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ショートショート作品まとめ

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【ショートショート】や【掌編小説】など短めの作品をまとめています。
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#ショートショート

【掌編小説】透明な時計

母が透明な時計を買ってきた。 確かにカチカチという音がするが、まるで見えない。 どうして透明な時計にしたの? などとは聞くよしもない。母は透明な家具を集めるのが趣味で、家中が透明なのだから。 透明な壁に透明な画鋲を刺した母が、透明な時計を持ち上げて壁にかけた。ことり、と音がしてどうやら壁に上手くかかったらしい。 夕日に照らされた時計は確かにそこにあるように見える。カチカチと軽快な秒針の音が我が家に加わった。 まぁ、今が何時かは分からないんだけどね。

文末タイトル①

うん、いい塩梅の寝床だ。 体温より少し緩くて、うたた寝するにはぴったりの四角い寝床。 むにゃむにゃと目を擦っていると、上から覗くものがいる。見上げると、大きいのが困った顔で見つめてきた。 はて、何用だろうか。先程、存分に背中は撫でさせたが。 黙っていると、何やらにゃあにゃあ言ってきたが、この大きいのは何を言っているのかさっぱり分からない。 それよりもさっきから、寝床がブルブルしている。 うん、震える寝床っていうのもなかなか心地がいい。 ━━━━━━━━━━━━━━

文末タイトル②

おっ、あかりが点いた。 俺はソワソワして、こっそり辺りを見渡した。やっぱりみんなもソワソワしている。 でも、こういう時は緊張で赤くなったり、青くなったりしては行けない。 真白く、つるんと、気高くツンと。 昨日は隣のヤツが選ばれたから、今日はきっと俺に違いない。 ___ついにその時がきた。 頭の上の透明な屋根がパッカリとあき、じっと見つめられる。なんだか、黄身まで見透かされるような気分だ。 あまりの緊張にあやうく白身を飲みかけたところで、頭を掴まれた。初めて感じる