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JBAラムリム講座第2回要約

この記事は(一社)日本仏教徒協会がチベット仏教普及協会《ポタラ・カレッジ》のクンチョク・シタル先生をお招きして開催している「チベット仏教『ラムリム』講座」の内容をダイジェストでまとめたものです。
 ラムリム講座は途中からでもこちらよりお申し込み頂けます。過去分はアーカイブで視聴可能です。

|聴聞の方法|

今回から、
(1)聴聞の方法
(2)説法の方法
(3)聴聞・説法の後に両者が共に行うべきこと

についての内容が扱われます。

今回は(1)聴聞の方法の途中まで読みました。

聴聞とは、書物を読むことを含めた、(仏法を)”勉強すること”全般を指します。

クンチョク先生もおっしゃっていたように、これは仏教のことに関わらず学習・教育全般に関して当てはまりうることかもしれません。


聴聞の方法については、以下の3つの観点から語られます。

1. 法を聴聞する利得の思惟
2. 法の説法者への敬意を起こすこと
3. 実際の聴聞の方法


|1. 法を聴聞する利得の思惟|

法を聴聞する利得について、2つの印象的な引用がなされています。
まずは『ウダーナ・ヴァルガ』からの引用です。

「聴聞によって諸法を知る。聴聞によって罪から離れる。聴聞によって不利益を捨てる。聴聞によって涅槃を得る」


これらの4句はそれぞれ、
・聴聞によって段階的に”取捨”のための基礎(知識)を知ること
・悪行から離れる戒律(三学の戒)
・不利益を返上して善の対象に心が欲するままに住する禅定(三学の定)
・無我の真如を理解する智慧による解脱(三学の慧)

に対応しています。


次に『ジャータカ・マーラー』からの引用で、こちらはより詩的です。

「聴聞によって心は信となり、よく歓喜して堅固となる。智慧が生じて愚癡は滅する。自身の肉〔を対価として〕でも、それを買うのが道理である。聴聞は愚癡の闇を払う灯明である。盗賊などに奪われない最上の宝である。愚妹という敵を征する武器である。巧みな方便の秘訣を示すがゆえに最上の友である。貧しくなろうとも変わらぬ友である。無害であり、悲しみという病の薬である。大過失という軍勢を征する最上の軍勢である。最上なる名声・吉祥・宝物でもある。善人たちに会ったときには〔彼らへの〕最上の贈り物である。集会の中で賢者の喜ぶものとなる」
「聴聞に従う修行を真髄とする者は、生の城塞(輪廻)から容易に抜け出すこととなる」


このように説かれている聴聞の利得の数々を繰り返し思惟することが聴聞の方法として重要なのです。


|2. 法の説法者への敬意を起こすこと|


この点については、『地蔵経』に以下のように記されています。

「一心に信じ敬うことによって聴聞するのであるから、それを非難し中傷すべきではない。説法者を供養すべきなのは、その者を仏陀と等しいとの想念を起こすべき〔だから〕である」


また『菩薩地』にも、同様の内容が記されています。

「慢心と、法と説法者への軽視を離れて、その二つ(法と説法者)を尊敬するべきである」


『ジャーダカ』にはより具体的にそのことが表現されています。

「〔聴聞者は〕とても低い座に座る。調御の吉祥(戒律を離れないこと)をよく生ずる。喜びに満ちた目で〔説法者を〕見る。言葉という甘露を飲みながら、尊敬を生じて一心に礼拝する。非常に純粋で無垢なる心で、病人が医者の言葉を聞くように、敬意を生じて聞法すべし」


|3. 実際の聴聞の方法|

実際の聴聞の方法には、
「器の三つの過失(欠点)の排除」、「六つの想念への依拠」の2つが挙げられています。

「器の三つの過失」とは、

1. 説法の場所に座っていても耳をよく傾けず(伏せた器)
2. 傾けたとしても誤った理解をしたり不純な動機に執着したり(汚れた器)3. それらの過失がなくても聞くときに受け取る言葉と意味を堅固に〔記憶〕せず忘れるなどして失ってしまう(穴の開いた器)

という3点の聴く者の過失を指します。

これらの過失がある場合、聴聞は意義あるものとはならないのです。


これら3つへの対処法として経典に「よく集中し、聞き、心に受持せよ」との3点が説かれ、また、『菩薩地』にも「すべてを知りたいと欲することと、一心に集中すること、耳を傾けること、意を注ぐこと、心のすべてで思惟して聴聞すること」と説かれています。



今回はここまでです。
次回は「六つの想念への依拠」から読み進めます。


文章:上村 源耀

源耀プロフィール

寳幢寺出家弟子。京都大学総合人学部で哲学を専攻、在学中はITスタートアップ界隈、学童クラブ、映画美学校など放浪を重ね、「いかに生きるか」をもがきながら問い続ける中で龍源師および仏教に出会う。寳幢寺と関わり仏教に浸る中で出家を決意する。

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