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スターバックスに現れる京都在住痴女

はじめに

 京都に住み始めて10年目。
 年齢の三分の一以上の長い期間を京都で生活して来ましたが、京都は「学生の街」と表現されることもあり、四条通り、河原町通り、寺町通り、etc...中京区内を散策すれば、学生を含めて多くの若者を見かけます。
 少し前までは、自分自身もその若者の群れを構成する一人としての自覚がありましたが、今では少し遠い存在に感じてしまいます。
 若者ひとりひとりは恐らく週刊少年ジャンプの表紙を飾れるくらいに個性的な人たちだと認識していますが、彼らと街ですれ違ったり、喫茶店のカウンター席でたまたま隣に座ったりした際は、顔も服も髪も覚えておらず、個人的な性癖を露呈して気恥ずかしいのですが、匂いくらいしか記憶に残りません。
 そんな中で、まだまだ短い人生の途中で最近になって居合わせた強烈な女学生について少し書こうと思います。
 私事ですが、お付き合い頂ければ幸いです。

中京区内のスターバックス

 場所は中京区内にあるスターバックスコーヒーです。
 学生時代から、大学のレポートなり音楽活動なりの作業が煮詰まると、家から喫茶店やカフェに場所を変えて気分を入れ替えながら作業をする習慣がありました。
 コロナ禍。オリンピック前に第四波では、と東京では騒がれていたタイミング、京都ではどこかイマイチ緊張感に乏しい雰囲気でした。世の大学生は軒並み夏休みであり、コロナ禍でほとんどの講義がオンライン授業になっていても、やっぱり夏休みは特別開放感に包まれるのかも知れません。
 その日僕が家から一番近いスターバックスに行くと、まだ正午も回ってないのにほとんどの席が埋まっていました。そうか夏休みかと合点がいきながら、いつもなら真隣に他の客が来るので絶対に座らないカウンター席が辛うじて空いていたので座ることにしました。
 日頃絶対に座らないので隣の客との距離感に慣れず、自分の大きい体のサイズも相まって身じろぎする事もままならない状態。ですがどうしても座りが悪く、足を組み直そうとすると、組んだ左足が隣の席に座っている女性の足に当たってしまいました。
 僕は一応年相応の社交性ぐらいは持ち合わせているつもりですので、軽く謝りながら会釈をしました。すると隣の席の女性はマスク越しでも満面の笑みに見えてしまうくらいに両目を細めて、両頬の筋肉を持ち上げながら僕の会釈に応えてくれました。
 チラッと見た感じどうやら大学生らしく、テーブルに幾つかレジュメが散乱しており、タブレットを操作しながらノート作成をしている女の子でした。笑顔で対応されるといつでも気持ちの良いもので、女の子の足を蹴ってしまった罪悪感も綺麗に彼女の対応で流れて行き、作業を再開しました。

女子大学生のパンツ

 しばらく自分の作業に集中していると、視界の端、隣の女の子側にカラフルな色がチラチラと動いているのが気になりました。何気無く動きのある方へ視線だけ向けると、隣に座る女学生が自分の履いているチェック柄のスカートを持ち上げて、下着をチラッと露出していました。
 ギョッとして、周囲の人からの視線が気になり目を泳がせますが、周りの人は全くこちら側を気にしていない様子で、それどころか彼女自身も藍色のパンツを露出している事に気付いて無いかの様に振る舞っていました。恐らく、どうやら、確かに、彼女は僕に自分のパンツを見せ付けているのだろうと思いました。しかし、まるで僕だけが違う世界線に居るのかと錯覚してしまいそうなくらい目の前のパンツとそれ以外の空間が全くマッチしていなくて、藍色のパンツ以外は全部白黒写真に見え始めました。
 それからは自分の作業に集中できるはずもなく、彼女がレポート作成を終えて店を出て行くまで、僕はお尻に根が生えて椅子と一体化していたので、動けませんでした。

 彼女の顔も髪も今はほとんど覚えてないのですが、その日見せられたパンツだけは強烈に覚えています。彼女がその時初対面だった僕に何をして欲しくてパンツを見せて来たのかは分からないままですが、それから数週間、そのスターバックスに行く度に彼女の藍色のパンツが頭にフラッシュバックする様になってしまいました。恐らくこの状況は彼女の思う壺であったと思います。
 二十代前半の頃は、女の子の妖艶さに引っ掛かるだけ引っ掛かって、全身傷だらけになる様な恋愛の仕方をしていました。それもあって今では、女の子に対しては一歩引いて冷静に対応出来るという自負もありました。ですが、唐突に見せられたパンツひとつで数週間に渡って頭がいっぱいなっている自分が情けないです。

 京都に来てから十年、今まで数え切れない程の人と知らず知らずすれ違って来たかと思いますが、彼女ほど強く記憶に刻まれた人間は今の所いません。常日頃から女の子には意図的にシビアに対応する様にしていたのですが、こうも簡単に、しかもまだ若いであろう大学生の女の子に頭の中をいっぱいにさせられた事はとても悔しい思い出です。早く綺麗さっぱり忘れてしまいたいです。


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