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【どこよりも詳しい】スワローズ新外国人A.J.コール徹底分析

こんにちはシュバルベです٩( ᐛ )و

12月7日、スワローズが動きました!

29歳の右腕A.J.コール選手を獲得。193cm105kgとここ数年スワローズが獲得する外国人投手に共通する大型右腕です。背番号は63、今年戦力外となった中尾輝投手がつけていた番号ですね。

MLB通算109試合出場し14勝を挙げている実績もありますが、年俸80万ドル(約9040万)での契約。日本シリーズ終了から10日で獲得発表というスピード感からすると、バンデンハーク投手と来季契約を結ばないと決めた時点で具体的な交渉を行っていたのではないかと思われます。

本noteではA.J.コール選手のアメリカでの成績とその投球内容を見ていき、今のスワローズにどうフィットしていくか考えていきます。

1.A.J.コール投手の成績

まず初めに今シーズンのMLBでの成績からみていきましょう。

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トロント・ブルージェイズに所属し、今シーズンの登板数は6試合8イニングに留まりました。稼働期間は5月9日~27日で、6月2日に首の張りのため10日間の故障者リスト入り。診断の結果、左腹斜筋の怪我が原因と判明し同月12日から60日間の故障者リストに入ってしまいました。その後、8月から下部組織で登板するもメジャー昇格は無く10月5日に放出。怪我に泣いたシーズンとなりました。

さすがに6試合では何も語れないので、直近3年間の数字を見てみましょう。

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A.J.コール選手は通算成績のとおり、20代中盤までは先発として稼働していました。2017年に8先発52イニングに登板し3勝を挙げていますが、翌18年からヤンキースに移籍してリリーフ転向。

ここ3年間はリリーバーとして起用され、MLBで55試合に登板。20試合以上投げている19年・20年共に防御率は3点台と好成績で、K%とBB%の投手の基礎的な能力で良い指標が出ている一方、HR/9はいずれのシーズンも1.00を上回っています

2021シーズンに来日した外国人投手の中には2020年未登板の選手もいましたが(コロナウィルスの影響でマイナーリーグは開催できなかったため)、スワローズは昨年のサイスニード投手(20年18登板)に続いて同年MLB登板実績のある”格の有る”投手の獲得に成功しました。偉い。

次の項目ではA.J.コール選手の投球内容をみていきましょう。

2.A.J.コール投手の投球内容

A.J.コール投手はどのようなボールでピッチングを組み立てているのか。こちらは2021年MLBで投げた6試合での球種構成です。

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平均150km/hを超えるストレートを軸に、スライダー、カット、カーブ、チェンジアップと4つの変化球を操っています。リリーバーとしては珍しい球種構成で、一見すると先発投手のようです。

各球種の球速ヒストグラムはBaseballSavantの次のグラフでより分かりやすくなっています。

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綺麗に4つの山形が出来ており、フォーシームを軸として3つの異なる球速帯の変化球を操る器用な投手ではないかという推測ができるでしょう。

ただ、少し遡って見てみると、リリーバーになって以降コール投手の球種構成は変化をしています。直近3年間の球種別割合の推移を出してみました。

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2019年はほぼフォーシームとスライダーのツーピッチである意味リリーフ投手らしい構成でしたが、19年には投げていなかったカットボールの割合を2年で増やして今や第3球種となっています。近年のトレンドに沿って、フォーシームに偽装する速い変化球を増やした、という解釈が適切でしょうかね。

例えば右打者へのアウトローのこんなボール。

変化量は少ないですがフォーシームに近い球速でシュートしないボールで軌道を外すと感じです。

各球種の変化量をリーグ平均と比べた図がこちらです。

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フォーシームに関してはリーグ平均よりもホップ量の多い球質である一方、スライダーをはじめ変化球はいずれも変化量がリーグ平均より少なくなっています。ただ、今年はスライダーで空振り率40%と多くの空振りを取っており、昨年以前もこのスライダーはかなり有効な球種となっていました。

そしてこちらはサイスニード投手との共通点なのですが、球種によるリリースポイントのずれが少ない投手であることを表す絵です。

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同じポイントから異なる球種を投げられることで、各球種の精度が満たなくとも打ち取ることができます。

こうして見るとなぜスワローズに来る決断をしてくれたか分からないレベルなのですが、向こうではスライダーやカーブといった変化球だけでは質の問題から球種構成に行き詰まり、フォーシームに近い球質のカットボールを増やす、そんなアプローチをこの2年で行っている。そう解釈しています。

3.A.J.コール投手のフォーシームについての考察

さて、東京ヤクルトスワローズ球団は先日ホークアイデータの公開に限定的に踏み切りました。

MLBでは2020年開幕より全球場で設置されたトラッキングシステムで、ボール・選手の動きをビデオ解析するツールとなっています。スワローズは12球団に先駆けて同システムを導入し、さらにNPBにおいて先駆的な試みとしてそのデータ公開に踏み切ってくれました。

同じシステムで計測されているので、ある程度同じしきたりでMLBと比較が出来るのではないかと思い、この間もサイスニード投手で検証してみたのがこちらです(宣伝)。

スワローズで公開されているのは、投手であればストレートに限定した場合の平均球速・縦/横の変化量です。どちらもBaseballSavantにてコール投手の本年のデータが公開されているので、ストレートに関してプロットしてみたのがこちら。

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参考としてスワローズに在籍するサイスニード投手とマクガフ投手、そして右腕の平均データも入れてみました。

コール投手のフォーシームは、前年来日したサイスニード投手のMLB時代よりもホップ成分・シュート成分とも多い球質となっています。平均の回転数は2,321回転で、MLB時代のサイスニード投手とほぼ変わらず、フォーシームの質については期待できそうです。回転軸は211度と傾きが大きく、シュート成分が大きくなっている由縁です。マクガフ投手の日本での回転軸が212度と近く、フォーシームに関してはマクガフ投手のものを思い浮かべておくといいかもしれません。

ただ、日本とアメリカではボールが違いますし、勿論マウンドも違いますし、計測するのも神宮球場になります。実際、サイスニード投手のフォーシームに関してはMLB時代と今年のスワローズ在籍時では乖離があります。

純粋に日米のボールの差、神宮におけるマウンドの影響諸々が全く同じ条件で4Sに影響を与えたと仮定するならこのようになります。

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スワローズ右腕平均を上回る、異常なホップ量のフォーシームを投げられる投手ということになるのですが、まぁこれは皮算用と言うものです笑。大事なのは、来シーズン終わるタイミングで再度ホークアイのデータ公開がされれば、日米のボールや球場でフォーシームの質がどれぐらい変化するかという目安が出来ることでしょう。

我々一般人にはフォーシームだけですが、球団は変化球のデータも持っているので、今後のスワローズの外国人選手獲得ムーブにおいて極めて強い影響を与える可能性があります。こうして知見を貯めて現実の補強を行っていくことがチームの強さのベースとなることを期待しています。

4.A.J.コール投手に期待すること

最後に、スワローズに入団することが決まったコール投手に期待することを考えてみましょう。

MLBではリリーバーとして2018年以降稼働してきましたが、すでに記事に出ているようにスワローズは先発として考えています。

私もこれには大賛成で、まず先発として登板を目指すべきでしょうこれまで見てきましたが、コール投手の球種構成は明らかに先発投手のそれで、カットボールを意識的にこの2年間増やして結果も出しています。日本で彼に近い球種構成の投手と言えば中日の柳投手で、落ちるボールは無くともカット・スライダーで打者に向かっていきます。

既にスワローズは中継ぎ適正が高いと思われていたサイスニード投手をスターターとして我慢して起用した結果、見事実を結んで先発6勝。リーグ優勝に大きく貢献しました。

高めのフォーシームと低めのカーブ、チェンジアップで勝負するサイスニード投手と、その真逆の低めのストレートを基調とした左右の出し入れで勝負するコール投手。この二人が先発で回ってくれるとチームにはバリエーションが増えます。

そもそも捕手の構える位置からして、特性の違いを物語っていますね笑

A.J.コール投手は対角線への制球が肝で、変化球はカット、スライダーとグラブ側に変化するボールが主軸です。逆に左打者に対して逃げるボールは無く、MLBでの投球ゾーンを見ると打者に対しても対角線の攻めをしています。

来日後、バッテリーで左打者への組み立てをどう考えていくかは興味深いです。対角線を基本に攻めるのか、スライダーをバックドアで入れるのか、シュート成分を強めた外のフォーシームを使うのか。答え合わせは来シーズンですね。

怖いのは故障で、今年は左腹斜筋の怪我、2019年は右肩のインピンジメント症候群で長期離脱をしています。が、幸いなことに本年のスワローズの強みは投手運用で、特に奥川投手を中10日で回したことをはじめとした先発投手を10枚近く揃えた戦い方は故障の軽減に繋がりそうです。

こうした故障でMLBでの登板機会が限定的となり、先発をやりたいけどやれない、そんなときにNPBでスターターとして結果を出して逆輸入で先発に返り咲く。そんな流れができると面白いかもしれませんね。

年俸は80万ドル、実績の割に年俸を抑えられた「美味しい」補強となるか。投げることが出来ればある程度の結果は出してくれそうという期待感があります。目安としては1年目先発として15試合登板6勝、一・二軍合わせて110イニング程度消化してくれるとはっきり成功と言えるでしょう。

目下、サイスニード投手との競争で先発を争い、もし外国人選手に怪我が起きればローテに入るところまで狙えます。もしどちらかが上手くいかなくても、中継ぎ経験が共にあるので後ろに回すこともできると言う三段構えは球団のリスクヘッジとして素晴らしいですね。

いずれにしても、スタッツはかなりいい投手なので期待できると思います!

最後にスワローズが出したコール投手の声で締めます。

スワローズの一員になれたことに、胸が踊っております。
今年のスワローズの活躍は知っていますし、来年も、また最高の結果に貢献できるよう、しっかりと準備して臨む覚悟です。自分の最大限の力をスワローズの勝利に発揮出来るよう努力してまいります。
私のみならず、家族も今から、素晴らしい日本の文化を体験できる機会を楽しみにしています。東京という新しい環境における、野球シーズンの始まりに興奮し、待ちきれない気持ちでいっぱいです。

心の底から楽しみです!頑張って!コール投手に大きな応援のコールを送りましょう!

■出典


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