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ごみリサイクル最前線~鹿児島県・志布志市と大崎町の取り組み~

私たち、RefFプロジェクトがめざす、“紙おむつの水平リサイクル”という目標の実現は「使用済み紙おむつの分別・回収ができる自治体とのパートナーシップ」があってこそ。
 
そこで今回は、全国でも有数のごみ分別を実施し、RefFプロジェクトの紙おむつの回収・テスト回収にもご協力いただいている、鹿児島県・志布志市と大崎町からの出張レポートをお届けします!

今回、ご紹介するのは★印の自治体と施設です。

未来に「負の遺産」を残さないために、ごみリサイクルへと舵を切る決断。循環型社会の最先端といえる、志布志市と大崎町の取り組みとは?

住民のみなさんの協力あってこそ!朝の資源ごみ分別回収の現場「岡別府自治会公民館」

朝、6時頃には住民のみなさんが次々と、車でごみ出しにいらっしゃいます。突然の取材&撮影にも関わらず、こころよく受け入れてくださいました!

最初に見せていただいたのは、鹿児島県大崎町、岡別府自治会公民館のごみ収集の様子です。大崎町は人口約12,000人6,600世帯の町で、155の衛生自治会がごみ収集の現場を管理されています。

ごみ出しの日は、衛生自治会の担当者がごみ出し立ち合い分別の様子をチェック。びんや缶、古紙・古布などのエリアにごみを出していきます。分別できていないものは、理由付きのシールが貼られて残されるそうです。

岡別府の衛生自治会は60世帯ほど。衛生自治会のみなさん、ご近所のみなさん同士も顔見知りです。「おはようございます」のご挨拶からはじまり、世間話をしながら、終始、なごやかな様子でごみ出しをされていました。

今でこそ日本国内でも有数の「27品目のごみ分別」を実施している大崎町。実は、以前は全てのごみを埋め立て処分していました。

ですが、「このまま埋め立て処分を行っていると、10年以内に埋め立てる場所がなくなってしまう」という問題に直面。新たに「ごみ焼却施設の建設」も検討されましたが、その導入には数十億円という費用が必要でした。また、焼却施設の維持費にもコストがかかります。
 
大崎町は「町の未来を担う子どもたちに、莫大な借金を残してしまう」という理由から、焼却施設の導入ではなく、「ごみをリサイクルする、そのために住民の方に分別に協力いただく」方向に舵を切ることを決めました。

とはいえ、分別をスタートした最初の3年間は、苦労の連続。
まずは「ごみの分別の必要性について理解していただく」ところからはじまりました。そのために、町の担当者が、住民向けの説明会を400回以上も実施したのだとか!

今ではごみ分別の意識も高まり、住民のみなさんから回収についての提案を受けることもあるとか!

大崎町ではごみ分別について一覧表を作成。現在はごみの出し方を説明するアプリも作成し、さまざまな年代の方にごみの出し方をわかりやすく伝える工夫をされています。衛生自治会のみなさん、住民のみなさんが協力されることで、27品目の分別が可能になりました!

また、資源ごみの売却益の一部を活用した奨学金制度「⼤崎町リサイクル未来創⽣奨学⾦」(※)も創設されています。ごみのリサイクルから生まれた資金が、町や住民のみなさんにも還元されているんですね。

生ごみを“たい肥化”して新たな商品へ。「大崎有機工場」

工場では、生ごみと細かくした草木を混ぜ合わせて発酵させていきます。たい肥が完成するまでには半年以上もかかるそうです!

続いて訪れたのは、同じく大崎町にある「大崎有機工場」。
こちらの工場は、大崎町内で出た生ごみと、剪定で出てきた草木を一緒に細かくして混ぜ、たい肥化させる施設です。

各集落のごみステーションには、生ごみの回収用に、青いバケツ状のごみ箱が設置されています。

週3回回収の実施により、生ごみがお家で腐る前に回収できるので、状態の良いたい肥を作ることができます。

そして!
こちらのたい肥工場では、生ごみをたい肥化した商品を販売しています。
志布志市で処理された生ごみから製造されたのが『おかえり循ちゃん』。大崎町の生ごみから作られたのが『おかえり環ちゃん』です。

左が志布志市の『おかえり循ちゃん』。右が大崎町で処理された生ごみを商品化した『おかえり環ちゃん』です。お店で売っている一般的な商品に比べ、お手頃価格。写真のように袋詰めされた商品もありますが、住民のみなさんは、中身だけ購入して農作業に使うことも多いそう。

このたい肥を使用して作られた食用の商品もあります。
こちらの大崎町内の畑で、「おかえり環ちゃん」を肥料に栽培された菜の花から作られたのが、なたね油の『ヤッタネ!菜ッタネ!』です。

循環型社会をめざす「菜の花エコプロジェクト」の一環として誕生した『ヤッタネ!菜ッタネ!』。学校給食にも使用されています。

ごみの分別からはじまった取り組みが、めぐりめぐって、私たちが口にする食品にまでなっていることに驚きました。

地域循環型社会をめざす「そおリサイクルセンター」

次に訪れたのは、志布志市や大崎町をはじめ、近隣自治体のごみの回収や運搬、さまざまな処理を行う「そおリサイクルセンター」です。先ほどご紹介した「大崎有機工場」も、そおリサイクルセンターの関連施設。有機工場とも連携し、地域循環型社会をめざして、資源ごみのリサイクルを行っています。

RefFプロジェクトの実証実験の施設も、そおリサイクルセンターの中にあります!

アルミ缶やスチール缶をはじめ、空き瓶、プラスチック、ペットボトル、発泡スチロールなど。そおリサイクルセンターに集められた多種多様な資源ごみは、必要に応じて、さらに細かく選別されます。

各地域から回収された資源ごみがエリアごとに集められています。ごみの種類によっては、スタッフが目視で確認して、人の手で更に細かく分別されます。

アルミ缶やスチール缶、プラスチック、ペットボトルは圧縮、空き瓶は異物を除く、発泡スチロールは溶かしてもう一度固めるなど、ごみの種類ごとに圧縮や粉砕、溶解などの過程を経て、再資源化に向けて処理されます。

ちなみに、そおリサイクルセンターでは、家庭から回収された使用済みの食用油を燃料化して、ごみ収集車の燃料に使用しているそうです!

回収された発泡スチロールの山。自宅からごみ置き場に出す量のごみしか目にしたことがなかったので、衝撃を受けました…。

日々、何気なく出しているごみが集められ、山となっていること。そして、それらが分別され、処理されている様子を目の当たりにして、「きちんと分別することで有効活用できるんだ」と「ごみを出す」という行為についての責任を強く感じました。

ごみの分別で40年以上使用期限を延ばした「埋め立て処分場」

処分場は谷に造られていて、谷の底から埋め立てていきます。

今回の記事で、最後のレポートとなるのが、志布志市にある「埋め立て処分場」です。

有機工場やそおリサイクルセンターで資源としてリサイクルできないごみは、この埋め立て処分場へと運ばれます。使用済み紙おむつも、リサイクルできないため、埋め立て処分場に運ばれていました。

昔は、ごみ収集車の列ができていたこともあったそう。今はそんなことはありません。生ごみがないため匂いも気になりません。

ごみの分別・回収が行われる前は、埋め立て場に生ごみを含む、全てのごみを埋めていたため、匂いがして虫が湧き、カラスがやって来る「迷惑施設」状態。「そんな迷惑施設を新しく建設するのは、住民の理解を得ることができない」という理由も、こちらの埋め立て処分場をできるだけ長く使おうと考える、後押しになったそうです。

この埋め立て処分場は、もともと平成2年~平成16年まで使用する予定でした。それが、最初にご紹介したような、ごみの分別・回収に取り組み続けた結果、いまでは、埋め立てられるごみは8割以上削減。埋め立て処分場は、現時点から40年以上も使えるようになったのです。

つまり、55年以上延命できていることになります!

あとがき

今回、ごみの分別回収やリサイクル、埋め立て処分場の現場にお伺いして、細やかなごみの分別回収とリサイクルを実現することができれば、ごみの量は大幅に削減できること。ごみの問題は、私たちの毎日の生活と地続きにあること。私たちは未来を考えた上で、ごみを出す責任があることを深く考えさせられました。

さらに、現場でお話を伺う中で、あらためて出てきたのが、“使用済み紙おむつの処理”という課題。多くのごみがリサイクル努力によって削減されたいま、埋め立てごみの15-20%(重量ベース)は「使用済み紙おむつ」なんだそうです。

そこで、志布志市と大崎町が新たに取り組んでいるのが、使用済み紙おむつのリサイクルです。次回の現地レポートでは、志布志市と大崎町、そしてRefFプロジェクトがいま取り組む、使用済み紙おむつのリサイクルにスポットを当ててお届けします!
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※「⼤崎町リサイクル未来創⽣奨学⾦」について(大崎町のサイトにリンクします)

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