見出し画像

『懐かしさ』は発展の源泉である

「『懐かしさ』は発展の源泉である」
 
「懐かしい」という単語には、現代人に対して、自然に、「懐かしいもの」から想像させられた個人的世界に、自分を自分で、回帰させたいと思わせる力が、備わっているのではないだろうか。田植えをしたこともない子供達に、田植えの作業をさせたという企画が、和歌山県にある雑誌社による「連」という情報誌に、掲載されていた事があり、その子供達が田植えの作業を終えての感想を求められた際「何かなつかしい感じがした」と言ったという。田植えを知らない子供達がその内に居た事については、周知の通りである。知識から、そう感じた子供も居たかも知れないが、「懐かしさ」には、人に、「世界」を生み出させる力が備わっているようにも考えられる。「回帰」という言葉を思えば、文字通り、「回り、帰る」と成り、一度経験した事柄に、再度、別の処から帰って来る、という意味合いに考えることも出来、その上で言えば、過去にした経験を、再経験する、という意味合いに取ることが出来なければ矛盾することになる。その子供達は、田植えをしたことにより、過去の経験に帰ったのではなく、自ら作り上げた想像に、敢えて、帰った、とする事が出来るのではないだろうか。「経験」という言葉の意味は、所謂、実際に見たり聞いたり試みたりすること、としてあるが、ここで述べる「経験」の意味は、想像の内での経験、所謂、疑似経験、の類として述べている。「経験が、人を成長させる」という文句を、いつかどこかで、私は聞いたことがある。「成長する」という事は、その人がこれまでに得た事柄や出来事を、自ら自分の糧とする為に、自力、他力、的に解釈して覚え、それ等から得る、知識、知恵、等を、自分の為に用いて、今後に活かしてゆこうとする、前進的で自然な人の所作である、と私は考える。このような「回帰」、「経験」、「成長」、という経過について考慮した上で言えば、「未来への成長、発展、の展望を秘める、懐かしさ」という創作的な意味を「懐かしさ」という言葉の意味に持たせる事が出来るのではないか、と成る訳である。従って、「懐かしさ」という言葉に対する人の感情とは、もしかすると、創作的な、未来への、何らかの発展を図ることが出来る力を生む可能性を秘めている、とも考えられ、日本が発展を望む国であれば、それ等は日本の未来への何らかの発展の礎の一つになるもの、と言えるように思うのである。懐古主義者を対象にしたメディアが、現代に於いても大手を振っている事実がある。過去に、先人達の思惑の内から生れた産物が、現代になって、現代人、詰まり、後世の人により、掘り起こされて、相応の価値を付けられたり、脚色されたり、或は、加工品のように改良され、又それにより価値を見直されたり、又、純粋に、昔に生れたそのものを原材として、愉しむ人も居る等、様々である。過去に生れた人の思想、産物は、未来に於いても在り続けており、相応の影響を人々に与えると同時に、その産物により、発展する世界や財産を、後世の人々が得る事も可能であるということである。現在、東京の某市場で流行している「コミケ」と呼ばれるコミックマーケットなる大規模即売会が存在し、大衆芸術、コスプレ、ペット、ガーデニング、に至るまで、纏わる同人愛好家により、日本に於けるサブカルチャーが一堂に集まり、交流をも深められる機会を企画するに至っている。彼等が対象とする物が過去に於いて作られていた故に企画出来たものであり、これは正に、「人の歴史から生れた産物」が生んだ、一大企業とも言えよう。この即売会に社長が居るとするならば、その社長にとっては、過去の「人の産物」を利用してひと儲けする事になり、自己発展に繋げている、という、一つの成功をみることにもなろう。この社長を、株式支店主のように複数に分けた上で、その企業を図れば、もはや、個人のみの発展ではなく、複数人にとっての発展となり、その発展は、その後に於いて膨らむ可能性さえ秘める。ここで注目する点は、扱う商品(需要者のニーズを満たすもの)は、全て過去の物である、という事である。人が作った物は、作った瞬間から過去の物となるが、それにしても、人気商品と成るものは、相応の魅力が必要である、という事が言える様子であり、人気がない物は、その「魅力」がない為にか、忘れ去られる傾向を持つ様子である。過去に作られた産物の内に於いて、更に、私が注目したいのは、「懐かしさ」を纏った商品である。ウルトラマン、ゲゲゲの鬼太郎、ルパン三世、等、TV番組で言えばきりがないが、これ等について、私は懐かしさを覚え、又、好むのだ。これ等は、現代に於いても世間から注目されている為、より懐かしさを覚えるに足る内容を持つものであろう。個人の歴史に於いて「古い」と感じられるものは、懐かしい感覚を与えるものであり、その懐かしさは、複数人に分け与えられて、時間の進行により変容させられるものとなる。懐かしさが生れる基点とは、より若年世代へと移ってゆき、又、懐かしむ当人であるその「若者(後世の人々)」により、現代の「コミケ」のような一大企業さえも生れるのである。「懐かしさ」には、人を引き付ける魅力があるのと同時に、オマージュを生む力をも備えた、未来発展を担う力が存在するのではないだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?