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Day.11 糖尿病の診療メモ【総合診療トピックゼミ


<Story>

 既往歴もなくお元気な患者さん、血糖値が高くて健診にひっかかったと来院されました。さて、ここからどうしましょう?症状はありませんが……

<糖尿病の診断基準>

 やや煩雑な糖尿病の診断基準ですが、実際の臨床場面では、下記のいずれかで診断となるケースが多いでしょう。
(1)1回の採血で、血糖高値+HbA1c高値
血糖値は、早朝空腹時であれば126mg/dL以上、随時血糖であれば200mg/dL以上で高値となります。HbA1cについては、6.5%以上で高値となります。

(2)2回の採血で、血糖高値+血糖高値 or 血糖高値+HbA1c高
基準値については、(1)と同じです。

(3)糖尿病の典型的症状 or 糖尿病網膜症の確実な診断がある。

<糖尿病診断後に検討する検査/1型か2型かを評価>

糖尿病と分かったら、1型糖尿病か2型糖尿病かを評価します。

◇1型糖尿病
膵β細胞の崩壊によるインスリン分泌低下が病態
☞治療はインスリン導入

◇2型糖尿病
生活習慣病の1つ。インスリン分泌症障害やインスリン抵抗性が病態。
☞治療は生活指導̟±内服薬で開始する。

このように、血糖値が高いという共通点はあれ、1型糖尿病と2型糖尿病は病態が大きく異なります。加えて治療法も差異が大きいため、上記を見分ける/治療法を判断するために下記の検査を提出します。

◇抗GAD抗体(膵島細胞に対する自己抗体)
☞陽性であれば1型糖尿病と言えるが、初期は1型であっても陰性のことが少なくない。

◇空腹時尿中Cペプチド
☞0.5ng/mL以下であれば、体内でインスリンをほとんど作れていないので、インスリン療法の絶対的な適応となる。

<治療目標>

 原則として、目標はHbA1cを7.0%未満に抑えることを目指します。
但し、高齢であったり、認知機能障害、併存疾患、使用する血糖降下薬(重症低血糖が危惧されるSU薬を使っているか)等を考慮して、8.0%未満、特にハイリスクなケースでは、8.5%未満を目標とする場合もあります。

 また、そもそもの糖尿病の治療目標は、心筋梗塞や脳梗塞等のイベントの発生率を落とすことに主眼が置かれているため、高血糖や脂質異常症、喫煙等、糖尿病以外のリスクファクターがないかを確認の上、介入する必要もあります。

<治療介入(薬剤選択)>

◇1型糖尿病の場合
生活指導(2型糖尿病の項を参照ください)も必要ですが、インスリンの絶対量不足がある状態のため、初手からインスリンを使用します。
開始の際には、実測体重で0.1単位/kgから開始して、早朝空腹時血糖が80~120となるように2単位ずつ増減していきます。

◇2型糖尿病の場合
まず行うべきは、処方ではなく生活指導です。
A:アルコールを減らす

B:BMIとBP(体重と血圧)を管理する
☞血圧130/80mmHg未満を目指します。

C:シガレット(タバコ)を止め、コレステロールを管理する
☞LDL-C:120mg/dL未満、HDL-C:40mg/dL以上、中性脂肪:150mg/dL未満を目指します。

D:食事(英語ではダイエットとも)を適切なものに
☞3食しっかりとって、血圧のアップダウンを回避するとともに、ゆっくり噛んで食べるようお伝えします。

E:エクササイズ(運動)を適度に行う
☞運動強度としては、「ちょっとキツいけど、まあ楽な部類かな」くらいのものがベストです。

その上で、処方はメトホルミンから開始するのがよいとされます。
□メトホルミン塩酸塩250mg 1回1錠 1日2回(朝・夕)

*HbA1cが7~8%未満であれば、生活指導のみ行って3か月程度は薬剤を使用せずに経過をフォロー改善しないようであれば内服を開始する形でもよい。

1剤でのコントロールが難しければ、患者ごとの調整は必要ですが、下記の順に追加するのがよいとされています。
1)DPP-4阻害薬:ジャヌビア50mg 1回1錠 1日1回(朝)
2)SU薬、SGLT-2阻害薬、αグリコシダーゼ阻害薬から1つ

◇フォローアップについて
薬剤を新規に開始したり、導入したりした後は、2週間後のフォローが適切とされます。状態が安定してしまえば、1か月ごとのフォローでOKです。

<Column>

 糖尿病ほど多面的な病気はあまりないように思います。多分、それぞれの科の医者に糖尿病ってなに?って聞くと、多分回答が違うと思います。
循環器内科・脳卒中内科☞血管にダメージを与える病気。リスク因子。
内分泌内科☞内分泌系の病気であり、生活習慣病でもある
肝胆膵外科☞膵癌の初期症状かもね
救急科☞意識障害の患者で糖尿病の既往歴があれば、低血糖かも!
集中治療科☞細胞内飢餓
この細胞内危害ってオシャレですよね(実際、集中治療医に言われました)。彼にとっては糖尿病は、血管の中に糖が多い病気ではなく、糖が細胞内に運搬されず、結果細胞にエネルギーが届かない病気だそうです。なるほど!

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