即席の大人数チームが48時間のゲームジャムで入賞できた開発テクニック&チームビルディング
今回の記事は、2020年12月に開催された「ClusterGAMEJAM 2020 in WINTER」でのお話。
バーチャルプラットフォーム・Clusterを運営するクラスター社さんが主催するオンラインゲームジャムイベント。イベント開始時に発表される「テーマ(お題)」に沿って、48時間以内にCluster内にゲームワールドを制作するというゲーム開発イベント(コンテスト)です。
Unity Japanは2020年7月の第1回から協賛させていただいており、今回もUnity Japan賞を選定させていただきました。
ちなみに今回のテーマ(お題)は「溢れるエナジー」。
今回のお題に対し多くの応募作品が、(エネルギーを)「集める」「貯める」という動作を取り込んでいましたが、Unity Japan賞に選んだ作品はそれとは全く異なる動作「放出する」を取り込んだものでした。
それがこちら。
チーム・ほたてのかいがら による『Butter NekoInflation(バターネコインフレーション)』です。
この作品の世界観はこれ。
「バターを塗ったトーストは常にバターを塗った面を下にして着地する」
「猫は常に足を下にして着地する」
・・・この2つの"法則"、つまり「バターを塗った面を上にしたトースト」を「ネコ」の背中にくくりつけて落とすとバターを塗った面とネコの足の両方が着地しようとするため、くるくると回転し続けて電気が生まれる・・・というオチの話。
この永久機関によって生み出される電気をいかに消費し続けられるか?というのが『Butter NekoInflation』の遊び方です。
ここに触れれば猫とバタートーストがくっつき回転しはじめ、奥に設置してある発電機に放り込まれて、電気が無限に作られ始めます。
これが発電している様子。そのまま放置しているとバッテリーが爆発してしまうので・・・
この機械のボタンを押して家電製品をジェネレートし・・・
家電製品を発電機とつなげることで電気を消費していく流れ。
1人プレイも楽しいですし、複数人プレイも可能です。時限爆弾ゲームみたいなスリルをVR空間で体験できる作品です。
今回、この『Butter NekoInflation』を制作したチーム・ほたてのかいがらの皆さんにインタビューしました。
同チームはなんと8人体制! 一体どのようにしてチームをまとめたり、開発テクニックを駆使したのでしょうか。
チーム内での明確な役割分担
Q. 今回の制作チームは全員で8人構成と伺いましたが、どのようなメンバーが集まったのですか? また、イベント内でのそれぞれの役割はどんな感じでしたか?
もともと作業やゲームをみんなでやるためのDiscordサーバーを作っていたので、そこで募集をして8人のメンバーに集まってもらいました。
初対面だったり無言勢だったりの大人数チームですが、私が全体の進行管理とシーン管理、2人がギミック作成、2人がモデリング、1人がエフェクト作成、1人が効果音作成、1人がUI作成とはっきり役割分けをしてゲームを制作しました。
徹底的な議論を経て、重要な要素を決める
Q. 閉会式の受賞者インタビューで「テーマ発表後の会議は6時間に及んだ」というエピソードを紹介されていましたが、『Butter NekoInflation』を制作し始めるにあたり、チームでどんな議論がありましたか?
『溢れるエナジー』というお題の解釈が難しく、何を作るか全く決まらず会議が長引きました。会議中ホワイトボードの端っこに誰かがバター猫エンジンの絵を描いていて、それがいつの間にか中心テーマになりました。(猫好きと猫が多いチームでした)
最終的にはバター猫エンジンというテーマをコアに、どんどん数字が増えて溢れてインフレーションする要素、段々と忙しくなってタスクが溢れてしまうシミュレーションゲームのような要素を組み合わせてしまおうと考え、完成品のアイデアが出来上がりました。
「本当に時間内に作れるのか?」とか「これは本当におもしろいゲームになるのか?」みたいな疑問はかなり遅くまで議論しました。
Q. 48時間という短い制作時間で作品を仕上げるコツはありましたか?
48時間でゲームを作ると言うことは製作中に悩んでる暇はないと言うことかと思います。
今回かなり長く会議をしたのもそのためで、会議の時点で「こういうふうにギミックを組んで」「こういうプレハブを何個作って」「こういうモデルを用意する」ということは大体決まっていました。
苦労した点ではありませんが「ちょっと面白そうだけど、ギミックが複雑になり間に合うか分からない」というアイデアをボツにしなければいけなかったのは心苦しかったです。(初期にはバター猫で仮想通貨を発掘して、家電を買うみたいなアイデアがありました)
Discordを常時通話&オンラインホワイトボードの活用
Q. Unity以外にどのような開発ツールを使用しましたか?
モデリングはBlenderやSubstance Painter、UI作成はAdobe IIllustrator、効果音作成はAbleton Liveなど、各々使い慣れたツールを使っていたかと思います。
全員オンライン参加ということで、作業共有にDiscordを常時通話状態にしていたのと、これは開発ツールかは微妙なところですが、会議のためにMiroというみんなで使えるホワイトボードを使ってました。複数人でのオンライン会議ではかなり便利でした。
ゲームの見どころの作り込み
Q. 「バター猫パラドックス」というトリッキーな世界観を、プレイヤーが遊び方を想像しやすいギミックやグラフィックに仕上げた・・・という印象ですが、これらギミックやグラフィックで何かモチーフや参考にしたものなどはありますか?
バター猫パラドックスを知らなくても何をすれば分かるように、次にやることの説明をゲームの進行に合わせて文章で逐一表示するようにしていました。
元ネタはお察しの通り動画ですが、それのラストで光が灯るシーンが印象的でゲームの進行と共に光と音が溢れるようにしようと思い、アニメーションやエフェクトにはこだわりました。
Q. 制作チームの皆さん自身が遊ぶ人たちに伝えたい『Butter NekoInflation』の注目ポイントを教えてください。
アイテムの変化が注目ポイントです!
最初の会議の時点で電源がつながったことが分かりやすいように、アイテムの見た目や音・エフェクトを変化させようということを決めていました。
すべてのモデルをフルスクラッチで制作できたので、アニメーションで光る部分の設定や形の変化を意識してモデリングされています。
また、電源をつないだときの音やエフェクトもフルスクラッチで作っており、それぞれのアイテム固有の変化を楽しんでもらえたらと思います!
ステージのどこかに隠しにゃんにゃんがいるので探してみてにゃっ!ฅ(^・ω・^ฅ)
大人数チームで開発する楽しさ
Q. 最後に、今回の「ClusterGAMEJAM 2020 in WINTER」に参加した感想を伺わせてください。また、次回のゲームジャムイベントに参加したいと考えている人たちにアドバイスがあれば教えてください。
ワールドが完成してアップロードした直後は「辛かった、もうやりたくない」と言っていました。しかし今は通話をつけたまま寝てしまったことや、会議が朝方まで長引いたことなど、なんだかんだ楽しみながらやっていたんだなーと思い出せます。
2日間という短い時間の中で企画から制作までをやることはとても大変なことですが、複数人でアイデアを出し合い思いも寄らないアイデアにつながることや、それぞれのメンバーが作業分担して得意なことをいかして作成したものがひとつになって完成することなどは、とてもやりがいがあることだと思います。
次回のゲームジャムイベントに参加したいと考えている方々は、ぜひ可能なら複数人チームで参加してみてはどうでしょうか!