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今さら聞けない、リサイクルの基本!~水平リサイクルがもたらす未来~

RefFプロジェクトでは「使用済み紙おむつから紙おむつへの水平リサイクル」を目指していますが、水平リサイクル以外に、どんなリサイクルがあって、どんな違いがあるのでしょうか?
新年度ということで、今回は知っているようで知らないリサイクルの基本について、RefFプロジェクトメンバーで調べてみました!


リサイクルの前にできることは?「3R」のリデュース、リユースからはじめよう

リサイクルについて調べていくと、まず登場するのが「3R(スリーアール)」というキーワード(ご存じの方も多いと思います!)。
3Rは『Reduce(リデュース)』『Reuse(リユース)』『Recycle(リサイクル)』の頭文字である、3つの“R”からつけられています。

実は、3Rで大切なのは取り組む順番。
リサイクルを行う際にもエネルギーが必要になり、コストもかかります。

ごみそのものを減らすためには、
①ごみを発生源から減らす「Reduce」
②ごみとなる前に繰り返して使う「Reuse」
③ごみになったものを再生利用する「Recycle」
と、優先順位をつけて取り組むことが大切なんです。

アップサイクル、ダウンサイクル、水平リサイクル。リサイクルの種類いろいろ

さらに、リサイクルにはいくつかの種類があります。
いま、ファッションや食品、雑貨などの分野でも行われているのが「アップサイクル」。ごみとして捨てるはずのものに手を加えて、より高い価値を与えて使用するリサイクル方法です(例えば、着なくなった服からバッグを作る、捨てられる食材からお酒を造る場合などがそうです)。

一方、元のものより価値は落ちますが、捨てられるはずのものに使用用途を与える「ダウンサイクル」という方法もあります(着なくなった服でぞうきんを作る場合などはこちらです)。

この2つのリサイクルは、普段の生活でも応用できそうですね!

私たち、RefFプロジェクトが目指す「水平リサイクル」についても、あらためてお伝えしますね。

〇「水平リサイクル」は、使用済みの製品を原料として同じ種類の製品をもう一度作るリサイクルの方法のことです。
よく知られているのは、アルミや紙類、ガラスびんなど。ほかにも、「ペットボトルからペットボトル」「 TシャツからTシャツ」といった取り組みもはじまっています。

さらに「プラスチック製ペンからプラスチック製ペン」、「タイヤからタイヤ」の水平リサイクルを目指して、チャンレジされている企業もあるんです。身近なもので水平リサイクルが実現されていくと思うと、わくわくしますね!

使用済み紙おむつを「ごみ」にしない!メモ帳、ポロシャツなど。紙おむつのリサイクルから誕生したアイテム

RefFプロジェクトの使用済み紙おむつからも、さまざまなリサイクル事例が生まれています。

もちろん、最終的に目指すのは水平リサイクル。
ですが、「使用済みの紙おむつをただのごみ」にせず、少しでも役立てる方法を探るため、そして、RefFプロジェクトの取り組みをより多くの方に知っていただくたために。さまざまな形のリサイクルにチャレンジしています!

例えば、このメモ帳は、使用済み紙おむつから取り出した「リサイクルパルプ」を原材料の一部に混ぜて作られたものなんです。

こちらのメモ帳はユニ・チャームの「2023年度有力卸店会」にて、参加されたお取引先様に配布されました。

ジャパン営業統括本部 営業企画統括部の林さん。営業支援に加え、流通戦略などの企画・立案および推進を行っています。

営業企画部の林さんによると「対面での有力卸店会は2019年以来、4年ぶりの開催となりました。ユニ・チャームのリサイクル事業やRefFプロジェクトの取り組みについて、あらためて理解を深めていただく目的も込めて、今回、リサイクルパルプを使用したメモ帳を配布させていただきました。流通のみなさまへも、ユニ・チャームの取り組みを引き続きしっかりと発信していきます」とのこと。

参加されたお取引先様からは「ユニ・チャームの進むべき方向性が理解できました。リサイクル事業は面白い取り組み」「将来を見すえた、紙おむつリサイクルへの対応は印象に残りました」「紙おむつの水平リサイクルの実用化に期待しています」といった声をいただいたそうです!

メモ帳のようにリサイクルパルプから生まれたアイテムをきっかけに、RefFプロジェクトの取り組みも広まっていくと嬉しいです。

RefFプロジェクトでは、「メモ帳」のほかにも、「リサイクルパルプ」から作られたアイテムに、「トイレットペーパー」「紙ファイル」「パンフレット」「エコバッグ」「ポロシャツ」などがあります。

「リサイクルパルプ」に化学的な処理を施してレーヨン繊維に加工すると、エコバッグやポロシャツのように繰り返し使えるアイテムにアップサイクルすることもできるんですね。

また、前回のnote(「持続可能な循環型社会を目指す、自治体や教育機関・企業との共創~リサイクルの町・大崎町の取り組みレポ!~」)でご紹介した「紙おむつ専用回収袋」は、使用済み紙おむつから取り出した、再生プラスチックから作られています。こちらも「回収袋から回収袋」という点では、ある意味、水平リサイクルともいえるかもしれませんね。

使用済み紙おむつから生まれた、リサイクルアイテム。RefFプロジェクトを知るきっかけにもなってほしいです。

日本のリサイクルについて、CLOMA事務局・柳田さんにもお聞きしました!

「日本のリサイクルの意義について、もう少し詳しく知りたい!」ということで、海洋プラスチックごみ問題の解決に取り組む、クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(略称、CLOMA:クロマ)事務局の柳田様にもお話をお聞きしました。

CLOMA事務局技術統括 柳田様。消費財化学メーカーでのESG関連の業務を経て、CLOMAに参加。CLOMAは、2019年に海洋プラスチックごみ問題の解決を目指して、経済産業省の後押しにより設立されました。現在、産業界のさまざまな業種から500社弱が参加されているそうです。

―リサイクルに取り組む際に、重要なことは何でしょうか?

柳田さん「エネルギーやCO2排出における温室効果ガスなど、環境問題についてはよく知られていますよね。世界的にも環境問題が大きく意識されている中、ごみとなったものを、もう一度資源として利用するリサイクルは、環境と経済を両立し、循環型社会を実現するためには欠かせない方法。
とくに、資源の少ない日本では、資源を有効活用していかなくてはいけません。こうした社会システムを作るためには、ひとつの企業や業界だけでは実現できません。ものづくりを担う、産業界全体が協力して取り組んでいく問題なんです

ー日本のリサイクルはどのくらい進んでいるのでしょうか?

柳田さん「飲料プラスチックであるペットボトルでは回収率は9割、リサイクル率8割以上と、世界的にも高いリサイクル率を誇っています。その一方、プラスチックの食品容器の多くは、熱をエネルギーとして回収する『サーマルリサイクル』で処理されています。これは日本独自の考え方で、海外ではリサイクルと見なされません。ごみの種類によりリサイクルレベルに差があるのが現状です」

日本のリサイクルにも、得意な分野とそうではない分野があるんですね。
ちなみに、「サーマルリサイクル」をリサイクルとみなしていない海外では、「サーマルリカバリー」とも言うそうです(また、廃棄物処理の一環として行われているリサイクル方法には、「サーマルリサイクル」のほかにも、ごみを原料として別のものを作る「マテリアルリサイクル」、ごみを化学的に分解して、新たなものを作る「ケミカルリサイクル」もあります)。

ー「水平リサイクル」の意義とはどのようなものでしょうか?

柳田さん「ものの価値を落とさない、水平リサイクルは非常によい取り組みだと思います。これまで、ものづくりの企業は、消費者が使用した後の、ごみになったものに関わることは稀でした。水平リサイクルでは、企業の製品から出たごみを、製品の原料にしていきます。ごみの処理・再生処理の過程に、“調達・製造といったものづくりの情熱がかけられる”というのは、企業にとっても、社会にとってもメリットがあるのではないでしょうか

さまざまなお話を伺う中で、循環型社会を実現していくためには、企業が、もの作りの情熱を、消費者が消費した後にまで注ぎ込んでいくことにより、リサイクルを経済活動に組み込んでいくことが大切だと気づかされました!

ほかの国のリサイクル事情は?アメリカ・ニュージャージー州に駐在中の池上さんに聞いてみました!

ここまで調べて「ほかの国のリサイクル事情はどうなっているのだろう?」という疑問が沸き上がってきました。そして、そんな海外事情を聞くのに、ぴったりな人がいました!実は現在、RefFプロジェクトメンバーの池上さんが、アメリカ・ニュージャージー州に駐在中なんです。さっそく、お話を聞いてみました。

―アメリカでのごみ問題やリサイクルについて教えてください。どんな課題があるのでしょうか?

池上さん「アメリカでも、ごみ問題やリサイクルは大きな課題になっています。EPA(アメリカ環境保護庁)は、2018年の32.1%から、2030年までにリサイクル率を50%まで引き上げることを目指しています(※)」
※家庭ごみ、事業系廃棄物のリサイクルとコンポストの合計数字になります
参照:EPA「Facts and Figures about Materials, Waste and Recycling

池上さんは「リサイクルパルプが紙粘土に⁉~紙おむつリサイクル特別授業を鹿児島県志布志市の小学校で開催!~」で特別授業を担当されました。現在は、ユニ・チャームと住友商事が出資する、ペット用品の製造・販売を行うアメリカの『The Hartz Mountain Corporation』に所属。ニュージャージー州にて、ペット用品の商品開発や包装材の開発などを行われています。

池上さん「とはいえ、一般の人の分別やリサイクルの意識はまだこれから。日本と比べて高い訳ではないんですよ。ごみ出しの様子もそれほど変わりません」

リサイクル用のごみの回収日の様子です。ペットボトル、缶、プラスチックのトレーや容器、紙容器や段ボールなどの資源ごみを、分別せずに家の前に出すスタイルだとか。

ー資源ごみはこんな風に回収されているんですね。家の前に出せるのはいいですね。

池上さん「ただ、急速に国や州での法律が変わってきていて、ニュージャージー州では使い捨てレジ袋の禁止や資源ごみの分別収集の強化などが定められています」

―使い捨てレジ袋が禁止なんですか!日本より厳しいですね。

池上さん「そうですね。日本ではお店でレジ袋を購入できますが、ニュージャージー州では、一定規模以上のお店では、Single-Use Bag(一度使用したら、ごみになってしまうプラスチック袋や紙袋)は提供が禁止されました。買い物袋を忘れたら、ショッピングバッグをお店で購入しなきゃいけないんですよ」

ニュージャージー州は、さらに先進的な取り組みを目指しています。今後、硬いプラスチックやガラスの包材に、一定量、家庭から回収されてリサイクルされた原料を使用することが求められていて、中期での目標値も示されているそうです。

海外でも、ごみ問題やリサイクルは、どんどん進み、改革されていく過渡期なんですね。こうした海外の事例は、これからもお伝えしていきたいと思います!

あとがき

今回、水平リサイクル以外のリサイクルの方法について調べることで、「どうしてリサイクルが必要なのか、何のために水平リサイクルを行うのか」を、基本に立ち返って考えることができました。

私たち、RefFプロジェクトにとって「水平リサイクルが最も重要な目的」であることは変わりません。ですが、RefFプロジェクトで生まれた素材をダウンサイクルさせた製品によって、さまざまな方々に触れていただくことも私たちの活動の一環として、大切だと再認識しています。

そして、今回のnoteは、日本はもちろん、世界のごみ問題についても目を向けるきっかけとなりました。

消費されない消費財を実現して、‟ごみゼロ“の世界の実現を目指すために。今年度も、RefFプロジェクトの取り組みを中心に、幅広い視点で紙おむつの未来についてお届けしていきます!