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Day.32 小児の発熱の診療メモ【総合診療トピックゼミ】


<おことわり>

 以降の内容は、「小児科ですぐに戦えるホコとタテ」という、総合診療系の若手に対する救いの女神のような書籍のフローチャートをベースにしています。現場で参照しやすいように、情報をまとめただけとも言えます。ほぼほぼ引用ですので最初におことわり。
 また、PALSの第一印象、PAT評価で一旦は問題なしと判断できる程度に安定している症例で、かつ生後3か月以降の37.5℃以上の発熱に限定して記載させて頂きます。

<Step1:発熱して4日経つなら検査>

◇4日目以降なら、血液検査(結果をみて尿検査も)と胸部レントゲンを。
→なぜなら……
1)普通の風邪なら3日で治るから
2)腎予後を考えると、尿路感染症を長引かせたくないから

<Step.2:重症度項目にあたるなら検査>

◇下記のどれかに該当する場合には、採血、胸部レントゲン、2歳以下なら尿検査を実施
-重症度項目-
〇皮膚:蒼白、まだらなど、正常でない。
〇活動性:具合悪そう、親と視線が合わない
〇呼吸:頻呼吸、SpO2低下
〇循環:頻脈、CRT3秒以上
〇水分:ツルゴール低下、口腔粘膜乾燥
〇その他:大泉門膨隆、複雑型熱性けいれん、手足関節の腫れ

<Step.3:呼吸器症状がある>

◇聴診でcrackles、SpO2が95%以下、努力呼吸があるなど認めたら、胸部レントゲン検査、肺炎があれば血液検査を実施する。
〇小児の場合、CRP4以上は細菌性の目安→抗菌薬使用へ

<Step.4:中耳炎所見がある>

◇鼓膜の発赤・膨隆・耳漏を評価して、中耳炎を診断/除外する。
〇耳が痛くないとはっきり言える子でなければ、基本耳を覗く。

<Step.5:各種迅速検査を検討する>

◇2歳以上で発熱、口蓋垂発赤、軟口蓋点状出血あり
→溶連菌の迅速を考慮。
◇発熱+扁桃白苔
→アデノウイルスの迅速を考慮
◇発熱と咳嗽、周囲での流行がある
→インフルエンザの迅速を考慮
◇wheezesまたはcracklesを聴取。周囲に流行がある。
→RSウイルスを考慮
◇cklesを聴取。周囲に流行がある。レントゲンで肺炎像
→ヒトメタニューモウイルス

<Step.6:ここまでで熱源がはっきりしない場合>

◇尿検査をここまでで行っていなければ、再度考慮する。
→尿路感染症は頻度的に結構あるため
◇慎重な経過観察を行う前提で、症状と合わせて下記の暫定診断。
〇ウイルス性上気道炎
〇消化器症状がメインなら、ウイルス性胃腸炎
……もちろん、全身状態が悪ければ入院、転送、精査の考慮です。

<Column>

 小児科って、年齢や体重に従って、検査の正常値や薬剤量が異なるので、少し難しさを感じます。だから、蘇生対応のときは体重ごとに備品のボックスを分ける工夫をしたり、身長を測れるテープに、対応する薬剤量を書いてある商品があったりします。非小児科医としては、日々の診療でもこういった工夫ができたら、煩雑さとミスが減るだろうなと思ったり。


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