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Day.19 ST変化と脚ブロックの診療メモ【総合診療トピックゼミ】


<Story>

 救急患者さんが搬送されてきた。ウイルス感染で息がしんどいとのことだ。とりあえずモニターを装着してみると、なんかSTが下がっているように見える。十二誘導心電図を見ても、確かに下がってるなぁ、でもこれ多分……

<脚ブロックをざっくり見つける>

 詳しい説明はおいておいて、ざっくりの捕まえ方を書かせて頂きます。

Step.1 QRS波が横に広がって、「M」になってるとこを探す

十二誘導心電図をとって、本来は「Λ」型になるべきQRS波が「M」のように割れていたら、脚ブロックを疑います。というのも脚ブロックがあれば、本来のルートで電気が伝わらずに心室の収縮のタイミングが少しずれるので、QRS波が横に広がり、頂点が2つできるんですね。

Step.2 どこで「M」になっているか確認

次にその「M」がどこで出ているか(つまり右側か左側か)を確認することで、右脚ブロックと左脚ブロックを判断します。
1)V1で「M」が見える☞右脚ブロック
2)aVL、Ⅰ、V5、V6で「M」が見える☞左脚ブロック

<心筋虚血を判定する>

◇右脚ブロックの場合

☞原則としては、いつも通りST-T変化の評価が可能です。

◇左脚ブロックの場合

☞再分極障害で、虚血がなくてもST-T変化が出ます。
 したがって、別の方法で判断しなければなりません。
☞QRS波とST部分が上に凸か下に凸かを確認してください。
 一般的に左脚ブロックの場合、この凸の向き(極性といいます)は逆になります。
 心電図上、凸の向きが同じ(極性が同じ)であれば、心筋梗塞の可能性が高いです。

<Column>

 と、ここまで書きましたが、心電図判読に一番必要なのは、以前の心電図を確保することだと思います。忘れもしない症例が1つ。中年女性がかかりつけ病院に行こうとしたところ、症状が強すぎて通り道にあった当院へ。即時心電図をとると、一見問題ないのですが、aVL、Ⅰ、V5、V6の波形にかすかに虚血の香り……。夜間でしたが、電話でかかりつけ病院に心電図のFAX送信を依頼したところ、過去の心電図に虚血の香りは一切なく、他の誘導も今の波形と形が違う……。即時循環器をCallして緊急カテとなりました。おそろしや、おそろしや。

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