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低所得層の多い地域に食料品へのアクセスを。宅配ロボット「R2」の挑戦

食の砂漠」問題をご存知でしょうか?

これは低所得層の多い地域で、食料品(特に生鮮食品)へのアクセスが困難になっている問題のことを差します。20世紀後半から、大型店舗の進出により多くの地域で住宅地近くの商店が撤退。この大型店舗は住宅地から離れた郊外にあることが多く、自動車を購入できない低所得者層は食品へのアクセスが制限されるようになってしまいました。

この問題をロボティクスの力で解決しようと取り組んでいるのが、米国カリフォルニア州に本社を置くNuro(ニューロ)社です。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。このマガジンでは、海外の情報を中心に様々な社会課題の解決のために開発されたロボットを紹介しています。

ロボット開発会社がフードバンクと提携

Nuro社は無人宅配ロボット「R2」を提供しています。R2は車より数回り小さなロボットで、障害物を感知しながら自走できます。

Nuro社パートナー企業のWebサイトで買い物をし、宅配方法でR2を選択すると、購入したものをR2が自宅まで届けてくれるそうです。提携先は米国大手スーパーマーケットであるウォルマートやクローガーの他、ピザ販売店であるドミノピザなど。2020年には約5億ドル(500億円超)の資金を調達しており、さらなるサービスの改善・拡大が期待されています。

そんなNuro社が複数のフードバンクと提携し、食の砂漠に住む貧困家庭のもとへ無料で食料を宅配する試みを行いました。フードバンクというのは、まだ食べられるのに処分されようとしている食品を引き取り、食べ物に困っている方々や施設に届ける活動や団体です。

配達も行うフードバンクもありますが、提携する施設で食品を受け取ることが多いようです。しかし、食の砂漠に住む人々の多くは自動車を持ちません。寄付された食料をどう必要な人に届けるかは大きな課題でしょう。

筆者も米国の食の砂漠と呼ばれるであろう地域に住んでいたので、この問題は痛いほどわかります。車で15分ほどの距離に食料品店はありましたが、歩道が整備されていないため徒歩で行くのは実質不可能、公共交通機関を使うと往復で1時間半ほど取られてしまい、また車を買うようなお金はない状況でした。しかし、なぜかファストフード店は近くに多くあるので、時間のないときはそこで食いつないでいました(低所得者層ほど割高かつ不健康な食べ物を消費してしまう問題も、Nuro社が同記事で指摘しています)。

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▲R2から食料品を取り出す様子

食の砂漠に住む70%に食料を届けられるかもしれない

米国の現状を見ると、フードバンクの宅配を自動化する、しかも自宅まで届くようにする、というNuro社の取り組みは大変意義があるように思えます。

Nuro社の記事によれば、米国ではおよそ2000万人の人々が食の砂漠に住んでいるそうです。そして、R2を使用すれば、理論上は70%の食の砂漠に住む人々に食料を届けることができるとしています。

日本ではどうでしょうか。令和元年の国土交通省の調査によると、地方部では80歳以上の高齢者も移動時の2回に1回以上の頻度で自動車を使用しています。これは裏を返せば車がないと生活が難しいということでしょう。しかし、身体はどうしても衰えてしまいます。日本でも生活に必要不可欠な食品や日用品をロボットが自宅まで届けてくれたら、高齢者の移動負担や事故率を減らすことができるのではないでしょうか。

懸念点とすれば、ロボットを公道で走らせる際の法律面での問題がまず出てくるかと思います。まだまだ新しいものである宅配・自走ロボット。テクノロジーによって今まで解決されなかった社会課題が解決されるよう、政府や行政の協力も期待したいですね。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。当社では、新規ロボット・ITシステムソフトウェアの開発や最新ロボットの導入支援を行っております! ご関心がございましたら、こちらのページからお気軽にご相談ください。

出典:
プレジデントオンライン:都市に広がる「食の砂漠」
Nuro, Inc. Nuro’s New Funding Round
Nuro, Inc. Nuro Joins the Alliance to End Hunger
Nuro, Inc. Serving America’s Food Deserts
Second Harvest フードバンクとは
THE ANNIE E. CASEY FOUNDATION. Food Deserts in the United States
国土交通省 令和元年度 第1回 (第15回) 交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会 配布資料

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