【観戦後の雑感】2024 ルヴァン杯 2回戦 岡山×横浜FC

皆さん、こんにちは。

4月24日に行われたルヴァンカップ2回戦は、死闘となりました。
お互いに力を尽くした好ゲームだったと思います。
ただ、あらためて試合を観直して、その展開と結果を振り返ると、「ファジアーノ岡山は、横浜FCに追いつき追い越せていない」という事実が凝縮していた試合だったと思います。
うにがしらは、リアルタイムで視聴していた試合後の四方田監督がインタビューで「ご褒美をいただけたのかなと思います」というコメントを聞いたとき、血液が沸騰する感覚を覚えました。
四方田監督のコメントは、別に間違っていないと思います。それは素直に両チームが力を尽くした結果のゆえの素直な気持ちだったでしょう。ただ、うにがしらは、「じゃあ、なんでファジは、そのご褒美をもらえなかったんだよ!」と思いました。まるで子供ですが。
だからこの結果は、「ご褒美」なんかではなく、あえて「力の差」と定義したいと思います。
あまりにも悔しい敗戦となった試合を振り返ります。


寸評

ファジアーノは、リザーブメンバーにGK2名とU18の選手3名、先発にU18の選手1名というスクランブルの体制で臨む。双方のメンバー構成から考えれば苦戦が予想されるところだったが、岡山は、その予想を覆し、横浜と攻守が激しく入れ替わる試合を展開した。
横浜は、最終ラインからの、岡山は、No.44仙波を中心にNo.7竹内、No.10田中がリンクする形でゴール前にボールを運んでいく。その中で、前半15分に岡山が先制する。仙波の右サイドのキープからのグラウンダーのパスに竹内がワンタッチでゴール前に田中がピンポイントで合わせる、流れるようなプレーだった。その後は、横浜がボールを保持しつつ反撃の機会をうかがうが、岡山は冷静に凌いでいく。しかし、迎えた前半42分に横浜はNo.9櫻川が抜け出しかけてボールをキープ。そこから後方へのパスを送り、これにNo.34小倉が右足を一閃。目の覚めるようなミドルシュートをネットに突き刺し、同点とする。
後半は、岡山が攻める形からスタートするも、後半5分ごろから横浜がボールを保持して押し込む形が増える。迎えた後半10分に横浜のNo.6和田のグラウンダーのミドルが、ゴール前にこぼれ、これに櫻川が素早く反応し、横浜は逆転に成功する。しかし岡山もすぐに反撃し、後半15分に同点に追いつく。失点直後に交代でピッチに入ったNo.27木村が、No.4阿部のスルーパスに反応して相手ディフェンスラインを突破してゴールした。そこからは、双方、決定機を作りつつも、ゴールを割ることができずにタイムアップ。勢いは、やや岡山にあるか?という状態で、試合は延長戦へ突入する。

延長前半3分、セカンドボールを拾ってショートカウンターの形になった岡山は、田中とNo.19岩渕のコンビネーションでゴールに向かう。田中が岩渕に送ったパスは、相手DFに引っかかるが、その跳ね返りが再び田中の前へ。田中は、そのボールを落ち着いて左足でゴールに流し込み、岡山が一歩リードすることに成功した。
しかし、ここから横浜は慌てずに試合を進める。
先にリードを奪い、延長戦に入った疲労や選手交代の影響もあってか、ボールへの圧力が弱まった岡山に対し、横浜は試合開始から継続して行ってきた最終ラインの選手が中盤に入る形に加え、右WBにポジションを移したNo.3中村が、様々な場所に顔を出しボール保持を増やし、ゴール前の場面を着実に作っていく。迎えた延長後半2分、ゴール前の混戦の一瞬の空白をNo.10カプリー二が仕留めて同点に追いついた。その後は、岡山がフィードするのが精一杯に対し、横浜はボール保持を継続し、横浜が優位に試合を進めた。しかし岡山も集中力高く守り、ゴールを割らせることなくタイムアップ。
試合はPK戦となり、岡山はNo.6輪笠が失敗。横浜FCは全員が成功し、岡山は敗退することとなった。

※毎回「印象に残った選手」は、各チーム3名というルールで書いているのですが、今回は、印象に残った選手が非常に多かったので、その制限を外して書きます。

岡山で印象に残った選手

No.7 竹内 涼
ようやく2024のキャプテンがピッチに立つ。うにがしらは、竹内選手のプレーを観たことがなかったのですが、やはり清水で長年キャプテンを務めていた選手だけあって、その技術は確かでした。先制点の田中選手へのアシストは、判断力の速さやひらめきを持っていることを感じさせますし、横浜FCの圧力が強い中でもボールを上手く逃がしている様子をみて、今後の中盤の組み合わせが楽しみになりました。今回は、仙波選手とのコンビでしたが、No.24藤田選手やNo.14田部井選手、輪笠選手とのコンビがどんな形になるのか楽しみです。

No.4 阿部 海大
後半に、木村選手の同点弾をアシスト。この試合だけでなく、縦パス(スルーパス)やボールの持ち上がりが目に見えて増えていますし、カバーリングも正確で、この試合でも岡山のストロングポイントになっていました。特に縦パスについては、前線の選手との呼吸があってくれば、今後、得点のチャンスに直結すると思うので、このまま出場し続けてほしいです。木村選手の同点弾は、その希望を想起させるものだったと思います。

No.10 田中 雄大
この日2得点の活躍。先制点のワンタッチでのシュートと延長前半の利き足とは逆の正確なコースのシュートは素晴らしかった。ただ、それもこの試合では、ポジション取りが良かったからでしょう。この試合では、竹内選手、仙波選手からのパスを、相手の中間ポジションで受けれていたと思いますし、そこから相手が寄せてくるところを感じて、上手くターンするプレーが目立っていました。今後のリーグ戦でも、チームのストロングポイントになってくれるでしょう。

No.44 仙波 大志
先発して最後まで走り切る中で、終始、ファジのパスワークの中心に。狭い場所でも、持ち前のターンでボールをキープしており、先制点の場面では、その技術で、右サイドでうまく相手を出し抜く場面を作っていました。現状のファジでは、余裕をもったスペースの中でボールを持つことが難しい展開になりがち。この試合、横浜FCから3点獲れたのは、この人の働きがあってこそでした。

No.65 三木 ヴィトル
この試合の最大の発見でしょう。何より目を見張ったのは、そのフィジカルの強さ。横浜のNo.20村田選手とのマッチアップで、「村田選手が転んでいる中、三木選手はしっかり立っている」という場面はその象徴だったと思います。正直、ファウルかな?と思わなくもない場面はありましたが、それでも、双方がぶつかって一方が倒れている中で、平然と立っている姿というのは、トップチームの選手でもそうそうないと思います。昨年のユースの試合を観てフィジカルが強いとは思っていましたが、予想以上でした。
この試合で、No.55の藤井選手との10代コンビが、フィジカルで全く負けず、横浜の右サイドを自由にさせなかったのは、この試合の非常に大きい要素でした。
No.66南選手もそうですが、トップチームの試合で上手く入れていないところがあり、三木選手にとっては、攻撃面が、その要素だったと思います。ただ、そこが何とかなれば、トップチームについていけるのではないかと。うにがしらは、今後の展開によっては、リーグ戦の出場もあり得ると思いました。

横浜FCで印象に残った選手

※横浜FCについては、この試合、結果的に最終ラインの3名に優位性を作られてしまったと思います。3人とも試合開始から、延長後半終了までプレー。その中で、パスワークの要素として重要な役割を担っていました。

No.22 岩武 克弥
リーグ戦の第8節の記事でも取り上げましたが、うにがしら的には、この試合を観直して、今回も取り上げざるを得ないと思いました。
3CBの真ん中として、最終ラインを統率。後述のNo.3中村 拓海、No.46佐藤 颯真の動き(積極的な上がり)が、この試合の横浜FCのポイントだったと思いますが、左右のスペースが空いたところを的確にカバーして、穴をふさいでいました。その上で、ルカオ選手とのマッチアップと、延長後半のアシストと大きな働きをされてしまいました。

No.3 中村 拓海
リーグ戦の第8節の試合から、「プレーが荒い(雑)選手かな?」という印象を持っていたのですが、この試合で「プレーが攻撃的な選手」と認識をあらためました。
右CBで先発し、高い位置でいわゆる「ロール」の動きをたびたび見せつつ、後半34分にンドカ選手がピッチに入ると右WBとしてプレー。通常のCBより運動量が多い中で、途中から運動量が求められるところにポジションを移して、延長戦後半終了まで走り切るスタミナには脱帽。また、この試合ではそれだけではなく、縦パスや延長前半10分ごろに見せた中央から左サイドに流れての疑似ボランチ的な動きや、延長後半開始直後の岩渕選手のカウンターへの対応も見せており、素晴らしかったです。
高い技術を持つポリバレントな選手であり、この試合では、その特徴がいかんなく発揮されていたのだと思います。

No.46 佐藤 颯真
2023年3月のデンチャレでプレーを観て、とても印象に残っていた選手です。スピードがある左利きの長身DFであり、ドリブルも縦パスも上手いという印象があったのですが、その特徴をこの試合でも発揮。
後半、木村選手にぶち抜かれる場面こそありましたが、CBながらドリブルでボールを高い位置まで運んだり、中盤を追い越す動きを見せたりで、ファジの陣地にくさびを打ち込むプレーを、試合開始から終了までやりきりました。
前述の中村選手と佐藤選手の動きは、横浜FCの中盤を厚くし、パスワークの効果を強化するものだったと思います。

No.34 小倉 陽太
前半42分に、鮮烈なミドルシュートを決める。このプレーの印象が強いですが、それだけではなく、横浜FCのビルドアップの中心になっていたと思います。最終ラインからボールを引き出し、周りの選手に上手くボールを運ぶとともに、フィジカルを活かし、セカンドボールをキープできていました。ここまでリーグ戦の出場がないようですが、チームへのアピールができた試合になったのではないでしょうか。

終わりに ー横浜FCとの差。そこには、様々な意味がある。ー

PKが終わり、四方田監督のインタビューを聞きながら、様々な思いが沸き上がっていました。あらためて試合を観直して、うにがしら的には、「横浜FCとの差」を、次の2点で感じています。
①歴史と経験
②プレーの質の差

まず①については、やはりPKの場面で感じました。ファジアーノ岡山として、杯戦でのPK決着は、この試合がおそらく初めての経験だったのではないでしょうか。対して横浜FCが、このシチュエーションを過去に経験していたかどうかは、正確にはわからないのですが、PKにもつれこんだ時、横浜の方が余裕が少しあったように感じます。多分に、結果論をで見ているところはあるでしょうが、それもでJ1を経験し、レギュレーションが異なるとは言えルヴァン杯の経験があるチームと初めてのチームという差が出たように感じたのです。この結末には、「ファジアーノは、まだ経験しないといけないものがある」と言われたような気分になっています。
次に②については、スタッツとしてCKの数に表れたように思います。「印象に残った選手」で、いつもよりも多くの選手を取り上げたように、この試合は、出場選手は、力を出していたと思います。取り上げなかった選手でも、No.5柳選手、No.16河野選手らも良かったと思いますし、納得度が高かい試合だったと思います。しかしシュート数は、そこまで変わらないのに、CKの数は圧倒的に横浜側が多かった。この点は、試合を観直すと、ゴール前の危険度が、横浜の方が強く、岡山の方が弱かったということではないかと思いました。これも結果論ではありますが、岡山のシュートシーンなどで、横浜は、サイドラインやゴールライン側ではなく、ファジの陣地方面へ跳ね返すことができていました。ここは、今回の岡山と横浜の差だったように思います。

このように考えていくと、本当に気持ちが昏くなりますが、一方でここ数年のことを考えると、冷静にポジティブな面をとらえるべきという気持ちもあります。

うにがしらは、2018年からファジの試合を全試合観るようになり、2019年は、現地の応援にも行くようにもなりました。
そして2019年6月29日。第20節アウェイ横浜戦をニッパツで観たのです。2019の有馬ファジは、仲間隼斗、イ ヨンジェ、上田康太、喜山康平らのタレントが噛み合う面白いチームで、このシーズンは「J1を目指せるかも…」という期待がサポータにも高まったと思います。
しかし、この試合は5ー1で敗戦。当時の横浜は、レアンドロ ドミンゲス、イバ、カルフィン ヨアピンら外国選手をはじめ、中山、草野といった若手、北爪、武田、伊野波らの中堅・ベテランが先発。うにがしらは、この試合で出場選手の質の差を強く感じました。
また2019年の第41節のホーム戦でも0-1で敗戦。ファジは41節、42節で連勝できていれば、プレーオフに出場できる立ち位置にいました。
そして2022シーズン。
8月20日第32節アウェイで、岡山は、横浜に1-0で敗戦。当時3位の岡山は、この試合に勝てれば首位横浜を2位に引きずり下ろし、かつ残り10試合で勝ち点9差に詰めることができた試合でした。
また、大学サッカーを観ている身としては、横浜FCは、関東・関西1部にユース卒団生を送り帰還者を迎えることができている育成力があるチームです。また、「この大学のこの人いいな」と思う選手を獲得するチームでもあります。

つまり、うにがしらにとっては、横浜FCは、先行者であり、なおかつ岡山の勝負所を叩き折ってきた相手なのです。

しかし。
その差があった相手に対して、今回は2種登録の選手を含めた総力戦で、ぎりぎりまで追い詰めました。2019シーズンの時から考えれば、資本力が上の相手に対して、育成力も含めたチーム力で尻尾をとらえるところまで来た。それが客観的な評価だとも思うのです。

今回も、「J1相手の対戦経験を持っていかれた」ことで、「善戦はしたが、実利は持っていかれる」形になりました。2024シーズン中に、今度こそ岡山が実利を持っていく形にできるか。第36節は、その答え合わせになるかもしれません。この試合、横浜を突き放すことができるポイントは、試合中に存在していました。シーズン中に、このポイントについて精度を上げることができるか。これからも粘り強く戦っていく必要があるでしょう。

…と横浜FCへの粘着質な想いを書いている間に、清水戦の日になってしまいました。ルヴァン杯で得たものが、リーグ戦につながることを期待して、本日の試合を観戦したいと思います。

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