【どこよりも詳しい】オリックス新外国人マーウィン・ゴンザレス選手徹底分析
こんにちは、シュバルベです٩( 'ω' )و
パリーグ連覇、そして悲願の日本一を果たしたオリックス・バファローズ。このオフはチームの主軸打者吉田正尚選手をMLBにポスティングで送り出した一方、森友哉選手をFAで獲得。獲得はならなかったものの、近藤健介選手のFA獲得争いにも参戦し3連覇に向けたムーブを行ってきました。
外国籍選手はすでに育成契約で24歳と若いレアンドロ・セデーニョ内野手を獲得。2Aながら109試合で30本塁打を放つ強打の内野手を青田買いすることに成功しています。
その他、シュウィンデル選手やコットン投手ら報道で獲得が報じられるも、なかなか公式からのアナウンスが無く年が明け、2023年に突入し1月にようやく同2選手と正式に契約。既に両選手とも春季キャンプに参加しています。
シュウィンデル選手とコットン投手はnote出しておりますので、ぜひこちらもお読みください。
そして、先日マーウィン・ゴンザレス選手の獲得についても公式発表されました。
報道によれば1年契約で1億8千万での契約。他の外国籍選手に比べてやや高額での締結となりました。
本noteでは、マーウィン・ゴンザレス選手がどんな選手なのか、そしてオリックスにどうフィットしていくのか。以下で検証していきたいと思います。
0.マーウィン・ゴンザレス選手のプロフィール
マーウィン・ゴンザレス選手はベネズエラ出身。185cm/92kgのしっかりとした体格を持ったスイッチヒッターです。
1989年3月14日生まれの33歳。オリックスではゴンザレス選手以上の年齢の選手はT-岡田選手や安達選手など4名のみで、チームの中ではベテランに位置付けられます。
2005年にアマチュア・フリーエージェントでシカゴ・カブスと契約を結んでMLBの世界に飛び込むと、ルーキーリーグからスタートして2011年にAAAまで昇格。その年のオフにルールファイブドラフトでカブスを出ると、レッドソックスを経由しヒューストン・アストロズへ移籍。
2012年、念願のMLB開幕ロースター入りを果たすと、以降遊撃のポジションを中心に内外野のユーティリティプレイヤーとしてMLBに定着しました。2013年には当時レンジャーズに在籍していたダルビッシュ投手の完全試合をあと1アウトから阻止するヒットを放ったことで印象に残っている方もいるでしょう。
アストロズでは2017年のワールドシリーズ制覇に貢献をした一方で、その後の移籍先で当時のサイン盗みについて旧アストロズ所属選手の中で初めて公式に謝罪。
その後ツインズやレッドソックスを渡り歩き、2022年はニューヨーク・ヤンキースに所属していました。
怪我が非常に少なく、MLB通算1,139試合888安打と実績豊富な選手で、2022年もMLBの舞台で86試合に出場しているバリバリのメジャーリーガー。オリックスがMLB経験豊かな選手を獲得したのはアダム・ジョーンズ選手以来のこととなります。
1年契約で推定年俸1億8000万円、背番号は一桁の「8」。単年1.8億は他の球団の新外国籍選手と比べても比較的高値となり、期待値の高さを示しています。
1.マーウィン・ゴンザレス選手の打撃成績
まずはマーウィン・ゴンザレス選手の打撃成績から見ていきましょう。2022年の成績はこちら。
打率は1割台後半に沈み、OPSは.600を切ってしまいました。本塁打は6本とパンチ力もみせましたが、全体的なスタッツは良くありません。
過去4年間のスラッシュライン(打率/出塁率/長打率)の推移はこちら。
ここ2年、打率2割を割ってしまいOPSも芳しくありません。出塁率は3年続けて3割を切っており、これらの数字を見てしまうと30代に入ってから打撃面で衰えが出てしまったように見えてしまいます。
それでもWARがマイナスに振れたのが2021年のみなのは、後述する守備の貢献によるものです。
ただ、他の来日する新外国籍選手はそもそもMLBでプレーしたことがない選手も多く、ゴンザレス選手のように通年通してマイナーに降格しないというだけで十分凄いことは間違いないです。
マーウィン・ゴンザレス選手はスイッチヒッターですので、彼の打撃成績を左右別に見た表がこちらです。
2020年は左打席の方が出塁率・長打率に優れていましたが、2021年・22年と直近では2年続けて右打席の方が若干結果を出しています。
尚、ちゃんとしたスイッチヒッターで、右投手に対しては左打席、左投手に対しては右打席でほぼ年間統一されています(右投手に対して右打席に立つケースが2打席程度あるかないか)。
ただやはりここ3年間は軒並み数字が厳しく、BB/Kから見るアプローチ面は左右共に芳しくありません。出塁率にはあまり期待せず、ホームランを中心とした長打で長打率を稼ぐことを考えるべき選手でしょう。
打席アプローチとしては、スイング率は低く、左右打席合わせてもゾーンでのスイング率は63%。初球スイング率については25%で、待球型のタイプとなります。甘い球を早めにシバく方が結果は残せそうなので、来日して打席でのアプローチを変えていく必要性はあるかもしれません。
打球方向についてはどうでしょうか。
この打撃アプローチは年単位での変動が比較的少ないので直近2年間、こちらも左右の打席別に出した表がこちら。
左右ともに引っ張り方向の打球が半分近くを占めており、どちらの打席に貼っていても基本的にプルヒッターだと考えて良いでしょう。
その中で、2022年にヒットになった打球をプロットしたのがこちら。
センター方向への安打は長打・単打含めてやはり少なく、ライト側にヒットが偏っています。左打席時の引っ張り方向の強い当たりのヒット+右打席時の三塁寄りのシフトの影響が如実に出ているチャートになっていますね。
やはり数字が良くないのでこの章でポジティブなことは言えないのですが、マーウィン・ゴンザレス選手が直近5年間でもマイナーリーグでプレーしたのは2021年だけ。常にMLBという一流の舞台で重宝されてきた選手が、パリーグ連覇を果たしたチームに入ってどのような影響をチームに与えるかは楽しみな部分です。
2.マーウィン・ゴンザレス選手の打撃内容
MLBでは全球場に設置されたホークアイデータを元に集計された投球データや打撃データをBaseball Savantというサイトで閲覧することが出来ます。
マーウィン・ゴンザレス選手の打球速度・打球角度・バレル率・ハードヒット率を他の来日外国籍選手と比べてみましょう。
(バレル率についてはこちらをご参照ください。)
マーウィン・ゴンザレス選手の平均打球速度は142km/hで、最高打球速度は172km/h。打球角度は約19.4度で、バレル率は5.9%。ハードヒット率とは、95マイル(≒153km/h)以上の速度の打球割合のことで、これは37%あります。
同じく今年からオリックスに加わったシュウィンデル選手と比べ打球速度は近しく、打球角度はマーウィン・ゴンザレス選手の方がかなり高いアングルとなっています。バレル率も1%以上高いシーズンとなりました。
2021年は打球角度8.9度でしたが、22年は19.4度と大きく上がっており、打球アプローチの変化が垣間見えます。
ただ、他の来日外国籍選手と比べてこれらの数値は傑出したものとは言えず、既に見たように打撃成績も伴っていません。
次にゾーン別の対応です。右打席と左打席で見ていきましょう。
右打席時は真ん中近辺のコースは高低問わずヒットに出来ている一方で、インコースでもアウトコースでもコーナーを突かれた場合は無力となっています。
Baseballsavantでスイング率や空振り率も見られるのでここでは割愛しますが、低めのボールゾーンに対してバットが止まらない傾向があり、また高めの速球にも脆さがあります。
インコースの当て勘は高いのですが、上のヒットゾーンの通り安打になっていないので、NPBの球速の落ちる投手の繰り出すボールであればチャンスが出てくる可能性はあります。
続いて左打席ですが、真ん中近くのボールとアウトコースの高めに強みを持っています。
左打席の方がボールを見極めやすいのか、どのゾーンも右打席時よりスイングをかける率は低くなっていますが、低めはゾーン内でも空振りが多いです。
最後に、球種別の対応についてです。
・ファストボール:フォーシーム、ツーシーム、カット、シンカー
・ブレーキング:スプリット、チェンジアップ、フォーク、スクリュー
・ブレーキング:スライダー、カーブ、ナックル
と系統別に分類した結果がこちら。
どのカテゴリーもやはりしんどい結果ではありますが、ファストボール系統のボールへの対応はまだマシという感じです。
ブレーキングボールには2年続けて打率1割を下回り、空振り率も35%を超える点は大きな不安要素で、NPBの多くの投手がチェンジアップ・スプリット系統のボールを投げていることを考えると目をつむる必要が出てきそうです。
この2年で放った11本の本塁打のうち7本はファストボール系統のボールを打ったもので、甘いゾーンに来た速球を逃さず捉えられるかがNPBで長打力を発揮できるかの鍵になるでしょう。
この章の締めくくりとして、定性的な情報を。
やはり真ん中近辺のボールを捉えた時はピンポン玉のように引っ張って遠くへ飛ばす能力を持っています。一方、落ち球に対してのもろさは拭えず、日本の投手の変化球対応というところが結果の成否を分けることになるでしょう。
3.マーウィン・ゴンザレス選手の守備走塁
マーウィン・ゴンザレス選手の一番の強み、それは2022年だけでも6ポジションの守備位置に就き、平均以上の守備貢献をしている点です。
2022年はショートの守備位置が最も多くUZRは+1.1。一三塁・両翼のコーナーポジションは内外野問わずこなすことができています。強肩とメジャーリーガーらしいボディバランスの良さは健在で、非常に器用な選手です。
通算の守備機会では次の通りです。
通算では二遊間どちらのポジションでUZRマイナスを背負ってしまっているものの、守備イニングは非常に多くメジャーの舞台で長く帯同を続けられる超絶便利屋な側面が見て取れます。
球際に強く、速度のある打球に対しても食らいつく守備を内外野で見ることができ、またショート最深部からでもノーバウンド送球で一塁アウトを取れる強肩も魅力です。
走塁面は不得意分野で、盗塁は全11シーズンで44個。スプリント能力自体もMLB平均から劣っており、走力の部分での貢献値は見込めません。
4.さいごに:マーウィン・ゴンザレス選手に求められるもの
最後に、マーウィン・ゴンザレス選手がオリックスでどのような役割を求められるか考えていきましょう。
幸か不幸か、新外国人選手にとってオリックスという球団はかなり活躍のハードルが低くなっています。こちらは過去3年間のオリックスに在籍した外国籍の野手の成績です。
22年の3選手は散々な結果で、WARベースでは全員マイナス。リーグの平準的な選手で代替可能なレベルを下回っている状態です。過去を見ても2020年のモヤ選手のWAR+1.3が最高値であり、この成績を残せれば十分すぎる補強となるでしょう。
ただし、これまで見てきたマーウィン・ゴンザレス選手の打撃成績から考えると過度な期待は出来ないというのが正直な見立てです。
バレラ選手と近しい考え方になるのかもしれませんが、現実的には内外野守れるサブ的なポジションでベンチに置いておきたいという状態になる可能性は十分あるかなと思います。
紅林選手や太田椋選手など二遊間を守るプロスペクトに異常があった時(故障など)にベテランかつ持病を抱える安達選手だけでは不十分なため、そこに入れるというイメージです。
もちろんバカスカ打ってレギュラーを取ってくれれば言うことないのですが、単年1.8億に見合う成績をチームの中で残せるかという点で言うと、変化球の対応と甘い球をきっちり打ち返せるという打撃が伴わない限りは難しいでしょう。
スタメン時の打順としては、6~7番での起用が多くなるかと思います。2022年は9番打者としての出場が最も多かったですが、2021年は6番が最多で、オリックスの今の野手陣を考えても6~7番が妥当なラインになってきそうです。
なんにしても他の選手から少し遅れて来日し、チームはオープン戦に入っていきます。いつからゴンザレス選手が合流し実戦を積んでいくかは現時点で不明ですが、早々に活きたボールを見てアジャストしてほしいですね。
実績は十分なので他の選手との交流を含めてチームでポジションを築けるか楽しみに見ていきましょう。
Go, MARGO!!
■出典
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