屋上にて

私の目の前はいつまでも暗いままだ。


だからこんなところにいるのだろう。
何もできなかった自分を終わらせるために。

「もう諦めてよ、人生はとても長い、だから,,,」
「諦めないよ、人生はとても長いからね。」

私は「死なないで」って言葉は嫌いだ。死ぬ事だって一つの選択肢じゃないか。なのに何も知らない人間がそんな言葉を簡単に吐く。

彼は私を熟知してるのだろう。だから私は彼に問いかけた。

「君は多様性はあってしかるべきだと思ってる?私は思わない。
結局人は周りと同じがいい、だから自分達と違えばよってたかって、簡単に傷つける。
そしてまた口先だけの多様性を説いてくるんだよ。」
少しの間をあけて、彼は私の問いに答える。

「多様性があるなんて幻想かも知れない、だけど必要だよ。そうじゃなきゃ発展は望めない。いつだって世界を変えてきた人はコロンブスみたいな変人ばかりだ。だから多様性は認められていくべきだよ。」

やっぱりそうだ、彼はいつも往々にして正しい。偽りの言葉を吐かない。

「じゃあ、結局コロンブスは人に差別され、軽蔑され、それでも生きていった。そしてその考えを証明できる実績を残した。そんな事できるのは一部だけだよ。でもゴッホみたいに認められなくて狂っていった人だっているよ。」
私は勢いよく彼につかかったが、
彼は何も答えなかった。その顔は眉間を潰し、眼光を炯々とさせ、口はなにか言いたげだった。

「結局、人は皆弱いんだよ。だからすぐに差別して、自分を守る。
そして簡単に自分に見切りをつける。」
私は彼に語りかけた。

しかし彼はおもむろに顔を上げて
はっきりとした口調でいった

「知ってる?杉原千畝は別に政府に逆らっていた訳じゃない。東条英機はユダヤ人を受け入れる体制を整えていた。でもGHQによってその事実はねじ曲げられたんだ。差別していた人達から差別されたんだ。それでも東条英機は最後まで誇りを持って死んだ。僕もそうありたい。」
私は何も答えられなかった。

次の瞬間、彼は目の前から消えた。まるで今までの光景が幻だったかのように。

彼は往々にして正しい。だからこそ生きずらかったのだろう。
誰にでも優しく、正義の人だった。
だからこそ悪に見られるのだろう、現実にヒーローが存在しないように。
人は弱い、そして自分だけが正しいと信じてる。

私の目の前は暗いままだ

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