Day.29 甲状腺機能亢進症の診療メモ【総合診療トピックゼミ】
<甲状腺機能亢進症の4大鑑別>
1)Basedow病
→抗TSH受容体抗体が刺激を加え続けることで、甲状腺ホルモンが過剰に作られるもの。
2)亜急性甲状腺炎
→発熱+頸部痛で発症。甲状腺が炎症で壊れる過程で甲状腺ホルモンがばらまかれる。
3)無痛性甲状腺結節
→誤解を恐れずに言えば、症状のない亜急性甲状腺炎のようなもの。
4)Plummer病
→甲状腺ホルモンを勝手に作る結節ができるもの。
<採血でBasedow病を拾い上げる>
頻度的にはBasedow病が最も多いので、ここから探しに行きます。原因となる抗TSH受容体抗体(TRAb)を採血で確認します。
上昇していれば、Basedow病として対応を開始します。
<エコー+αでPlummer病を拾い上げる>
TRAbが陰性であれば、エコーで甲状腺ホルモンをつくる結節がないかを探しに行きます。 またここまででTRAbの陰性は確認できていると思うので、合わせて「実は橋本病がベースにありました 」ということがないようTPOA
bも確認して除外を行います。つまり、TRAb(-)、TPOAb(-)、エコーで結節ありならPlummer病です。
<治療を開始する>
まず、疾患に関わらず症状が出ている場合には、β遮断薬で対応します。
0)対処療法
プロプラノロール(インデラル) 1回10mg 1日3回
その上で各々の初期治療はこんな感じです。
1)Basedow病
〇チアマゾール(メルカゾール)1日1回15mg
◇催奇形性があるため、妊婦には使えない。プロピルチオウラシルで。
◇無顆粒球症や肝機能障害、ANCA関連血管炎など副作用が多いため、注意。
◇FT4もTSHも正常範囲内に入るように調整していく。但し、内服開始から検査結果が動くには、月単位の時間がかかる。
2)亜急性甲状腺炎
対処療法でOK。NSAIDsや、場合によってはステロイドを使用する。
3)無痛性甲状腺結節
自然に落ち着くので、原則治療不要。
4)Plummer病
FT3、FT4が基準範囲内で、TSHのみ基準下限~0.1μU/mLの間はフォロー。
TSH<0.1μU/mLで甲状腺ホルモンも高値になったら、放射性ヨード内用療法or手術での対応となるため、専門医に紹介する。
<Column>
甲状腺機能亢進症では、BNPは上がらないけれど、浮腫は出るくらいの心不全がありえるそうです。甲状腺機能異常では、亢進症でも低下症でも浮腫が出るからややこしいですが、どっちでも浮腫が出ると思ってしまえば、圧痕性か非圧痕性で鑑別が進みますね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?