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正社員になった方が良い理由

正社員の是非に関する議論は今に始まったことではありませんが、アフターコロナを見据えると、今後正社員のメリットが最大限発揮されるようになると私は考えています。それには様々な理由がありますが、一般的なメリット・デメリットから考えていきましょう。

ちなみに、腕に覚えがある人や、そもそも経営者になりたい人、夢を追いかけている人には当てはまりませんのでご注意ください。

正社員のメリット・デメリット

ざっくり言えば、巷で言われているのはこのようなところでしょう。

【メリット】仕事内容、収入、福利厚生、世間体、キャリア

正社員であれば、与えられる仕事も高度なものになりますので、スキルアップやキャリアパスに有利に働きます。また、当たり前ですが、非正規雇用と比べて収入が安定していますので、世間体も良いという理屈です。

【デメリット】責任、拘束時間、限定的スキル

メリットの裏返しとなっています。高度な仕事を担当する分、責任は伴いますし、正社員であればこそ異動や転勤も避けられないでしょう。そして成果が求められますし、組織文化から時間外労働や休日出勤が発生する恐れも十分にあります。また、キャリアの面では、「その会社でしか通用しないスキル」というのも無視できない存在です。

感覚的に多くの人が理解しているとおり、正社員は主に時間を犠牲にして、安定を得ていると言えるでしょう。次項より、私が考える正社員の強みについて触れて参ります。

社会保険料の使用者負担

人事労務で仕事をしない限りあまり考えないことかもしれませんが、社会保険料については労使で負担しています。通常の生命保険や車の損害保険などは「任意保険」なので、当然契約者が100%負担するものですよね。ところが、社会保険はそうではないのです。

まずは労災保険、こちらはなんと100%事業主負担です。業務上あるいは通勤中の怪我や病気に対して補償してくれるものです。危険な業務に就いている人ほどありがたいものですよね。ただし、労災については正規雇用か非正規雇用かという視点ではないので、雇用されている人全員が対象です。

次に雇用保険。わかりやすいもので言えば失業保険ですね。離職してしまった時に所得の補償をしてくれるもので、他には教育訓練に必要な費用の補填、コロナ禍における雇用調整助成金など、雇用を守るための保険になっています。ちなみに、非正規の方でも週の労働時間が20時間を超える場合など要件を満たせば加入することができますが、だからこそ事業主は20時間未満で雇用するなどの対策を取ったりします。保険料負担は労働者と使用者で1:2です。

なお、雇用保険料の見直しが検討されているようです。

次に健康保険。病院での診療が3割負担で済む、アレですね。実はそれ以外にも高額療養費(一月の療養費の上限)や傷病手当金(私傷病による休職中の賃金補填)など充実した制度であることをご存知でしょうか。この健康保険は労使での折半負担となっています。

最後は厚生年金です。年金制度は全員が加入する「国民年金」とサラリーマンが更に加入する「厚生年金」があります。前者を1階、後者を2階と言いますが、ここでは複雑な話はなしにしましょう。要するに、将来もらえる年金が労使折半負担なので、自分のもらえる年金の半分は会社が払ってくれているということです。

このように日本には手厚い社会保険が整っていますので、任意保険に入らなくてもある程度守られている現実があります。ちなみに私は一切の任意保険に入っていません(車を持っていないのもありますが)。

これがサラリーマンですと労使双方の負担で済みますが、個人事業主やフリーターなどの人は自身で保険料を納付しなければならないのです。しかも雇用保険には原則加入できず、健康保険も国民年金も全額自費で納めていく必要があるのです。かつて、若者が年金を払わないと騒がれていたことがありますが、このことを指しています。そもそもフリーターなどで収入が不安定になると、将来もらえるかどうかわからない年金を払おうとは思えないのは仕方がないことでしょう(上述のとおり、厚生年金はサラリーマンのみ加入するものです)。

研修・能力開発

大手企業が有利とされているものの一つでもありますが、正社員でいると会社のお金で研修を受けることができるのも大きなメリットの一つと言えるでしょう。大企業や官公庁では、大学院進学や留学をすることも可能です。社会人になるとわかりますが、毎日働いていると中々まとまって勉強する時間は確保できませんし(やる気の問題)、休日など寝て終わってしまいます(やる気の問題)。ゴホン、私の場合ははっきり言ってやる気の問題ですが、多くの人も同じ悩みを抱えているのではないかと思います。

そんな中、給与が保証された上で大学院進学や留学ができるのは非常にありがたいことです。そこまで大袈裟なことでなくても、資格取得の支援やビジネススキルアップ研修、語学研修など会社が用意する能力開発を享受できるのも正社員の大きな魅力です。中には、非正規雇用の方が受講できるものもあるでしょうが、そもそも日本は終身雇用を前提としたメンバーシップ型の労働市場なので、流動性の高い非正規雇用に対して教育・訓練をする文化というものがないのです。

副業・複業の時代が到来

ここが私の最も述べたかった部分です。コロナ禍によって労働市場で何が変わったかと言えば、儀礼的・形式的な手続きが排除され、より合理的に成果物重視な世の中になったということです。前者は押印省略や社内手続きの簡略化、後者はテレワークの推進や業務・契約内容の変更を指します。シビアな見方をすれば、ANAが副業を許可したり、電通が業務委託契約に切り替えたりということですが、社内にある訳のわからない文化に嫌気が指していた人たち(特に若者)にとっては、これほど都合の良い事態はそう起きません。

企業側も終身雇用であるが故に、ぶら下がり人材に対して頭を悩ませていましたが、副業サイトやクラウドワークが隆盛を極めたことにより、他組織の優秀な正社員に対しても、部分的に業務を委託したり、タスクベースで外注する文化が生まれてはじめてきたのです。逆に正社員で勤めつつ、自身の力を他でも活かしたい労働者にとっても良い話で、社内の無駄な仕事がなくなった空き時間を利用するなどして社外での実践の場を活用することができるようになったのです。

これは日本の労働市場においても非常に大きな変化であると言えます。古今より仕事の出来る人は引く手数多であり、それは内定をいくつも取る人がいる一方で、全く内定を取れない人がいるのと同じで、やはり競争社会において一部仕方がない事象ではあるでしょう。しかしこれまでは、正社員ゆえの社内文化や手続きによって多くの時間を浪費していた人が、自社以外のフィールドでも自身の力を発揮して稼ぐことが出来る時代になったのです。

もちろん、それだけが正義ではなく、空いた時間を趣味や勉強に費やすことも良いでしょう。しかし、いずれにせよこうしたことが出来るのは、正社員として待遇が保証されているからこそ出来ることなのではないでしょうか。

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