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Doximity($DOCS)とエムスリーを比較してみた

6月24日にIPO予定のDoximity。デジタルヘルス領域の中でもとても気になった企業ですので、色々調べてみました。結論から言うと、かなり期待しています。

ちなみにDoximityのIPOを初めて知った時のtweetがこちら。今見返すと、雑な感想が本当に雑で笑える😂

事業内容

医療従事者に特化したSNSを運営しており、すでに全米の医師の80%、医師以外の医療従事者も含めると約180万人が会員となっています。

これらの医師会員はDoximityアプリ上で、HIPAA(医療情報のセキュリティに関する法律)に準拠したセキュアな通信を用いてデジタルFAXやメッセージを使用することができます。さらに2020年からは、このアプリ上でオンライン診療も行えるようになりました。

また、アプリに配信される日々の医療ニュースをチェックしたり、ほかの医療従事者と連絡を取ったりすることもできます。

医師会員はこれらのサービスを基本的に無料で使用することができます。代わりに、医師の情報は、Doximityと契約した製薬企業や医療機器企業に渡され、自社製品のプロモーションに利用されます。

実際、Doximityと契約を結んでいる医療企業は600を超え、その中には米国トップ20の製薬企業も含まれています。さらに29社は少なくとも100万ドル/年の契約を結んでいるとのことです。また、これらの契約が、収益の80%を占めるとのことです。

その他、事業内容について詳しくは不思議紳士さん(@fushigishinshi)の記事を御覧ください。

財務状況

S-1はこちら。
https://sec.report/Document/0001628280-21-012207/doximity-sx1a1.htm

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主要なところを抜き出すと、
収益:2020年→ 1億1639万ドル
   2021年→ 2億690万ドル

粗利益率:2020年→ 87.2%
     2021年→ 84.9%

純利益:2020年→ 2974万ドル
    2021年→ 5021万ドル

と、The グロース銘柄といえる伸びを示しています。

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詳しくは会計士ケイさん(@Kei_IPOstock)の記事を御覧ください。

Doximityは「米国版エムスリー」?

さて、ここからが本題です。Doximityについてtweetするとよく「米国版エムスリーみたい」というコメントをいただきます。ということで、エムスリーの成長の歴史を振り返ることで、Doximityの将来を占ってみたいと思います。

エムスリーは、医療従事者を対象とした医療ポータルサイト「m3.com」のサービスを行う企業で、2000年に創業されました。

このエムスリーのビジネスモデルは、ざっくり以下の通りです。

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『株投資の参考書』より引用)

「m3.com」「MR君」で医師に情報を提供する代わりに、製薬会社から利用料を徴収、また「M3キャリアエージェント」を通じて、転職サポートを行う……びっくりするくらいDoximityとかぶりますね 😂

多くのビジネスモデルは米国が最初に発明し、その後、世界に広まります。しかし、このスキームを発明したのはエムスリーであり、2005年に「ビジネスモデル特許」を取得しています。エムスリーが2000年創業、Doximityが2010年創業という事を鑑みると、「逆タイムマシン経営」といえるかもしれません。

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(2005年4月IR資料より)

2019年4月に出されたIR資料によると、2014年頃から日本の医師会員は30万人弱でサチっているように見えます。日本の全医師数は約33万人とのことなので、約85-90%ほどでしょうか。会員数の割合から見ても、Doximityと比較して問題なさそうです。

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この会員数を背景に、エムスリーは毎年爆発的な成長を続けています。まさにグロース銘柄のお手本といえるでしょう。

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2020年IR資料

エムスリーと比較してみよう

今年のIR資料によると、昨年および今年の業績は以下の通りです。

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主要なところを抜き出すと、
収益:2019年→ 1309億7300万円
   2020年→ 1691億9800万円

純利益:2019年→ 241億5300万円
    2020年→ 411億9800万円

となります。四半期決算分析になりますが、Kosukeさん(@Kosukeitou)が詳しく解説されています。

一方、Doximityの業績を改めて書くと(1ドル=110円)
収益:2020年→ 128億290万円
   2021年→ 227億5900万円

純利益:2020年→ 32億7140万円
    2021年→ 55億2310万円

です。Doximityの業績は、ざっくりエムスリーの10分の1と言えるでしょう。先ほどのグラフで示すと…

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2010年頃のエムスリーの株価を見ると…

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7709 ÷ 134 ≒ 57.5倍!!

それはただの皮算用かはたまた…

もちろんこれはただの皮算用でしかありませんし、グロースのお化けみたいなエムスリーと比較するのは適切ではないかもしれませんが、私は正直、Doximityはこれくらいの成長ポテンシャルを持っていると考えています。

S-1によると、現在、Doximity社が想定するTAM(獲得可能な最大市場規模)は米国内で約185億ドル(約2兆円)であり、その内訳は

(1)医薬品マーケティング:73億ドル
(2)医療機関のマーケティング・求人:69億ドル
(3)遠隔医療:43億ドル

とのことですが、私はまだまだ広がると踏んでいます。たとえば医療AIの開発支援、たとえば臨床試験の患者収集、たとえば創薬のシーズ探索…。挙げていけばキリがありません。そしてそれらの事業を各国で行うことで、売上は倍々に増えていきます。

まーた大風呂敷広げちゃって…という感じですが、エムスリーはまさにそれを行おうとしています。

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2020年IR資料

プラットフォーム戦略の強さ

これが夢物語ではなく、実現できるのがやはりプラットフォーム戦略の強さだと考えています。プラットフォームが作り出す、深い堀(モート)については、NUKさん(@nukkunnuk)が詳しく解説されています。

大多数の会員の囲い込みに成功すると、ネットワーク効果×スイッチングコストが掛かるので、安泰だというお話です。特に医師ネットワークに関しては、日本では古くから「医局制度」があるように、学閥をもとにした非常に強固なものがあります。米国でも同様なのではないでしょうか。一度、囲い込みに成功すると、その後、様々な事業展開が楽なのではないか、と考えています。

で、Doximityって本当に使われてるの?

と、ここまで妄想を垂れ流してきましたが、最後にこの懸念を晴らす必要があります。

私は米国在住でも医師でもないので本当のところはわかりません。しかし、App storeの評判を見ると、非常に高いレーティングを示しています。

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レビューの中身も非常にしっかり書かれており、心からの感謝のコメントが並んでいます。これらがすべて、いわゆる"サクラ"とは思えません。

たまたま一番上にあったレビューですが…

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(このアプリは私たちのビジネスを本当に救ってくれたので、何か言わなければなりませんでした! 医療従事者、特にナースプラクティショナーへの対応に感謝しています。私はdoximityが提供するすべての機能にとても感謝しており、すべての医療従事者にこのプログラムを紹介しています。アプリをインストールしなくても、ファックス番号や、ビデオチャットで接続するために患者にテキストを送る機能があることに感謝しています。これらの機能を備えた有料アプリを購入するのは難しいですが、doximityはその機能で競合他社を圧倒しています。これらの機能を持つ有料アプリを購入するのは困難ですが、doximityはその機能で他社を圧倒しています!私はとても感謝しています。心からこのアプリに感謝しています。ーーdeepLによる翻訳)

さすがに180万人もの利用者がいると、非アクティブ層やアンチ層は一定数存在するでしょう(アンチ エムスリーの医師は非常に多いと聞きます😅)。
ですが、それを補っても余りあるほどの強さがDoximityにはあるのではないか、と考えています。

今後の投資方針

ということで、私はがっつり $DOCS に入りたいと考えています。もちろん派手な銘柄ではないのですぐに高騰することもないでしょうが、じっくりと育つことを期待して、ストーリーを追いつつ、買い増し買い増しを狙っていきたいと思います。

$DOCSホルダーが一人でも増えることを祈りつつ、本稿を締めたいと思います。お読みいただきありがとうございました!!

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