MINOLTA AUTO ROKKOR 55mm f1.8の分類について

MINOLTA AUTO ROKKOR 55mm f1.8について


1958年、千代田光学精工(後のミノルタ)が初の一眼レフカメラSR-2を販売し、その標準レンズとして登場したのが本レンズです

MINOLTA SR-2

その翌年、SR-2の普及機として登場したSR-1では標準レンズが55mm f2(初期型)に変更されました
1961年4月SR-1の標準レンズ55mm f2は完全自動絞り対応になります、同年8月この標準レンズが55mm f1.8に変更され、コレも完全自動絞り対応レンズになり、このレンズ群が「Bシリーズ」と呼ばれます
このSR-1の標準レンズがf1.8に変更された時期については1962年とする情報もありますが、「クラシックカメラ専科ミノルタカメラのすべて」に記載された「1961年8月25日にSR-3の標準レンズが58mm f1.4になり、同日SR-1もf1.8が標準化された※要約」と具体的に解説しているのでこの説を採用します

その後、1965年にSR-1を小型化したNewSR-1が登場しこれに合わせて、小型化したフィルター径52mmのCレンズ群を販売、これに本レンズも含まれ小型化された55mm f1.8が登場します
 その後1966年にMC 55mm f1.7に標準レンズの座を譲ります

55mm f1.8

『MINOLTA SR LENS INDEX』について


私はミノルタレンズを収集する過程でSNSやネット情報、更に数刊ある“ミノルタの全て“と称する本やミノルタ特集記事がある当時のカメラ雑誌も購入して情報を集めました

参考資料

ネット上では本レンズを前期、後期に分類する記事や情報を目にします
具体的に異なる点なども紹介しているので、それを信用していましたが、あるフォロワー様が紹介していた情報を確認して、それが現存する中で一番正確であると確信しました

それが『MINOLTA SR LENS INDEX』です

このIndexは海外用レンズまで網羅しており、私の知る限りでは一番詳細に掲載されています
但し、現物を収集する中で一部誤りも確認できます具体的には後述します

本レンズの分類

このINDEXによると、本レンズは4種類に分類されています
先述のとおり時代で分類すると3種類に分類できます
1958年の初期型、1961年のB型、1965年のC型となります
更にIndexではC型を2種類に分類して計4種類に分類しています
都合上、C型を3型、4型と呼称します
それぞれ、Index記載のサイズ、発売年(1965年)等のデータは同一ですが
3型はシリアルNo.447XXXX〜453XXXX
4型はシリアルNo.2XXXXX(Edition for SR-1s)
と分類しています

それぞれの特徴

分かりやすい様に初期型を1型、B型を2型、C型を先述のとおり3,4型と呼称します

1,2型と3,4型の区別は簡単です
1、2型が
フィルター径55mm 、絞り羽数8枚
3、4型が
フィルター径52mm、絞り羽数6枚
と分類できます

4種類の55mm f1.8

1型と2型の違い

ネット上には、同じフィルター径55mmで同一とされている情報を目にしますが、全く異なります

1型の目盛り
2型の目盛り

明らかな違いは"最小絞り値"
1型はf22、2型以降はf16
これは「55mm f2」や「35mm f2.8」も共通で初期型のみf22になります

∞マークが小型化、目盛りの幅の違い等も見受けられます

絞り羽の枚数は8枚で同じなのですが、形状が異なります

1型の絞り羽
2型の絞り羽

レンズ前面から見て1型は花形の様な形状2型以降は渦巻き型の形状、レンズを分解後に取付けを誤ったのかと勘ぐりましたが、私有の他の1型レンズも同様の形状でした

1型の別個体(油が‥)

レンズ側面にあるレバーも異なります
そもそも機能が異なります
1型は半円型で絞りロック機構、2型はつまみ型でプレビューバーとなっています

1型の絞りロック
2型のプレビューバー
「クラシックカメラ専科ミノルタカメラのすべて」より

昭和63年に発刊された「クラシックカメラ専科ミノルタカメラのすべて」の記事でも同じΦ55mmで新タイプ、旧タイプと区別しています
平成15年に発刊された「ミノルタカメラのすべて」でも前述のとおり、上記新タイプを「Bシリーズ」として分類しています
IndexではAR-1型とAR-2型で分類し、更にAR-1型には『editions with half stops 1:1.8-8 or 1:1.8-5.6 or no half stops』という但し書きがあり、1型でも更に3種類が存在することを謳っています

つまり以前からフィルター径55mmには最低2種類に分類されており、コレをひとまとめにして前期型と呼ぶのは暴論と感じます

3型と4型の違い

IndexではシリアルNo違いでサイズから何から同じ様に記載されていますが、実物で比較すると明らかに違う事が判明します
一番の違いは最短撮影距離です

3型の最短撮影距離刻印
4型の最短撮影距離距離刻印

3型の最短撮影距離が0.5m、4型は0.55m
更に詳しく見ていくと3型が少し小型です

左4型、右3型
3型の目盛り幅6mm
4型の目盛り幅7mm
3型の銘板
プレビューバーの脇にネジ穴

3型の銘板、プレビューバーの脇にネジ穴があり、4型にはありません

左4型、右3型

リアレンズ側のネジ位置も異なります

3型、4型の考察

ココで4型の“SR-1sエディション“に疑問符がつきますSR-1sは1967年に登場し雑誌の情報やネット情報を漁ってもSR-1sの標準レンズはMC55mm f1.7とされていますよって、Index記載の“SR-1sエディション“と発売年1965年という記載に整合性がありません

しかし、このIndexを元にレンズを収集したところ、4種類を収集するに至りました
Indexの紹介のとおり4種類が存在しシリアルNo.違いと思っていた3型と4型の実物を比較すると前記のとおり明らかな違いがあり単なるNo違いでは無いことが判明しました

そしてIndexによれば同時期に存在した55mm f2も同様に4種類存在し、本レンズの実物で確認した3型と4型の違いと同様に最短撮影距離が異なると記載されています
こちらの4型も"SR-1sエディション"と記載があり、発売年は1967年とSR-1sの販売年と一致します

ここからIndexの55mm f1.8と55mm f2が同時期に存在し、それぞれ、1965年にC型として3型が登場し、その後1967年にSR-1s用として4型が登場したと推測します

まとめ


海外のミノルタマニュアルレンズレビューサイトを確認すると、1型に7種、2型に5種、更にそれ以上に分類できると記載されていますが、それを裏付けるデータが無くシリアルNo違いや色違い等が含まれ適切とは言えません
また、それが記載さているレビューサイトもこの細分化された分類を取り入れておらず、フィルター径Φ55mmを2種類に分類しています

先述のとおり、過去の雑誌でもΦ55mmは2種類に分類されていました

この分類が写真の写りに何か影響があるかと言えば全く関係無いでしょう
つまりコレクターにのみ必要な情報です
しかし、ネット上には真実の様に偽情報が垂れ流されており、私自身コレを信用していました

SNS上でも誤った基準を参考に分類した情報の投稿を目にします

このノートが今後、本レンズの正確な分類の参考になれば幸いです

参考
朝日ソノラマ
『クラシックカメラ専科ミノルタカメラのすべて』
枻出版社
『ミノルタカメラのすべて』


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