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【単語ガチャ③】りんご×くつした

私の小さい頃のお気に入りといえば、くるぶしに果物や動物のアップリケがくっついた白い靴下だった。

母が新しい白い靴下を買ってきた日は「アップリケの日」で、日々集めたアップリケコレクションの中から選ぶちょっとした儀式があった。

この日は、「虫食いりんご」のアップリケが選ばれた。少し前に好き嫌いなくご飯を食べたご褒美に母が買ってくれた、特にお気に入りのものだった。

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次の日、私はつけたてほやほやの「虫食いりんご」靴下を履いて学校へ行った。上機嫌でハナちゃんやみのりちゃんに「虫食いりんご」靴下を見せて回った。「いいないいな」とハナちゃん、「わたしもお母さんに頼んでみようっと」とみのりちゃん。私は嬉しくてクラスのみんなや担任の先生にも自慢して回った。

その日、私は上機嫌で家に帰った、のだが。
家に帰った途端に大泣きすることになった。左足のアップリケが無くなっていたのだ。
母が一緒に小学校から通ってきた道を探してくれたけれど、「虫食いりんご」のアップリケはどこにも落ちていなかった。

母はまた新しいアップリケを付けてくれると言ったけれど、私はどうしても悲しくて一晩中めそめそと泣いて、枕に大きなシミを作った。

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次の日、アップリケを探しながらとぼとぼ学校へ行き席に着いた。授業中、キョロキョロと辺りの床を見回していると、「虫食いりんご」のアップリケが目に飛び込んできた。
でも、アップリケは落ちていたんじゃなくて、斜め前の席に座っているハナちゃんの靴下にくっつけられていた。私はそれから、ハナちゃんの靴下をみながら、ずっとドキドキしていた。

授業が終わり、私は意を決して立ち上がるとハナちゃんに話しかけた。

「...ハナちゃん!その、靴下の、アップリケって...。」

するとハナちゃんは少し焦ったように立ち上がった。

「い、いいでしょ!これ!わたしのお母さんがやってくれたの!」

そう言って少し私をちらっと見ると、急に背を向けて教室の外へ走っていった。
気圧された私は何も言えなかった。でも、「虫食いりんご」のアップリケがくっついていたのはハナちゃんの右の靴下だけだった。

その日は、何だかハナちゃんや他のみんなともと上手く話せなくて、またとぼとぼとうちへ帰った。

家に帰っても落ち着かなくて、そわそわしていると母が心配そうに「どうしたの?」と聞いてくれた。その途端、涙が止まらなくなり、私は涙でつっかえながら今日のことを全部母に話した。

母は驚いた顔をしたあと、私の頭を撫で、ちょっと待ってねと言って隣の部屋に消えていった。しばらくすると、母が何かを手に持ち部屋から出てきた。

「ハナちゃん、もうすぐ誕生日じゃなかった?」

私がうんと頷くと、手に持っていた物を私の膝の上に優しく乗せた。

それは、可愛いリボンでラッピングされた「虫食いりんご」靴下だった。

「ハナちゃんはあなたの可愛いアップリケがとっても羨ましかったのね。でも、お友達のものを自分のものって言うのは違うよね。」

母の言葉と頭に乗せられた手の温度にまたじんわり涙がでて来た。

「ハナちゃんのこと大好きでしょ?」

うんと頷くと、母はにっこり笑って優しく抱きしめてくれた。

「明日学校に言ったら、ハナちゃんに思ってることしっかり言って、お誕生日お祝いしてあげてね。」

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次の日、学校に行くとハナちゃんは先に来て席に座っていた。

後ろからハナちゃん、と声をかけるとハナちゃんの肩がピクリと震えた。こっちを見ようとしないハナちゃんにもう一度声をかけようと口を開いたところで、突然ハナちゃんが立ち上がってこちらを向いた。

「ご、ごめんね…。これ、返す。」

そう言ってアップリケの乗った右手を私に差し出したハナちゃんはぎゅっと目をつぶり、今にも泣き出しそうだった。

私はハナちゃんの手のひらからアップリケを受け取ると、代わりに「虫食いりんご」靴下を乗せた。

ハナちゃんは目を開けて、靴下を見るとびっくりしたように私の顔を見た。

「これでおそろい。」

私が微笑んでそう言うと、ハナちゃんの目から大粒の涙が次から次へと溢れ出した。

周りのみんなはびっくりしていたけど、ハナちゃん今度誕生日なんだよと言うとみんなもお祝いに集まって来た。

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次の日、母にくっつけてもらった「虫食いりんご」靴下を履いていくと、ハナちゃんが私も履いてきたの!と嬉しそうに駆け寄ってきた。
おそろいだね!と言って右足と左足をくっつけていると、みのりちゃんが駆け寄ってきた。
私もおそろい!そう言って、みのりちゃんはズボンの裾をめくった。
みのりちゃんもお母さんに「虫食いりんご」靴下を作ってもらったらしい。
私たちは嬉しくなってきゃあきゃあ笑った。

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