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『うちのかみさん』〜コンサートの一場面から読み取る朝鮮のあれこれ(動画付き)①

新年のごあいさつ

あけましておめでとうございます。
昨年まではTwitterを主な情報発信の場として利用しておりましたが、今年からまとまった文章を書く練習を兼ねてnoteに様々な記事を投稿してみようと思います。よろしくお願いいたします。

人気曲『うちのかみさん』

こちらは2012~2013年ごろに朝鮮で大ヒットしたと言われる楽曲『우리집 사람 (うちのかみさん(もしくは「うちの奥さん」)』です。歌ったのは同じく大人気の歌手、万寿台(マンスデ)芸術団所属の김웅삼(キム・ウンサム)です。

当時のお正月コンサートからの抜粋です。冒頭にはキム・ウンサム氏の夫人、ペク・ヨンシムさんへのインタビューも収録されています。

妻へのインタビュー、朝鮮社会における「良妻」のロールモデル

インタビューでペク・ヨンシムさんは以下のように語ります。

「まだ夫の歌う歌の主人公のように生きるには至っていません。
夫が『うちのかみさん』を歌う度に私は熔解工の妻、軍官の妻、科学者の妻のように社会と集団のために自身を捧げる女性を思い浮かべます。
その度は私も彼女らのように家庭で愛されるだけではなく、社会と集団で愛される女性とならなくてはいけいないと、そんな決意を固めます。
そうすれば、私の夫はこの歌をもっと立派に歌えるのではないでしょうか」

彼女の棒読みのような受け答えから台本は予め用意されていたのではないかと思われます。
社会主義国家である朝鮮では個人の自由よりも集団への寄与を優先させられることは言うまでもありません。このインタビューでは特に朝鮮での「妻」としての役割が協調されています。
ただ家庭の中だけではなく、社会の中で役割を担う夫を支える存在として期待されていることが読み取れます。

司会者の言葉から見る「母」の姿

このインタビューに対し、司会者は以下のように話します。

「美しい話とともに美しい決意が固まる正月です。
現在この時にも美味しい正月の御馳走を準備しながら、夫と愛する子どもたちのために幸せな明日を夢見る全国の『うちの奥さん』に贈る感謝の歌です」

日本でも家族の家事分担について多く議論されています。
最近ではファミリーマートの「おかあさん食堂」が話題にのぼり、「炊事は母の仕事なのか」「多様な家庭のかたちを肯定しようとする流れに逆行しているのではないか」等という意見が多くみられます。
このインタビューにも母や妻は家族のために尽くすという朝鮮社会の女性への役割付けが表れています。

朝鮮の映画やドラマのストーリーでも、
●女性と男性は同じ職場の同僚でありながらも男性の同僚を立てる
●妻が病魔に冒されても夫は家庭を顧みない
●女性が恋人のために服装や髪形の好みを合わせる
●食事を息子の口まで運んであげる母
などといった描写がよく見られます。

現代の朝鮮は封建時代の慣習を否定しながらも、性別における社会的規範においてはまだまだ儒教的な価値観が大きく影響を及ぼしています。

②へ続きます。


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