立川談志と私。

立川談志のファンで落語会によく通っていた。
ゴールデンウィークにガレージセールというのをやっていると聞き、足を運んでみた。
根津神社近くの煎餅屋さんの軒先に人だかりができていた。
真ん中には、寝巻き姿であぐらをかき、異彩を放つ人物。
立川談志だ。

談志宅にある生活雑貨や本、 サイン色紙にサインペンで「談志の一言とサイン」を書く。オークションで5000円からと言い、周りの客が6000円、7000円・・・とせり落としていく。

私は金がなく、その様子を眺めていた。何か安そうなものがあったら手を挙げてみよう。3000円くらいなら出せるかな。と思っていた。

談志は次に赤い小さい巾着袋を手に取り、うーん。と考えて「何か拾って入れなよ。 立川談志」と書いてひひっと笑った。
私もなんかいいな。と思って笑ってしまい1番に手を挙げた。談志は私を見ると「10円でいいや。」と言って10円で売ってくれた。

ずっと高くて手が出せなかった私のことを気にかけたのか、どういう意味の10円かはわからないが嬉しかった。

「落語は業の肯定」だとか「人生成り行き」といった談志の名言ではなく「何か拾って入れなよ」ていうのが私の心の宝物だ。

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