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【東京ヤクルトスワローズ】ホークアイデータ公開に寄せて。サイスニード投手を実例に。

こんにちは、シュバルベです(*'ω'*)

本日、我々に驚くべきニュースが入ってまいりました。

東京ヤクルトスワローズでは、12球団で唯一のホークアイ導入球団として、チームの強化だけでなく、ファンへのコンテンツとして展開し新たなファン獲得を目指しています。そこで、球団ホームページ内、選手情報ページにホークアイのトラッキングデータの一部を反映することで、幅広いターゲットに対して、新たなプレー分析データを提供し、選手情報ページの充実を図り、新たな野球の楽しみ方を提供します。

ホークアイとは、2021年シーズンからMLBでトラックマンに代わり全球場で配備された、動作解析・分析サービスのことです。投球動作、打者のスイングはもちろんのこと、守備時の野手・走者の動きまでカメラで解析できるという優れものです。詳しくはこちら↓

ソニーの傘下、という点も日本人には少し嬉しい点かもしれません。

2020年シーズンから東京ヤクルトスワローズはNPB球団に先駆けて唯一導入、神宮球場に配備されました。MLBではBaseball savant等のサイトでそのデータは広く公開されていますが、本邦においてはトラッキングデータはベールの中でむしろデータの有料化の流れが進んでいます。

そんな中、NPBに所属する1球団である東京ヤクルトスワローズは「幅広いターゲットに対して、新たなプレー分析データを提供し、選手情報ページの充実を図り、新たな野球の楽しみ方を提供します。」としてこの貴重なデータを公開してくれました。

うおおおおおありがとう、東京ヤクルトスワローズ。ありがとうHawk-Eye Innovations。ありがとうデータスタジアム

せっかく玩具を手にしたなら遊んでみたいですよね?ということで、私が来日前にBaseball savantをもとに分析したサイスニード投手について少し見てみましょう。

・サイスニード投手の来日前

こちらの来日前の記事で、私はサイスニード投手のストレートについてこのような分析をしました。

サイスニード選手のスラットは、横の変化量が少ないという特徴を持っています。多くの投手のフォーシームはシュート成分が多く、この図で言えば0より左側にプロットされます。ざっくり-8インチがリーグの平均のフォーシームのシュート成分となります。しかしながら、サイスニード投手のスラットは球速こそMLBの平均近くありながら、シュートしないのです。そしてこのボールの多くは高めのゾーンに投じられています。

2020年、MLBのスタットキャストではサイスニード投手はストレートを1球も投げておらず、それに近しいボールはすべてカットボールとして吐きだされました。なぜならば、彼のストレートはカットボールとの間、上で書いた「スラット」であり、ホップ量はストレート並だけど横変化はほとんどシュート回転しない、という性質のものだからです。

この特異な球質をもつサイスニード投手は、主に高めの速いボールを軸にMLBでは投球を組立てましたが、海の向こうではそのボールが低めに行ったり変化球の精度の低さから巧く行かず来日の運びとなりました。

・来日したサイスニード投手の成績

MLBでは十分な結果が残せませんでしたが、日本では高めのボールで勝負することは常道でなく、サイスニード投手の特殊なボールの組み立ては、その強みが活かせれば行けるんじゃね?というのが私の見立てでした。

さて、今シーズンのサイスニード投手の成績は次のようになりました。

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13試合に先発して6勝、防御率は3点台中盤と安定したピッチングを来日1年目から見せてくれました!

これがどれぐらい凄いのかというと、今年の外国人先発投手で6勝以上している他の選手はマルティネス選手(9勝)、ガンケル投手(9勝)、メルセデス投手(7勝)の3人しかいません。来日1年目の先発投手としては12球団トップクラスの成績を残してくれた、と言ってよいでしょう。

奪三振率24.7K%は60イニング以上登板した12球団の先発投手の中で9位にランクインしており、実際のプレーを観ていても中村捕手のリードもあって高めのストレート×スライダー・チェンジアップの緩急を効かせ、たまに投げるカーブもアクセントにする投球が目立ちました。

10月13日の登板で足を痛め今シーズンの最終登板となってしまいましたが、来季の残留も本日発表。

ミスタードーナツを”穴場のドーナッツ屋”と紹介するなど、そのキャラクターもファンから愛されるナイスガイ。ホークアイデータ公開+サイスニード残留報道で喜びが増しました。

・ホークアイ公開データを元に比較・検証してみる(変化量編)

さて、今回ホークアイのデータが部分的に公開されたので、MLB時代とのストレートの違いを検証できるわけです。今年サイスニード投手はストレートが投球の61%を占めており、MLBではカットボール(これをスラット≒ストレートとみなします)が69%を占めていました。

早速、MLB時代と今年の変化量を出しちゃいましょう!

どん!

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いかがでしょうか?
※ここで言う、縦・横の変化量とはその投手の無回転のボールとどれぐらいズレがあるかという差です。詳しくはこちら

いかにサイスニード投手のストレートの球質が特殊であるか分かると思います。

スワローズの右投手平均でシュート成分が25.2cmあるのに対し、サイスニード投手は今年わずか10cm。ストレートでありながらほとんどシュートしない球質であることが分かります。

※TIPS
それでも、MLB時代のスラットと比べると6.8cmほどシュート成分が増えています。この要因として考えられることとして、投げ手と逆方向に曲げる意思を持ったカットボールがMLB時代には含まれているから(上のマッピングで言えば横変化量がマイナスになるボール)かと思い、MLB時代のカットボールからHorizontal Movementがマイナスになっているものを除いてました。この場合でもMLB時代の横変化量は+6.8cmで、いずれにしても来日してからの方がシュート成分が増えていることが分かりました。

また、一層重要なのはホップ量でしょう。MLB時代は+43.5cmだった縦変化量は今年+55.3cmと極めてホップするストレートになっています。スワローズの平均も49.2cmとかなりホップ成分が強いのですが、それを6cmも先発投手でありながら上回っています。

クローザーのマクガフ投手や、アベレージで150km/hを超えるスアレス投手を比較としてプロットしていますが、彼らよりもホップ成分の多いボールが高めに行けば早々前に飛ばされないであろうことは想像に難くないでしょう。

日本に来てから、神宮球場でホップ成分が増しているというのはかなり面白いデータで、それがボールの違いによるものなのか、マウンドの傾斜・固さによるものなのか、あるいはフォームの違いによるものなのか。この辺をアナリストは分析していくのかなぁと思います。

ちなみに、Baseball savantのデータの取り方はTJさんのこちらのnote見れば一目瞭然ですよ!

・ホークアイ公開データを元に比較・検証してみる(回転・リリースポイント編)

最後に、変化量・回転数・回転軸・リリースポイントを抜粋したものです。

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回転軸の傾きが178度→190度と大きく違うんですよね。これがシュート成分を増している要因なのは間違いないでしょう。回転数は2,348→2,445と大きく上がっており、回転数UP×ホップ成分UPで異質のストレートを構築しています。

リリースの高さはMLB時代より少し上がっているので、アームアングルに来日してから修正が入った結果、スピン量の増加と回転軸の傾きが生まれたのかな?など考えてしまいます。でもアームアングルが上がればサイドスピンは減りそうなものですけど、この先が分かりません笑。MLBのデータには純粋なカットボールも含んでいますし、そもそもサイスニード自身がストレートを投げ分けている(カット気味のものと、シュート成分の強いフォーシーム)と考えられるので、アナリストたちはこの大きなデータを元に1球単位の解析を選手と共に行っていくんですかね。

逆に、マウンドが違ってもエクステンションは191cmで変わらないというのも面白いですね。神宮のマウンドはMLB仕様に今年から変えているので、その目的は達成されているのかも?

先の数字ではスワローズ右投手平均/スアレス/マクガフとの比較を出してみたので、いろいろみんなで考えてみてください(誰)。

・さいごに

熱量のまま書いていきましたが、興味が尽きません!!ありがとうスワローズ!!!

何がすごいかって、これは別に公開したところでスワローズ1球団に何かメリットが直接的には無いはずなんですよね。それでも「幅広いターゲットに対して、新たなプレー分析データを提供し、選手情報ページの充実を図り、新たな野球の楽しみ方を提供します。」という私たち野球ファンの楽しみ方を増やすために公開に踏み切ってくれた、これが本当にありがたいです。

これまで日本の野球はMLBと比べてデータ後進と見られていましたし、実際に無料で見られるデータは成績に関するものがほとんどです。今回公開されたトラッキングデータは「なぜ?」に答える材料をくれるもので、本当に本当に東京ヤクルトスワローズ球団に感謝です。うえええん、ありがとうヤクルトちゃん(連呼)。

せめて!!アクセス数を増やして来年のヤクルトの広告料UPと、関係者のお賃金UPのために!!みなさまぜひ東京ヤクルトスワローズ公式アカウントにアクセスしてください!!

スワローズ公式→選手情報で個別の選手を選択すれば見られますよ!!今回もお読みいただきありがとうございました!

■出典


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