見出し画像

持続可能な循環型社会を目指す、自治体や教育機関・企業との共創~リサイクルの町・大崎町の取り組みレポ!~

「紙おむつの水平リサイクル」の実現を目指す、RefF(リーフ)プロジェクトの活動をお届けする、こちらのnoteシリーズ。さまざまなトピックスをお伝えしていく中で、あらためて感じているのが「共創」です。

各自治体をはじめ、紙おむつのごみを分別してくださる各ご家庭、紙おむつの回収や運搬業者の方々、水平リサイクル技術に協力いただいた研究機関や企業・団体のみなさんなどなど…(書ききれません!)。
私たち、RefFプロジェクトの活動も、さまざまな方との「共創」があってこそ。

そこで!今回は、RefFプロジェクトにも協力いただいている、鹿児島県大崎町の取り組みに注目。自治体や教育機関、企業、団体が連携し、リサイクルを通じて循環型社会の実現を目指す、大崎町の事例をご紹介します。

あわせて、2022年12月にRefFプロジェクトの一環である「紙おむつ専用回収袋の実証実験」が大崎町でスタートしたこともご紹介しますね!

大崎町はこれまでに「リサイクル率日本一」を14回も達成した、リサイクル意識の高い地域。ごみを出さずに資源を有効活用していく「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」を目指しています。資料提供 一般社団法人大崎町SDGs推進協議会

株式会社ECOMMIT代表・川野さんに聞く!「ごみを減らし、価値を生む。自治体と連携したリユースシステムで資源を循環させる」

今回、大崎町での民間企業の「共創」の例として紹介するのが、2022年に大崎町と「サーキュラー・エコノミー推進に関する連携協定」を締結した、株式会社ECOMMIT(エコミット)です。エコミットは「地球にコミットする循環商社」として、リサイクル・リユース事業、全国7か所の循環センターの運営、資源を再流通させるシステム構築などを手がけています。

エコミット代表の川野さんは「現代社会には、ものが不要になってから資源に戻るまでの仕組みが圧倒的に足りていません。ごみを捨てるのではなく、資源として循環させるためのインフラが必要です」と語ります。

株式会社ECOMMIT代表取締役CEO川野輝之さん。2007年鹿児島県薩摩川内市で創業。「捨てない社会をかなえる」をスローガンに、大手企業とのプロジェクトをはじめ、30以上の自治体と取引を行い、サーキュラー・エコノミーを推進しています。

大崎町とエコミットが接点を持ったのは5年程前。当時から、大崎町は鹿児島県ではリサイクルを推進している自治体として知られていたそうです。
また、さまざまな取り組みを進めるにあたり「大崎町役場の方、住民の方も含めて環境意識が非常に高い」ことに驚かれたと言います。その熱量は、他の自治体ではなかなか見られない程だとか…!
 
大崎町との協定には「1、町の資源リサイクル施設に搬入されるものからまだ使えるもの(リユース品)を再利用につなげること」「2、環境教育の拠点作り実現に向けた協力」「3、空き家や移住定住等、町づくりの課題解決に向けた取り組み」などの項目があります。

主な取り組みであるリユース業務では、定期的に大崎町のリサイクルセンターから不要品を回収。まだ使えるものはリユース品として、再び市場に出て販売されます(リユースできないものは、リサイクルもされるそうです)。

リユース市の様子。写真提供 一般社団法人大崎町SDGs推進協議会

それから、不要になった家具や日用品などを回収し、ごみの減量化を目指す「リユース市」も開催されています。22年12月に開催された回収イベントでは、リユース可能なものの量は1,600㎏、リユース品の回収率は80%にもなったとか!今後も、定期的な開催が予定されています。

とはいえ、大崎町だけでは解決できない課題もあります。

「地域の外で作られたものは、最終的に原材料に戻して、作り手であるメーカーにお渡ししていかない限り、その地域にごみとして残ってしまいます。地域循環の先には、国内、さらには国外まで見据えた、より大きな視野での循環が必要になります」と川野さん。
 
サーキュラーエコノミーを実現するためには、地域循環だけでなく、ものを作っているメーカーとしての責任があることを感じました。

宮崎大学・土屋准教授がフィールドワーク実施中!「ごみ分別が生活者の購買行動を変える?サーキュラーヴィレッジ・大崎町がもつ可能性」

サーキューラーエコノミーを勧める大崎町では、その先進的な地域性をいかして、近隣大学によるフィールドワークも行われています。

国立大学法人宮崎大学 地域資源創成学部の土屋有准教授。「社会が抱える課題を、マーケティングを通じてどのように解決していくのか。どのような体験が人々の行動を変容していくのか」を研究されています。写真は22年11月に開催された「第二回 OSAKINIプロジェクト 活動報告会」の様子。写真提供 一般社団法人大崎町SDGs推進協議会

「大崎町は、20年以上に渡り、ごみの分別と徹底したリサイクルに取り組む、サーキューラーエコノミーを先取りしている町。住民のみなさんに根づいているごみの分別の意識が、商品を選ぶ際の購買行動に影響を与えている可能性があります。今後、企業目線で“サスティナブルな商品のニーズを作る”ためのリサーチを行う際に、大崎町はテストフィールドとして非常に魅力的だと考えています」と土屋先生。

一般社団法人大崎町SDGs推進協議会と宮崎大学が連携。マーケティングの専門家である土屋有准教授の研究室では「大崎町住民の購買行動調査研究プロジェクト」を実施。大崎町のスーパーマーケットや小売店で「大崎町の住民のみなさまは商品を購入するときに、ごみの分別や量を意識しているのか?」「商品の包装をどう考えるか」といったアンケート調査やインタビューを実施し、購買行動に関する分析を行っています。

「第二回 OSAKINIプロジェクト 活動報告会」における登壇発表。写真提供 一般社団法人大崎町SDGs推進協議会

調査の一例としては「大崎町では、ペットボトル製品においては他に単価が安い商品があるにも関わらず、ラベルレスの商品の売れ行きがよかった」「若い人はペットボトルの購入を躊躇する」といった傾向が見られたそうです。

たしかに、私自身も大崎町を訪れた際に、食べ終わったお弁当の分別を経験し、リサイクルセンターでごみ分別の現場を目にしてから(「ごみリサイクル最前線~鹿児島県・志布志市と大崎町の取り組み~」)、お店での過剰包装を断ったり、ラベルレスの商品を選んだりするようになりました。

土屋先生のフィールドワークは現在進行中。今後、他地域でも実施され、大崎町との比較検討が行われるそうです。
どんな結果が出るのか、楽しみですね!

ユニ・チャームが語る「使用済み紙おむつの再生プラスチックから生まれた“紙おむつ専用回収袋”の実証実験」

最後にご紹介するのは、私たち、RefFプロジェクトの取り組みです!
22年12月から、大崎町で使用済み紙おむつ由来の再生プラスチックを配合した「紙おむつ専用回収袋」の実証実験がスタートしました。

大崎町役場、衛生自治会と住民のみなさん、合成樹脂加工総合メーカーのタキロンシーアイ株式会社に協力いただいたこちらの実証実験について、ユニ・チャーム・Recycle事業推進室の和田さんと織田さんにお話を聞きました!

Recycle事業推進室の和田さん(左)と、同じくRecycle事業推進室・渉外担当の織田さん(右)。織田さんは過去記事「紙おむつの回収とリサイクル~鹿児島県・志布志市と大崎町、ユニ・チャームの取り組み~」にも登場しています。

ー使用済みの紙おむつの再生プラスチックから生まれた、「紙おむつ専用回収袋」とはどんなものなのでしょうか?

織田さん「使用済みの紙おむつからパルプを取り出す際に、より分けられた再生プラスチックから作られたのが“紙おむつ専用回収袋”です

※紙おむつイメージ図

使用済みの紙おむつから“パルプ”を取り出して、紙おむつを作る、水平リサイクルの取り組みは、これまでにもご紹介してきました。今回は、紙おむつの不織布とフィルムに使われている「プラスチック」をリサイクルするプロジェクトです。

「紙おむつ専用回収袋」には、大崎町の紙おむつ分別回収のモデル地域で「使用済みの紙おむつを回収する際の、異物混入を軽減する」ねらいもあったそうです(異物が混ざると、リサイクルの機械を傷めてしまうこともあるのだとか)。

ーどのような流れで、使用済みの紙おむつからプラスチックを取り出して「紙おむつ専用回収袋」を作るのでしょうか?

和田さん「回収された使用済み紙おむつは、パルプ、プラスチック、SAPの各素材に分けられます。この中のプラスチックを活用して、タキロンシーアイ株式会社が紙おむつ専用回収袋を作成しています」

タキロンシーアイ株式会社は、カーボンニュートラルの削減に積極的に取り組むなど、サステナビリティに力を入れています。そうした環境意識をもつ会社さんとのタッグにより、紙おむつ専用回収袋が作られたんですね。

※プラスチックのリサイクルのイメージ図

回収された紙おむつ専用回収袋は、袋ごと洗浄されて、リサイクルされています。紙おむつ専用回収袋もリサイクルの輪の中で循環しているんですね!

ー大崎町、また、住民のみなさんから構成される衛生自治会の方々はどのような役割をされていたのでしょうか?

織田さん「大崎町が衛生自治会のリーダー(理事)地区に依頼して、実証実験のモデル地域での導入地域を決定しました。また、衛生自治会の方々が中心となり、どうやって住民のみなさんに“紙おむつ専用回収袋”を使っていただくかの仕組みや回収袋のサイズなどを検討していったんです」

「紙おむつ専用回収袋」には、分別回収時に異物となるものが例として記載されています。お隣の志布志市で配布されている「紙おむつ専用のごみ回収袋」も参考に作成されたのだとか。

和田さん「“紙おむつ専用回収袋”は、衛生自治会を通じて実証実験地域の各ご家庭に配布されます。住民のみなさんは、その回収袋に使用済みの紙おむつを入れて、紙おむつ専用のごみ回収BOXに搬出します」

当初は、紙おむつの回収に関しての問い合わせが大崎町役場にあり、分別の品目が増えることに不安をもつ住民の方もいたそうです。ですが、衛生自治会会長さんが住民の方にプロジェクトの丁寧な説明を行い、住民のみなさんとの連携が強くなることで、分別への理解が深まり、プロジェクト全体が盛り上がっていったのだとか!

大崎町役場、衛生自治会を中心とする地域住民のみなさん、そしてタキロンシーアイ、ユニ・チャームと、それぞれがアイディアを出し合い、検討を重ねて実現したという本プロジェクト。まさに「共創」を表すような取り組みですね。

あとがき

大崎町における「共創」の事例を紹介した今回。循環型社会を実現するためには、自治体だけではなく、あらゆる立場の企業や団体が、さまざまな方法で手を取り合っていくことの大切さを考えさせられました。
・・・
ちなみに。「紙おむつ専用回収袋」の実証実験では、実験前は異物混入があった地域も、1か月後には大きく改善されていたそうです!

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!