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くっしゅ くしぇ

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お題をもとになんか書くマガジン 毎月第2、4週目の木曜日と金曜日の境目に更新。 参加者募集中。お気軽にご参加を♪
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2021年9月の記事一覧

胎児の炎[こ:固形燃料]

ッシュボ…… シュボッシュボ…… そこここで炎が上がる 「よっし!こんなもんだろ」 ケイスケは満足気に言った 「ホントにやるの?」 怯えた顔のミツオはメガネを押す指すら震えていた 「当たり前だろ?これをやらずに夏を終えれるかよ。去年は海水浴行った先でやる予定だったのに、色々あってできなかったからな」 中学生の僕らは夏休みの最終週、百物語をすることで現実から目を背ける最後のあがきに入っていた。 夏とはいえ夜の墓場は少し冷える。 そんななか固形燃料の温もりを頼

複線のゴールは紙鍋に #くっしゅ #10 固形燃料

ジジっ 微かな音を立てて、火は呆れるくらい簡単に灯された。 ほー。 今のそいつにゃぁ芯とか入ってねぇんだな 昔は入ってた気がするんだけどなぁ、ほら、蝋燭みたいな なのにつくんだなぁ。すっげえなぁ わたしに巣食う ”インナー・おっさん” がなんかほざいてるけど気にしてなんかやらない。だって、わたしは今から紙鍋するんだから、紙鍋。 ちゃんと用意したんだから、ゴトクみたいなやつも、肝心の鍋も。 具材はもうセッティングしてあるし あとはもう煮え立つのを待つだけなんだから。 あり

#10 こ:固形燃料

「おれ、今から原始人になるわ。」 そう言って友だちは消えていった。 果たして彼はなぜこんなことを言い残していったのか僕には分からない。 彼とはもう数十年にわたる仲である。彼はなぜそんなことを言い残していったのか、僕には本当にわからない。本当に、わからない。 くそっ……なんでだ!何で数十年も一緒にいるのにわからないことが出てくるんだよ。ありえねぇだろ。……悔しい。僕にわからないことがあるだと……⁈ 許せん、許せん、許せん……!僕はその友だちが何を考えているのかわかるために、

くっしゅ くしぇ 〈こ:固形燃料〉

   忘れられないことなんてそうそうあるものじゃない。大抵の事柄なんて何年もすれば風化して全部忘れてしまう。でも一つだけ、この感情だけが何故か心の奥底で、燃えることを待っている。    パチパチと弾ける焚き火を見つめる。火の向こうにいる貴方が揺らめいている。こんな日が来るなんて.......。不思議な気持ちに覆われて空を仰ぐ。満月が、傾いている。深い夜。    古い感情というものは溶けるものだ。少し柔らかくなった蝋のよう。そういうロウソクが明かりを灯すには少しの時間が必要だ。

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くっしゅ くしぇ 〈け:ゲームセンター〉

化学的な香料がまだ鼻の奥にこびりついている    そこは放課後に行くところ。友達と行くところ。私には縁がない。友達がいないから。  でもその日は違った。普段なら真っ直ぐに帰るのに、その日は何故か私はゲームセンターにいた。  隣ではクラスでちょっと浮いてるギャルの子が笑っている。なんで私なの?  ゲーム機の音がガヤガヤと響いて、耳が痛い。なんで笑っているの?  クレーンゲームの景品を押し付けられた。くれるの?  彼女は首を縦に振る。私に?  彼女は首を縦に振る。なんで?  彼女

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彼に、残されたもの #9「ゲームセンター」

ヒュン か細い音がして、灯が灯ると、眼前に広がるのは、大きなスクリーン そして、「よくある懐かしアニメの管制室」みたいな操作板 ここしばらく俺が入り浸っている、この部屋。 ほのかにかおる、鉄錆の匂い。 掃除担当者が多忙を極めているのは今に始まった事ではないのだけれど。 「映画さながらの大スクリーン」でゲームをプレイできる!との触れ込みのこの部屋だが、それよりもやっぱりこれ。部屋の中心あたりに立って、足元にあるスイッチを爪先でタップすると、床下から装備が乗せられたワゴンが

くっしゅ・くしぇ 再開いたします。

最近他の名前で動いている方が多いりこさんです。 いかがお過ごしでしょうか。 この度、以前やっていた「くっしゅくしぇ」という共同マガジンを再開することになりましたー! 投稿は向こうのアカウントでするつもりですけど、宣伝というか告知はこちらでしていきたいと思ってます。 毎回の締め切りまでに、一つの単語についてジャンルは問わず何らかの作品をnoteにあげていこうという企画で、お題は「ランダム単語ガチャ」さんで誰かが引くことになっています。 今回(締め切りは毎月2−4週木金の

[ゲームセンター]雨の日のタイムマシン

高校三年の夏、 近づく台風のお陰で学校は午後から休校になった。 空は雲ひとつなくて、学校の慌ただしさが嘘みたいだ。 でも、高校に入ってから伸ばし始めた長い髪がわずかにパサついて雨がもうすぐ来ることを密かに教えていた。 帰りに紗矢がゲームセンターに誘ってきた。どうせ家は近いし台風が来るまでには帰れるだろう。折角休校なのになにもしないなんてもったいない。私は喜んでOKした。 私たちはいつものプリクラコーナーに向かった。プリクラ機の手前に初めて見る筐体が置いてある。それは