【キナリ杯】Creativityの有効活用

すでにご存じの方も多いとおもいますが、
映画監督であり俳優でもあるTaika Waititiが、友人の豪華俳優陣といっしょに
Roald Dahlの名作である”James and the Giant Peach”を朗読した動画をYouTubeにアップしています。

これはもう、これは、
Taika Waititiファンならもうそれだけでうれしいものを、
参加している俳優陣がまた目のとびでるほど豪華。

Meryl StreepにBenedict Cumberbatch、Eddie RedmayneにCate Branchettて…。
映画ファンでなくても名前をきいたことがあるだろう、有名なひとが勢ぞろい。

児童文学の朗読といえば、
Harry Potterシリーズも、コロナ禍のロックダウンで暇をもてあましているだろう子ども達(大きいおともだちを含む)にむけていち早く特設サイトをオープンし、
映画に出演した俳優陣をふくむ著名人による朗読リレーを順次公開していることで有名。
そういえば、こっちにもEddie Redmayne出てるね。

そっちもまぁちょこちょこ聴いてるんだけど、
今回のTaika Waititi監督の試みで感動したのは、その創意工夫にとんだ精神。

Harry Potterは俳優陣がおおく参加しているとはいえ、あくまで「朗読」感がつよい。
セリフ部分でも過剰な演技はせず、比較的たんたんと読みすすめていく。

それに比べて、Giant Peachの朗読はドラマや舞台の台本読みにちかいのかな?
リアルにキャラクターを演じるほどの生々しさはないものの、各俳優陣が茶目っけたっぷりに、個性ゆたかなキャラクターを表現している。

このシリーズは、原作者であるRoald Darl協会をつうじて、コロナ危機に直面している医療NGO団体Partners in Healthへの寄付をよびかけることを目的としている。

なんか、なんというか、この危機がはじまった時に、
文学研究にたずさわるものとして、人文学の分野において今なにができるのか、できることなんてあるのか、文学なんかにかかずらわってる場合なのかっていう空気がうまれた。

もちろん、この長く鬱屈とした時間をやりすごす手段として読書がもてはやされたり、感染病を題材とした作品が注目されたり、文章をかいたり創作活動をはじめるきっかけになったり、
文学研究はたしかに人々のこころの支えになってた。

私たちはそういう文学のちからを知ってたし、信じていた。

それで、創作にたずさわる人たちはこの危機をのりこえて、この時間をすばらしい作品に昇華させて、また世の中におくり出し、問いかけてくれると信じて引きさがった。

待つことにしたんだ。
何をしたって「不謹慎だ」って思わぬ方向からヤリが飛んでくるような状況から脱けだして、
また思うぞんぶん作品世界にひたり、思い思いの言葉を発し、想いをかわせる日がくることを。


待つより先に、動いてくれた。
そろそろ、もうだいぶ前から割としんどくって、もう待てないんじゃないかって、息苦しさを感じてたんだ。
それはまだ、「作品」とよべるほど完成された形じゃなくって、ほんとうはもっと練習したり、時間と技術をつぎこめるかもしれない。
どこか遊びのような気楽さで、ミステイクもふくめたありのままの姿の公開は、プロとしては不本意な部分もあるかもしれない。

キッチンを背景にしたビデオ通話、犬がうろつく部屋のなか、
水のはいったボトルや葉っぱの効果音、なんの変哲もない桃を物語展開にあわせて手動でズームアップする。
セリフがかぶったり、指示をミスリードしたり。

お金もかかってなくて、凝った編集もされてない。

だけど、なにかを創造するのに大がかりなセットや入念な下準備なんて必要ないんだなって思った。

この危機をのりこえた文豪たちが、この危機を背景に壮大な物語を出版するのはまだ先になるだろう。
題材についての下調べ、構想をねり、文章を書き、校正がはいって印刷され、装丁デザインに製本、本のかたちになって各書店の店頭にならぶ。
個人のWeb上での情報発信や電子出版が容易になったとはいえ、まだまだモノとしてコンテンツを生産するには時間と手間、コストがかかる。
映画になって映画館で公開されるのもまだ先だろう。
音楽だって、絵画だって、マンガだって展覧会だって。

でも、モノとして完成されてなくっても、費用をつぎこまなくっても、創造することはできるんだ。

もちろんHarry Potterの特設サイトだってその朗読だって、自宅での演奏を公開したりいち早くかきあげた新曲を発表するアーティストだって、
みんな素晴らしいとおもうし、この状況で希望をとどけたいと思う気持ちに感謝して、感動してる。

だけど、Taika Waititi監督のGiant Peachシリーズは、ほんのちょっとの創意工夫で「作品」がつくれることを示してくれたんだよ。

なんの変哲もないビデオ通話だけれど、誰を何人をフェーズアップするか、手元にあるものでどれだけ物語世界を表現するか、
そういう何気ない、さりげない工夫が、この読み合わせ動画を「作品」にしてるんだよ。

映像作品をつくりたい人とか、ほんとうに参考にしたらいいと思う。
ささいな効果音だって、タネを丸見えにして、へたしたら悪ふざけみたいに見えるかもしれないけど、
それでもちゃんとそれらしく聞こえて、ちゃんと物語世界をふかめてくれる。
リモートで読みあわせる相手もつい笑いだして、おなじ時間と感情を共有する一体感がうまれる。
一緒にやってることに意味がうまれる。
遠くにいたって、おなじ時間を、気持ちを共有してる。

ほんの小さな、ささいな工夫でそれを実現できる彼はほんとうにすごいと思う。


とにかく、この動画シリーズに心底感動して大好きになったじぶんは、ちょっとでも多くの人にこの動画を知ってほしくて、【キナリ杯】に紹介記事を投稿します。

もともとこの「キナリ杯」についてのツイートが自分のTLに流れてきたことが、わたしのnoteをはじめたきっかけ。
外出自粛で退屈してて、精神的にもしんどくなりかけてたし、英語で投稿しばりしてるSNSに代わって長文で、ありったけ思いの丈をぶつけたくて。

読んでくれた人にはわかるかもだけど、わたしは自分の文章を読んでもらうために書いてない。
これはほんとに問はずがたりの、じぶんに向けたひとりごと。
普段からじぶんの頭はこういう、半分だれかに話しかけるような、ただ同意の相づちをまって話しつづけるような、そんな思考であふれてる。

だから、賞金はほしいけど実際に応募するのはどうかなーって思ってたけど、お題投稿した方がいろんな人に見てもらえるだろうし。

それに、給付金の10万円を元手に他人をまきこんでクリエイティビティを奨励する試みに今回の朗読動画の精神に近いものを感じたし、
ほとんど偶然だけど、ちょうどいいかなーって。


おまけに、Taika Waititi監督がクリエイティビティについてTED講演した動画もみつけたので、興味のある方は見てみてください。
他人を傷つけないユーモアって難しいけど、それができる人になりたいなぁ。
https://youtu.be/pL71KhNmnls

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