ハーバルコーヒーやアクセサリーのショップなどでにぎわう空間は、NYのグリニッジビレッジさながらの雰囲気。この場所で、もう何度目かになる本のインタビューの続きはスタートした。

インタビュー形式で取材を進める際には、いくつかの方法がある。たとえば、ダイエット本やお金の本などハウツーを紹介する内容の場合、あらかじめ編集サイドが用意した質問に沿って、一問一答スタイルで解説してもらうことが多い。

技術者や学者が著者の本の場合、まずは先方の研究内容や主張をじっくり聞き、そのうえで「さて、どんな本にしようか」と、はじめてテーマを練りはじめることもある。

今回のRYUさんの本は、経営者の自伝的要素が強い本をつくる時の取材のように、時系列を追って丁寧に細かく話を聞いていくことに決めた。そのほうが、今のRYUさんを形成している、これまでに「経験したこと」や「出会った人」「考え方の変遷」などを深く知ることができると思ったから。

RYUさんの名前をはじめて知る読者にも、彼がどんな人で、どこに向かって行こうしていこうとしている人なのかをわかってもらうのが、僕らの目指すところでもあるからだ。

だから僕らはあらためて、今のRYUさんという存在の原点となる、子ども時代のことから話を聞いた。礼儀正しい敏腕の営業マンだった父親と、いつでもおおらかでポジティブな母親が築くリベラルな家庭の話を聞きながら、目の前にいるRYUさんのあちこちにご両親のDNAを見つけては納得していた。

取材の方法もいろいろあるが、聞き手のスタイルもさまざまだ。著者の話すことを一言一句もらさないようノートにペンを走らせ続ける人もいれば、ICレコーダーまかせでまったくメモをとらない人もいる。最近は、相手の話を聞きながら、同時にパソコンに打ち込む人も増えてきた。それぞれ自分なりの流儀や進めやすいやり方を持っているものだ。

アンノーンブックス代表の安達は、そのどれでもない。ノートを開いてメモはとっているのだが、ふと覗いてみると、そこに書かれているのはRYUさんの話したことだけではない。数字や固有名詞、キーワードとなるフレーズやワードのほかに、自分の考えをまとめ、書き留めているのだった。

いわく、「著者の話を聞きながら、『こういう方向に膨らませていくのもアリだな』『あと2つ柱を立てるとしたら、この部分が足りないから後で聞いておこう』というように、つねに本全体の構成を考えている」とのこと。

相手の話を聞きながら「どんな本にしたらもっと面白くなるか」という編集者の視点でモノを考え、そのための次の一手となる質問を重ねる。つまり、「聞く→考える→尋ねる」を繰り返すことによって、より深く核心に近づいていくというのだ。

編集者にとって、取材中に開くノートは単にメモをとるための紙面ではなく、本の精度を高めるためのクリエイティブなスペース。RYUさんの話を聞きながら、次々とノートのページは埋まっていった。

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