雇用保険料引き上げ検討、早くて令和4年から?
厚生労働省が本日(令和3年7月28日)、雇用保険料引き上げの検討に入ったようです。新聞各社がネットで速報を流しています。理由は、コロナ禍における雇用調整助成金での支出が大幅に超過したことによるものです。
雇用保険とは
多くの人にとって、雇用保険は失業保険(正式名称は基本手当)として認識されているのではないでしょうか。正社員など一定の要件を満たしていると、労使折半で保険料を納めており、その期間や最後の収入額を基準として求職活動を条件に支給されるものです。
雇用保険の主旨としては、もう一方で雇用を継続するために存在しています。これらは育児など休業中に収入補償をしてくれるものや、今回のような雇用調整助成金などがあるわけです。また、雇用を継続する目的で資格取得などの職業訓練に対して支給してくれるものもあります。ちなみに、令和3年度の雇用保険料率は一般の事業(農林水産、酒造、建設等以外)で千分の九となっており、労働者側の負担は千分の三です。要するに、給与額の大体0.3%が保険料として取られているということです。
どのような影響がある?
これまで雇用保険は他の社会保険と比べても財政状況は良いものと思っておりました。一番破綻しているのは年金ですが、健康保険も良くはない中で、支給する要件も特殊ですし、特に気にもしてこなかった存在ではあったのです。
ところが、昨年から猛威を振るうコロナウイルスによる雇用市場を保護する名目で支給してきた雇用調整助成金によって、その収支構造が一気に悪化してしまったようですね。私の所属する大学でも、非正規のパートさんたちを対象として受領していましたので、言われてみれば、確かに不思議ではない話です。
さて、その影響ですが、単純に納める金額が増えてしまいますので、労働者も使用者も負担が増えるということになります。現時点ではそこまで大きい支出ではないにしろ、やはり手取り額が下がってしまいますので景気にも少なからず影響を与えるのではないでしょうか。
非正規労働者の雇い控えも
もう一つ私が懸念するのは、非正規雇用の雇い控えも発生するのではないかということです。先日ニュースになった最低賃金に関しても同様の記事を書いておりますので、よろしければご覧ください。
雇用保険については、誰でも被保険者(保険に加入する資格がある者のこと)になるわけではありません。非正規雇用の方で言えば、週に20時間未満の労働者は加入することができないのです。
このことから、20時間を超える、パートさんなどを雇用しなくなる、あるいは20時間未満になるよう雇用契約を更新してしまうといったことがありうるのではないか、ということです。
やはり社会保険料は労使で負担するものである以上、払わなくて良いのであれば使用者側は払いたくないのが実情です。とはいえ、仕組み自体の収支構造が大きくバランスを崩した以上は、やむを得ない検討であるというのも事実でしょう。