Vol.33 佐野湧樹 「回り回って自分に返ってくる」
「大学生活をもっと充実させたい!」「やりたいことを見つけたい!」という想いを持ちながらも、なかなか行動に移せない北海道内の大学生に向けた連載企画「Knows」。
編集チームが独断と偏見で選んだ面白大学生の人生をお届けします。今回は第30回目。ゲストは室蘭工業大学修士課程1年目の佐野湧樹さんです。
↓が佐野さんのSNSです。
ずっと何かを頑張って来れたのに、あることがきっかけでプツンと折れてしまった経験、皆さんもありませんか?
同じように挫折を味わった佐野さん。しかし、再度挑戦し、突き進むことが出来たようです。彼はどのように考え、変わることができたのでしょうか。佐野さんの人生を一緒に振り返ってみましょう。
プロフィール
佐野湧樹(さのゆうき)
室蘭工業大学建築科修士課程1年。北海道池田町出身。大学1年生の時にクラウドファウンディングを行い、鳴り砂で有名な室蘭市のイタンキ浜でゴミ拾い活動を行う。クラウドファウンディングや環境活動に関した講演会なども行う。現在は個人経営の家庭教師として子供に勉強を教えている。
指導者に恵まれた幼少期
バスケットボールをプレイする小学生時代の頃
ーこんにちは!では早速、佐野さんの幼少期から振り返ってみようと思います。どのような少年時代を過ごされましたか。
「小学生の頃は、両親が色々なことをやらせてくれました。ピアノやバイオリン、バスケなどをしていましたね。また、人生で一番本を読んでいた時期でもありました。それから児童会長などにも立候補してリーダーを務めることも多かったです。」
ー忙しそうな小学生ですね。印象に残っている出来事はありますか。
「バスケで地区選抜の選手に選ばれたことですね。小学5年生と少し遅い時期に始めました。先に習い始めていた子達に負けたくなくて、自主練を頑張り、背が高いこともあって選抜選手に選ばれました。
そこのチームが面白くて…。指導者の方はミスをしても怒らないんです。怒るとしても消極的なプレーをした時くらいでした。とにかく褒めながらバスケの楽しさを教えてくれて。一番実力が発揮できる指導をしてくれました。
チームの仲も良かったのでとにかくチームでプレイできることが楽しくて…。自分達の格上のチームと対戦するときも負ける気がしなかったです!」
ーいい指導者の方に巡り会えたのですね。児童会長をされたとのことですが,昔からリーダー的立ち位置になることが多かったのですか?
「最初は自分から積極的にリーダーになるようにしていてだんだんと周りから声がかかるようになった感じですかね。人の上に人が立つということが不思議で…『リーダーとそうではない人が考えることって違うな』と思い、興味があってやっていました。」
ー面白い考え方をされますね。中学生の頃はどうでしたか?
「印象に残っている先生が2人います。1人目の先生は国語の先生です。中1の時に夏休みの宿題で書いた意見文がクラス代表に選ばれて校内発表することになりました。
その意見文を国語の先生が添削してくださったのですが、まず大量の修正を直す作業、そして自分の伝えたいことが何なのかを先生と1対1で対話する作業がありました。
大変だったのですが、1つ年上の上手い先輩に負けたくないという気持ちで、休日も先生に添削や練習をお願いしました。単なるテクニックだけではなくて、自分の言いたいことを伝える技術も教えてもらいました。
この時に文章を書く力や人に上手く自分の言いたいことを伝える方法を習得したように感じています。中1の時は学校代表になれなかったのですが、2年後に学校代表に選ばれ、地区でも2番になることができました!」
ー生徒のやりたいことにとことん向き合ってくれる先生に出会えたのですね。
「生徒の『やりたい』を引き出して、その後もとことん付き合ってくれる先生でした。(中1の際は学校代表には選ばれなかったため)直接ではないのですが、2年越しに成果を出して恩返しできたのではないかと思っています。
印象に残っている2人目の先生はバスケ部の顧問の先生です。僕は中2の時に先輩に反抗して部活に行かなかった時期がありました。そこで顧問の先生と面談をすることになりました。
厳しい先生だったので、怒られると思っていましたが、全く怒ることなく僕の話を静かに聞いてくれました。その時に印象に残ったのが『世の中、1+1=2じゃないこともある』という言葉です。
この言葉に妙に納得したので、部のみんなに頭を下げて部活に戻りました。先生が僕の話を最後まで聴いてくれたことが大きかったと思います。」
ー厳しいはずの先生が最後まで話を聞いてくれたということが印象に残ったのですかね。
「元々はとても厳しい方でした。しかし、この先生は教育研究所(先生が教育の方法を学ぶ場)で学ばれるようになったことがきっかけで、段々と指導法が変わり、怒るというよりも諭すことが多くなったんです。
ミスをしても『なぜそのようなプレーをしたのか、君ははどう考えているのか』などを聞かれるようになりました。『大人の人でもこんなにも変化するんだ』と子供ながらに衝撃を受けたので印象に残っています。」
ーいい先生方に巡り会われたのですね。
「真の教育者の方々だったなと思います。生徒に嫌われる好かれるは置いておいて、人としてどうあるべきかを教えるというか…。学校の先生というのは生徒の人格形成に関わる立場であると思いました。」
ー教育者はどうあるべきかを学ばれた中学時代だったのですね。高校時代はどうでしたか?
「中学生の頃から大学で建築を勉強したいという思いがあったので、高校では地域で1番の進学校に入学しました。中学生まで成績はいい方だったのですが、高校では各中学校のトップの人たちが集まってくるという環境でした。
その中で上位に行くにはとても長い道のりに感じてしまい、ついていくことを諦めてしまいました。そうして、気が付けば高3の秋になっていました。」
ー中学生まではスタートラインが他の人より後ろでも何としてでもついていこうとされたように感じましたが、高校ではそうならなかったのですね。
「そうですね。今思えば人生初の挫折だったのかもしれません。高3の後期から塾に通い始めて、猛勉強して、何とか第一志望校に入学することができました。」
自分を変えたいと思い始めた挑戦
クラウドファンディングを行い、イタンキ浜でゴミ拾いをした時の様子。
下段中央が本人。
ー大学時代はどのように取り組まれましたか。
「高校時代に何もできなかった反動で、大学では色々挑戦してみたいと思っていました。高校時代、ホリエモンが関わっていた大樹町のロケットビジネスをきっかけにクラウドファンディング(以下クラファン)について知りました。
クラファンは小さな企画から、大きな事業まで扱うことができ、また主催者も一般の人から実業家まで誰でも参加できるプラットフォームであるということが魅力的でした。これなら僕もできるんじゃないかと思いました。
クラファンを行うことは『大学での最初の挑戦として丁度いいのではないか』と思いました。大学に入学して、室蘭にやってきて、鳴り浜と呼ばれる砂浜が室蘭のイタンキ浜にあるということを知りました。
鳴り浜という貴重な砂浜が、近年ゴミの漂着によって存続が危ぶまれているという現状を知って、この砂浜とクラファンを掛け合わせられるのではないかと思い、プロジェクトを始めました。」
※佐野さんのクラウドファンディング
ー有言実行で行動に移されていますね。このプロジェクトによってどのようなことが得られましたか。
「『こんな僕にも協力してくれる人がこんなにもいるのか』と思いました。『まだ何の実績もない、何者なのかよく分からない若者に協力してくれる人がこんなにもいるのか』と。
お金の面だけではなく、新聞記事を書いて拡散してくれた人、そして僕の活動を知って大学の教授全員に向けて紹介してくれた副学長の方などもいました。
情報を拡散してくれた人、金銭的に支援してくれた人、ゴミ拾い当日に協力してくれたメンバー、サポートしてくれたクラファンの会社の方など金額以上に多くの方が関わってくれました。全ての協力者がとても大事な存在だと気がつきました。この経験が、大きなターニングポイントだったと思います!」
思いもよらない大役
登別市で行われた環境講演会の様子
ー大学最初の挑戦で、色々学ばれたと思いますが、これを次にどう繋げて行ったのですか。
「自分で繋いでいったわけではないのですが、色々とチャンスをいただきました。大学で学長や副学長、そして地域の方が集まり大学の在り方や大学と地域の関わり方を話し合う地域懇談会というものがあるのですが、そこで学生代表として話をさせていただきました。
また、数年後の大学のシンポジウムで100人ほどの方の前でお話をさせてもらったり、登別の環境講演会で講師としてお話をさせてもらったりしました。」
※登別の環境講演会
ー自分が思いもよらないところから沢山声がかかったのですね。思いもよらない大役に苦労したことはありませんでしたか。
「学生で環境について考えて、クラファンを行っていたのが珍しかったのかもしれないですね。このように、クラファンでの活動を入り口として僕のことを知ってくれて、声をかけてくれる方が多いです。
クラファンの方法について相談を受けることなどもあります。現在も、室蘭市内で活動しているNPO法人から相談を頂きクラファンをお手伝いしています。
空き家をリノベーションしてカフェを行うなど、もっと大規模なクラファンをやりたいなどと考えてはいるのですが、このご時世、人が集まるイベントが難しいのもあって、中々進めていけてない状況です。」
見つけた新たな道
佐野さんの家庭教師のパンフレット
ーイベントとなると難しいことも多いですよね。そのほか大学時代に取り組まれていたことはありますか。
「大学2年の秋から家庭教師の仕事を始めました。自信はなかったのですが、教えることに興味があり、面白そうだと思いました。最初は1人の生徒さんだったんですが、今は無料の受験・勉強相談を申し込まれる方も増えてきました。」
※佐野さんのnote
ー興味本位で始められたことだと思うのですが、段々ハマっていったんですね。
「大学の授業や課題が忙しく、『効率よくお金を稼ぎたい』という思いもありましたが、自分で考えて仕事をしてみたいという思いを叶えられたのもハマった理由だと思います。
自分で集客して、個人契約して、働くことに興味を持っていました。クラウドファンディングをしたときにこういう働き方が自分に合っているのではないかと思いました。規模は小さいのですが、自分の裁量で考えて回していくことはとても楽しいです。」
ー家庭教師のお仕事で気をつけていることなどありますか。
「子供に合わせる努力をすることですかね。自分の中でシステムにしたくないという気持ちがあるんです。システムを作ってそれに従ってやるのは楽です。
しかし、子供がそのシステムに合わせなければならなくなるので、逆に時間がかかることもあるんです。子供たち1人1人と向き合って、レパートリーを持ちながら最適解を組み合わせたいと考えています。」
ーこれまで色々なことに挑戦されてきたかと思うのですが、佐野さんが何かを始める際に、行動の基準となる考え方などはあるのですか?
「面白そうと思ったら、意識的に片足を突っ込むようにしていました。段々それが習慣になっていきました。最初はあまり深く考えずに行動に移すようにしています。
というのも、高校時代に、ただ考えていただけで行動に移さずだらけてしまい、何も生み出せなかった過去があるので…。まずは行動してから、自分が本当に興味があることなのかどうか見極めることにしています。
行動してみて違うと思ったらすぐに撤退することも大事にしています。
そのために、暇さえあればネットなどから情報を集め、常に興味のアンテナを立てておくことで広く浅く関心が持てるようにしています。」
ー違うと思ったらすぐに引くという姿勢も大事ですよね。
今後の展望とメッセージ
ー佐野さんの今後の展望を教えてください。
「家庭教師として3〜4年やってきて、この事業の規模を大きくしていくことに一番興味があります。ある程度ノウハウがたまっていることもありますし、ビジネス的に拡大して、仲間集めをして、その人たちを教えるという立場に回って、規模を拡大していきたいです。
そうすれば、僕が考えている『こうしたら勉強ができるよ』ということをより多くの子供たちに伝えられるのではないかと思っています。目的はより多くの子供たちに勉強を教えること、そのためにすべきことが規模を拡大していくこと、その手段としてnoteで情報発信しています。
文章を書くのが好きなことに加え、中学時代の意見文から鍛えているスキルも役に立っています。僕の記事を読んで成績をあげられる人には僕は必要ないと思っていますし、それで十分だと思っています。
第一に読者にとって役立つコンテンツや教え方をnoteで提供することをモットーにやっています。というのも、お客さんの利益になることをやっていたら、自分に返ってくると思っているからです。」
ーなぜそのように考えられるようになったのですか?
「クラウドファウンディングなどで思ってもいなかったところから声がかかったり、これまでの経験で感じてきたからですね。noteもいいものであったら広めてくださったり、子供達が楽しく勉強できることがご家庭のメリットにもなったり。
そうやって自分の信用や信頼を構築することで、最終的に自分に返ってくる仕組みづくりができるのではないかと考えています。長期的なビジョンを持っているというよりも、目の前のことに向き合ってWin-winな関係を築くことを心がけています。
就活して、どこかの会社で働きながら空き路を身につけるという進路も考えてはいますが、個人経営で家庭教師としての規模を拡大していくことの方が先が読めない分、自分でこれからどうにもしていけるという面白さを感じ、ワクワクする進路だと思っています。
また、これまでの経験から、全くの無謀なことではなく、それなりの手応え、可能性を感じている部分も大きいと思います。」
ーでは最後に、想いはあるけど動きだせない大学生に対してのメッセージをください。
「僕とお茶しましょう。
というのも、一般論が思い浮かばないからです。家庭教師をしていて、悩む、つまずくポイントは人によって全然違うと感じます。ある程度パターン化はできると思いますが、そこに対する本人の自覚症状が全然違うと思っています。
側から見れば大したことではないことに心理的に壁を感じてしまっていることも多いです。一般的に言おうと思えば言えるのかもしれませんが、読者の皆様をナンパするという形で締めくくらせていただきます(笑)。
TwitterでもInstagramでも気軽にDM送っていただければと思います。」
https://mobile.twitter.com/dra1793
以上でインタビューは終了です。
「回り回って自分に返ってくる」よく聞く言葉ですが、佐野さんは実体験を持ってそれを痛感され、実践されているように感じます。
高校時代の挫折があったからこそ、それをバネに新たなことにたくさん挑戦され、主体的に自分の人生を生きている姿、かっこいいです!
佐野さんの人生を書いたこの文章から何かのきっかけを得てもらえたら嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました!
取材・文:中橋
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