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Day.24 体重減少の診療メモ【総合診療トピックゼミ


<Story>

 若い男性が体重減少を訴えてやってきました。よくよく聞くと、体重は減っていないようなのですが、増やそうと頑張っているのに増えないようです。既往には、精神系疾患はあるものの、体重減少に直接関係する食思不振症などの指摘は今のところなさそうです。精神系疾患はかかりつけ精神科にお願いするとして、内科系疾患はどう検索していきましょうか……

<とりあえずの初動>

 まずは、問診、身体診察の上、スクリーニング検査を提出する。
◇一般採血+甲状腺機能☞甲状腺機能亢進症は?
◇尿検査☞感染症はないかな?
◇胸部レントゲン☞肺炎は腫瘍性病変は?

<体重減少の鑑別疾患>

その上で、所見を繰り返し取りながら、下記がないか探していきます。
1)悪性腫瘍
2)消化器疾患
☞胃潰瘍や膵炎、炎症性腸疾患、吸収不良症候群等を考える。
3)膠原病
☞巨細胞性動脈炎や血管炎、Still病などを検討する。
4)感染症
☞感染のFocusがつかまらなければ、不明熱として動くことも検討。
5)内分泌疾患
☞甲状腺機能亢進症に加えて、糖尿病や副腎不全を鑑別する。
6)アルコール依存
☞アルコール以外からの摂取カロリーが著しく低下して痩せる。
7)電解質異常
☞低Naや高Caのように、それ自体が食欲を低下させるものから、亜鉛や銅の欠乏のように、味覚障害を原因に食欲を落とすものもある。
8)薬剤性
☞吐気や味覚障害、口腔内の乾燥なども間接的に経口摂取量を低下させる。
9)口腔内・顎の障害/嚥下障害
☞そもそも食べる気はあっても噛んだり飲み込んだりできなくなってはいないか。
10)運動量の増加
11)精神疾患

<Column>

 体重減少というのは、非常に”絞れない主訴”なので困ってしまいます。こういうときは、広く採血したり、問診や身体所見を深く行ったりして、まずは”絞れる主訴”を捕まえたいですよね。例えば、体重減少だけでなく、下痢もあることも判明したら、甲状腺機能亢進症や、消化管系の疾患の可能性が一気にUpしますよね。さらに言えば、採血で電解質異常が見つかったり、実はアルコールばっかり飲んでいて、食事をしっかりとれていないことが判明したりなんかしたら一発です。

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