【小説】弥勒奇譚 第十話
その夜久しぶりに夢を見た。
さらに続きがあり少女が弥勒に語りかけるのだった。
口元は喋っているようには見えないのだが、この世のものとは思えないような清らかな声が直接心の底に響いて来るように感じた。
「ここから龍穴社を背にして山を登ると立ち枯れた
榧の大木があるからそれを使って仏を彫りなさい」
まさに夢のお告げだった。
目を醒ました弥勒は居ても立ってもいられずまだ暗い中を裏山に行ってみた。まだ薄暗いうえに狭い急な斜面を何度も足を滑らせながら登った。すると平らな場所に出て夢で少女