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自分の生活を鉄壁に守ろうとした男の末路

タイトル:(仮)自分の生活を鉄壁に守ろうとした男の末路

1行要約:
自分だけの牙城を築き上げた男の悲惨

▼登場人物
●牙城 守(がじょうまもる):男性。40歳。神経質。普通のサラリーマン。ギャンブラーの傾向があるが一切ギャンブルを断ち切りたいと願う。ずっと心に平安が欲しい為、自分だけの空間を望む。
●牙城里子(がじょうさとこ):女性。35歳。守の妻。家庭志向の真面目な性格だったが、或る日からマージャンを覚えてしまう。
●牙城保奈美(がじょうほなみ):女児。0歳。守と里子の子供。生後半年。
●守の友達:男女を含む会社の同僚かつギャンブラー仲間。本編では「友達A」「友達B」「女友達」等と記載。
●節 聖子(せつせいこ):女性。30代。守の「自分だけの空間を守りたい」「ギャンブラーをやめたい」等の欲望から生まれた生霊。徹底的に守の空間を守り、欲望を叶えてしまう。
●マスター:男性。40代くらい。バー「静袈裟」のマスター。登場しなくてもOKです。
●主婦仲間:里子の麻雀仲間。イメージ的な感じでOKです。セリフなし。

▼場所設定
●牙城の自宅:一般的なマンションのイメージで。
●賭田商社(かけたしょうしゃ):守や同僚が働いている。一般的な商社のイメージで。
●バー「静袈裟(しずけさ)」:落ち着いたバーのイメージで。聖子の行き付け。

NAは牙城 守でよろしくお願いいたします。

オープニング~
 
エクソちゃん:ねぇデビルくん、デビルくんってギャンブルとかするほう?
デビルくん:ギャンブルかぁ~。まぁ人間がするような一般的な賭けはしねぇな。俺がするギャンブルは人間の命のやり取りさ。スリル満点だぜ♪
エクソちゃん:ふぅん。この前ポーカーやって大負けしてたの見たんだけど。
デビルくん:あ…あれは遊びだバカ!
エクソちゃん:まぁいいや♪今回のお話はね、ギャンブルをどうしてもやめるって決めた或る男性にまつわるホラー譚なんだ。
エクソちゃん:でも周りのお友達とかがそれまで通りに誘って来て、なかなかやめられないの。で、或る不思議な人と出会ってその男性はやめる事が出来るんだけど、次々身の周りで奇妙な事が起き始めるのよ。
エクソちゃん:結局、最後は幸せか不幸かよく分からない状態になっちゃうんだ。もしギャンブルをやめたいなんて同じような状況にある人がいたら、ちょっと参考程度に見るのも面白いかもね。
(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)

メインシナリオ~
(メインシナリオのみ=4348字)

NA)
俺の名前は牙城 守(40歳)。
俺は根っからのギャンブラー。
これまでギャンブルで数々の失敗をして来た。

ト書き〈朝、自宅マンション〉

NA)
俺には妻子がいる。子供は産まれたばかり。
俺はもうギャンブルをやめ、安定した自分の将来を守る事を誓った。

里子)「あなた、はいコーヒー」

守)「有難う」

保奈美)「えーんえーん」

里子)「あらあらどうしたのかしら?オムツかなぁ~」

守)「(出社前の家族の光景。…なんて平和なんだ。俺は絶対ギャンブルをやめるぞ…!そして妻とこの子の為に安定した将来を築き上げるんだ)」

ト書き〈会社〉

NA)
しかし、やはり俺は根っからのギャンブラー。
ちょっと同僚なんかに誘われると心がふらつく。
その度に心を引き締める。
まだギャンブル症は完治してないようだ。
この日、俺は課長に昇進した。
その嬉しさで、つい気が緩んでしまったのだ。

友達A)「やぁ牙城!昇進おめでとう!」

友達B)「出世だな!どうだい今日?出世祝いにちょっとやってかねぇか?」

女友達)「牙城さんおめでとう!ねぇお祝いしましょうよ」

守)「やぁ皆、有難う!…でも俺、もう賭け事はやめるって誓ったんだよ」

友達A)「イイじゃねぇかよ今日くらい」

友達B)「そうだよ!これから忙しくなるんだからさ、息抜きくらいしなきゃ」

女友達)「そうよそうよォ」

守)「いや…はは…」

NA)
結局、俺は夜遅くまで麻雀をした。
俺達の麻雀は金を賭ける。
この時点で、俺はまだこれまでの負けを返済しきれていなかった。
総額15万円。

ト書き〈会社近くの雀荘からの帰り〉

友達A)「やっぱ課長になったって牙城は牙城だな♪お前、弱いんだよなぁ」

牙城)「はぁ…」

NA)
俺はギャンブル好きな癖にかなり弱い。
いつも皆にイイようにたかられ、結局は大損。

ト書き〈友達と別れる〉

友達)「じゃな~」

牙城)「ふぅ…。どーして俺はいつもこうなんだ!俺のバカ野郎!」

ト書き〈足元の小石を蹴り飛ばし、それが聖子に当たる〉

NA)
足元に落ちていた小石を、思いきり蹴飛ばした。
すると石は勢い良く飛び、前方を歩いていた女性の頭にぶつかった。

聖子)「キャッ!」

守)「あ!すいません!大丈夫ですか!?」

ト書き〈少し流血〉

聖子)「痛ツツ~」

守)「血が出てますね、すぐ病院へ行きましょう!」

聖子)「いえ大丈夫です。この先に私の行き付けがありますから、そこで…」

NA)
俺はその女性を介抱しながら歩いて行った。

ト書き〈バー「静袈裟」〉

守)「え…。こ、ここですか行き付けって…?」

NA)
なんとそこはバー。
女性は店に入り、そこのマスターに軽い応急手当をして貰った。

聖子)「ふぅ。ここまで送って頂いて、本当に有難うございました」

守)「い、いえとんでもない!私が悪いんですから」

聖子)「でも何だか荒れていましたね?何かあったんですか?」

守)「え…」

NA)
俺は罪の意識もあり、石を蹴った理由も含め、自分の身の上を全て話した。
ギャンブルをやめられずに悩んでいる事も。

守)「本当にお恥ずかしい限りです。妻子があるのに、僕はこうやってギャンブル狂で帰りも遅く、妻には迷惑ばかり掛けているんです」

聖子)「そうだったんですか」

守)「本当にもうギャンブルなんてやめたいんです!でも未だにやめられない!悪友が誘って来るともうダメなんですよ。心が揺らぐんです!」

守)「あ…あんな悪友さえいなければ…」

聖子)「…なるほど。もし宜しければ私がお力になりましょうか?」

守)「…え?」

聖子)「実は私、こう言う者です」

NA)
女性は名刺を差し出した。

守)「『メンタルキングダム~安心空間のメンタルコーチ~』…節 聖子…?」

聖子)「私はあなたのように悩みを抱えつつ、どうしても自分の安心空間を取り戻したいとしてらっしゃる方のメンタルコーチをしております」

聖子)「コーチと言っても大したものじゃありません。どんな方でも自分1人のスペースを心に備えて貰い、これからの生活を存分に謳歌して行けるよう、スタートラインをご提供するお仕事ですわ」

守)「へぇ~そうなんですかぁ。いやぁ僕もお願いしたいですよ。こんな状態からでも新しいスタートラインがもし切れるんなら」

聖子)「大丈夫です。ではあなたの空間を取り戻して差し上げましょうか?」

守)「え?」

聖子)「あなたは今、自分をギャンブルに誘うお友達がいるからついギャンブルに手を出してしまう。そんな悪循環にあるようですね。ですから、そのお友達がもう2度とあなたを誘わないよう、全てのお誘いを私がシャットアウトして差し上げましょう」

守)「そ、そんな事できるんですか?」

聖子)「ええ。お任せ下さい」

守)「ぜ、ぜひ宜しくお願いします!」

聖子)「でも、お1つだけ条件があります。このコーチは1度始めればもう途中下車する事は出来ません。あなたが心から求める安心空間を、今後ずっと守り通す事になります。その為にはお友達や、大切な人でも除外してしまう可能性があります。それでも宜しいですか?」

守)「…はい。こんなギャンブル狂を心に住まわせて生活していても、きっと僕には破滅しか無いでしょう。途中下車なんか必要ありません!僕1人の理想の空間を徹底して守って頂けるんなら、それでお願いします!」

聖子)「わかりました」

NA)
聖子は何とも不思議な感覚の持ち主だった。
心の奥底に眠る俺の悩みを全て引き出した。
そして「彼女に任せれば本当に解決する」そんなオーラすら漂わせて来る。

ト書き〈翌朝:友達が次々に不審死〉

守)「じゃあ行って来るよ」

里子)「いってらっしゃい」

NA)
家を出てすぐ電話が掛かって来た。

守)「ええ!何ですって?!」

NA)
電話は会社から。
同僚の1人が今朝、事故死したと言うのだ。

守)「な…何で…」

NA)
俺は泡食った。
しかしこの日から、同僚が次々不審な死を遂げていった。

ト書き〈数日間の不審死の内容〉
友達B:通勤中に鉄柱が落下して来て死亡。
友達C:駅のホームで後ろから押され、電車に撥ねられ死亡。
友達D:動物園で檻から逃げたライオンに襲われ死亡。
女友達:自室で服薬自殺。動機は不明。
友達E:会社の屋上で一服中に転落死。何者かに押された形跡あり。
友達F:風邪薬と劇薬を誤飲して死亡。

守)「どうして皆、死んで行くんだ…」

NA)
死んだ友達は皆、昔からのギャンブル仲間だった。

守)「はっ…も、もしかして…」

NA)
俺はこの時、聖子の言葉を思い出した。
「友達が2度と俺を誘えないようにする」。

ト書き〈バーで聖子に詰め寄る〉

守)「僕の同僚が次々謎の死を遂げてるんです…!聖子さん、あなたもしかして、何か関係してませんか?あなたは僕に『友達が2度と誘わないようにする』と約束した。あれってもしかして、こういう事だったんですか?!」

聖子)「まぁ落ち着いて。私はあなたの理想を叶えて差し上げた迄です。あなたは私に『あんな悪友なんかいなくなればいい』とはっきりおっしゃいました。そうすれば自分の理想的な生活空間を取り戻せると」

聖子)「これであなたは2度と友達から誘われる事はありません。あなたはそのお陰で自分の生活リズムを崩す事無く、理想的な空間を手に入れたのです」

守)「で、でも!何も殺さなくったって!…やっぱりあんたがそうしてたんですね…。あんたみたいな人と関わってたら、僕まで疑われますよ!」

NA)
そう言って俺は店を出た。
そしてすぐ帰宅。

ト書き〈自宅で里子が主婦仲間と麻雀している〉

守)「ただいま!帰ったぞー!」

NA)
いつもなら出迎える里子が出て来なかった。
しかも奥からジャラジャラと、聞き覚えのある音がする。
保奈美が泣き続ける声も聞こえる…

守)「な…お前…!」

里子)「あそれリーチ!あ、あなたお帰りなさーい」

守)「お前、どうして…!」

里子)「だぁって、アンタ今までいっつも帰り遅かったでしょお?ずーっと会社のお友達と麻雀ばかりして!あたしちゃんと知ってたんだからね」

里子)「初めはずっと我慢してアンタに腹立ててた事もあったけど、でも案外やってみると面白いモンねぇ麻雀って♪あ、それポン!」

保奈美)「えーんえーん!」

里子)「んでさぁ、ご近所の奥さんが麻雀知っててやり方教えて貰っちゃってね。そんで今日からちょっと本格的にやってみようかなぁーなんて思って♪アンタも今までずっと遊んで来たんだから、アタシだってちょっとくらい破目外したってイイでしょォ」

守)「そんな…。お、おい!さっきから保奈美がずっと泣いてるじゃないか!」

里子)「今イイ所なんだから!あんたちょっと見といてよ!それロ~ン!」

ト書き〈里子も主婦仲間もその場で死ぬ〉

NA)
確かに俺が楽しんで来たその遊びを、里子が代わりにやっている状況。
里子はこれまでずっと我慢して来た。
だからちょっとくらい破目を外したいと言う里子の気持ち。
それは分かる。
でもこの時、里子が主婦仲間ときゃあきゃあ言いながら子供そっちのけで遊ぶ光景を見て、俺は心の中で「こいつ等いなくなればいいのに…」と思った。
そう思った直後…

守)「え…?ど、どうした…」

里子・主婦仲間)「ぐ…!ぐぅう!く…苦しいィぃいぃ!」

NA)
俺の目の前でいきなり里子と主婦仲間は苦しみ始め、その場に倒れた。
皆、目を見開いて息をしてない。

守)「う…うわぁあぁ!ま…まさか…!」

保奈美)「びえーん!びえーん!」

NA)
これまでに死んだ同僚の時と一緒…俺は直感でそう思った。

守)「こ、こんな…」

NA)
このとき俺の心の中には「家庭が崩壊した」「このままじゃ俺が疑われる」という2つの思いが沸き上がった。
そしてこの状況をクリアする為の秘策を練っていた時。
俺は思わず保奈美の泣き声すらうるさく感じた。

ト書き〈途端に保奈美が泣き止む〉

NA)
その瞬間、保奈美が急に泣き止んだ。

守)「…ほ、保奈美…?」

NA)
俺はすぐ保奈美に駆け寄った。

守)「うわぁぁ!保奈美ィ!」

NA)
保奈美も目を見開いたまま死んでいる。

守)「まさか…俺が心で邪魔に思ったヤツは皆死んでしまうのか…」

守)「はは…幾ら俺が1人の空間を欲しがったからって…ひど過ぎる…」

ト書き〈自宅リビングでダンボール箱にずっと入っている守〉

NA)
俺の精神は狂ったようだ。
俺は今ダンボールの中で、安心にむしゃぶりつくように眠ってる。
この静寂を永遠の住処とするように…

ト書き〈マンションを外から眺める聖子〉

聖子)「私は守の理想と欲望から生まれた生霊。守が心の奥底でずっと唱えた願いを叶えてあげた。悪の道へ誘う者が誰もいない空間…自分の生活を乱す外部刺激を一切排除した空間…でも結局、それは自己中心的な空間だった」

聖子)「守は今、確かに独りの空間を得たけれど、現実でいつまでその状態を維持できるのかしら。自分独りの理想と夢が叶う生活を得ると言うのは、場合によっちゃ、現実が許さない事もあるようね…」

エンディング~
 
エクソちゃん:うーん、なかなか難しいテーマだったかも。安心できる空間・理想的な空間と言っても、それが自分1人だけのものなら、現実的には大きな犠牲を払う事にもなるみたい。
デビルくん:誰だって「ずっと安心できる空間」を期待してるもんだ。でもその空間が果して、共存する世界で受け入れられるかどうか…ってのがテーマでもあったな。
エクソちゃん:そうねぇ。でも初めは単に「ギャンブルやめたい」って思いから始まって、それは自分の家族を守る為の決意だったのよね。
デビルくん:夫婦でもそれぞれの価値観を持った人間だし、例え自分がギャンブルやめても片方が始めちまう場合は普通にあるってんだよな。
デビルくん:で、聖子ってのは守の「理想的な空間を得たい」って欲望から生まれた存在だったのか?
エクソちゃん:そんな感じだったね。まるで守の夢や理想を極端に延長して行けばどうなるか…ってのを再現したような存在だったよね。
エクソちゃん:普段何気なく心に思う理想でも、それが自己中心的なものであるかどうか、少し立ち止まって確認する必要もあるみたいだね…
(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)

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