編集思考は、変化の時代の武器になる
アンノーンブックス代表の安達智晃です。こんにちは。
このマガジンでは、ふだん僕がどんなことを考えながら本の編集やコンテンツを考えているか。長い間「ものづくり」に向き合ってきた僕なりの考え方をシェアしていきます。
とはいえ、単に過去の体験を語ることはしたくありません。今こそアップデートしなければならない「時代性」を意識した内容でお届けしようと思います。
自分らしく生きていくためのスキル
「編集」という言葉を、最近よく耳にするようになりました。それもそのはず、多くの人が日常的に「これ」をしているからです。
写真や動画を撮り、文章を書き、facebook、twitter、Instagram、ブログなどで投稿する──まぎれもなく「編集」なわけです。
ただこれらの編集は、本づくりをしてきた僕らのいう「編集」とはだいぶ違います。僕らの「編集」とは、素材の切り貼りや装飾といった具体的なスキルの話ではありません。
「相手のどこに光を当てて魅力を引き出すか」を思案したり、「どうしたら読者の心に刺さるように伝えられるか」を工夫したりといった考え方の話。つまりは、編集思考です。
光の当て方や素材の選び方、相手への伝え方を考え抜くことで、そのもの以上にバリューを高めていく作業こそ、僕らのいう「編集」。
だとしたら、編集思考は動画やSNSなどの編集をする人にとっても、個人のキャリアを醸成していくうえでも欠かせない大事なファクターになるはず。もちろん、その先にある、僕らひとりひとりの人生を自分らしいものにデザインしていくことにもつながっていくでしょう。
つまり、編集思考を身につけていれば、どんな仕事に就こうと満足のいく結果を出せるし、いつだって自然と心地よく生きていくことができる。そんな時代が、すぐそこまで来ていると思うのです。
なぜ、僕たちは本を読むのか?
いわゆるベストセラーと呼ばれる本づくりに携わる経験が増えるにつれて、「本の編集をするにあたって、もっとも大切にしていることは?」という質問をされる機会が多くなりました。
本のテーマや著者の思考、読者のニーズなど考えるべきことはたくさんありますが、僕の場合、もっとも時間をかけて悩んで、探って、揉んで、決断しているのが「ゴールの設定」です。
本をつくる具体的な作業に入る前に、最終的なゴールをどこに設定するかを決める。ここにもっとも時間もエネルギーも費やします。
これは、本そのものの存在意義の話にもかかわってくることかもしれません。というのも、本を出すこと自体は決してゴールではないからです。
たとえば、一冊の本を出す時、そこに編集者のどんな思いがあることを想像しますか?
「出版社の売上アップに貢献するため?」
「世の中にはこんな人がいてこんなことを言ってますよ、と広めるため?」
僕はそのどちらも否定はしないけれど、正解でもないと思っています。
なぜなら、本は出すことがゴールではなく、本を読んだ人のなかで何かが変わることが、本という存在が持っている意義だと思うから。
「この本を読んで、今日からこんなことをはじめてみることにした」
「この本を読んだことで、こんなふうに考えられるようになった」
そんなふうに、本は、読者の成長のためのティップスや、生きやすくするための知恵が書いてあるツール。本を読んだことで何かが変わり、今までになかった行動や考え方ができてはじめて、読者にとってその本と出会った意味が生まれるのだと思っています。
だから、僕が本をつくる時に最初に決めるようにしているのは、「どんな状態の人に、どんなアプローチをすれば、どんなアクションを起こすか?」という逆算から考えた最終的なゴールです。
必要としている人に、必要なコンテンツを届ける──著者と読者の橋渡しをするという、シンプルだけれど大事な作業が編集者に課せられた役割だと感じています。
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